半世紀以上にわたる大学授業料の変遷をさぐる

↑ 大学の授業料はどのような推移を見せているのか(写真:アフロ)

国立よりも私立の方が高い大学授業料

昨今では多くの人が通い卒業することになる大学。その修学費用に関して金額の負担の大きさが問題視される一方、かつて大学へ修学していた人たちによる「大学授業料位は自分の手で稼いだものだ」とする意見が少なからず見聞きされる。そこで総務省統計局における「小売物価統計調査」の公開値から各種計算を施し、大学授業料の推移を確認していく。

具体的には東京都区部の小売価格を参考に、半世紀強前の1950年以降、一年間を終えて年平均が算出できる直近の2016年分までの値を随時取得。さらに月次に限れば現時点で2017年4月まで取得可能であることから、その4月分を取得してこれを2017年分として適用する。

対象となるのは東京都区部の大学授業料のうち「国立・昼間部・法文経系」「私立・昼間部・法文経系」「私立・昼間部・理工系」。実は2016年分までは「公立・昼間部・法文経系」も精査は可能だったのだが、小売物価統計調査では2016年12月で「公立・昼間部・法文経系」を調査項目から外してしまった。そこで長期的な値が取得できる代替として「私立・昼間部・理工系」(ただし一番古い値は1967年で、他項目の1950年と比べると短期間)を用いている。なお国立の理工系も合わせ精査したいところだが、長期観測値が存在しないので取り上げていない。

また入学金の相場は年間授業料の数割程度なので、留年が無いと仮定した場合、年間授業料を4倍強すれば、大よそ大学における総計授業料などの額を算出できる。しかし入学金については時系列データが存在せず、過去の値は10年ほどしかさかのぼれないので、今回は検証しない。

↑ 東京都区部の大学授業料推移(1950年~2017年)(円)(2017年は直近月)(年間)
↑ 東京都区部の大学授業料推移(1950年~2017年)(円)(2017年は直近月)(年間)
↑ 東京都区部の大学授業料推移(1950年、2017年)(円)(2017年は直近月)(年間)
↑ 東京都区部の大学授業料推移(1950年、2017年)(円)(2017年は直近月)(年間)

大学授業料のイメージとしては、国立と比べて私立が高いような感があるのだが、実際にもその通りの金額推移を示している。そしてどの種類の大学でも日本が高度経済成長を始めた1970年代まではほぼ横ばい、あるいはゆるやかな上昇だったものが、それ以降はやや上昇率を高め、右肩上がりの様相を呈している。20世紀末になると上昇も緩やかなものとなるが、私立はそれ以降も上昇し続け、国立は同額を維持することになる。記録の限りでは国立は2005年以降、10年以上同一価格を維持している。

ちなみにもっとも古い記録として残っている1950年時点では国立大学の年間授業料は法文経系で3600円、私立でも法文経系で8400円。私立の理工系は1967年時点で9万6800円。これが直近の2017年ではそれぞれ53万5800円、77万9906円、114万1909円にまで跳ね上がっている。単純に倍率試算をすると149倍・93倍・12倍である。

消費者物価の動向を考慮すると

これらはそれぞれの年における金額を示したものだが、当然物価水準は異なる。モノやサービスの値段の価格の推移を見る場合、当時の額面自身の流れだけでなく、物価との相対的な位置づけを考慮する必要もある。例えば70年前の100円と、今現在の100円とでは価値が大きく異なるからだ。そこで消費者物価指数と連動させて価格を算出することによって、より正しい価格価格の実情を推し量ることにする。

具体位的には各年の授業料に、それぞれの年の消費者物価指数を反映させた値を試算することにした。直近2017年の値を基準値として、各年の授業料を再計算した結果が次のグラフ。つまりそれぞれの年における物価が2017年と同じ水準ならば、どの程度の金額になるのか、その推移を示している。

↑ 東京都区部の大学授業料推移(1950年~2017年)(円)(2017年は直近月)(年間)(2017年の値を元に消費者物価指数を考慮)
↑ 東京都区部の大学授業料推移(1950年~2017年)(円)(2017年は直近月)(年間)(2017年の値を元に消費者物価指数を考慮)
↑ 東京都区部の大学授業料推移(1950年、2017年)(円)(2017年は直近月)(年間)(2017年の値を元に消費者物価指数を考慮)
↑ 東京都区部の大学授業料推移(1950年、2017年)(円)(2017年は直近月)(年間)(2017年の値を元に消費者物価指数を考慮)

実のところ、消費者物価指数を考慮しない最初のグラフと比べても、形の上では大きな変化が無い。これは各授業料の上昇率が大きく、物価の上昇をはるかに上回る割合であるからに他ならない。物価を考慮しないグラフと比べていくぶん勾配が緩やかになってはいるものの、私立では高度経済成長期以前から一律な右肩上がりを示す一方で、国立では高度経済成長期まではむしろ下がっている動きすら見受けられる。

そして冒頭で触れた件だが、現在の物価に換算した上での1950年における大学年間授業料は、国立法文経系で2万9498円、私立法文経系で6万8830円、私立理工系で36万2426円(1967年)。月次にするとそれぞれ大よそ2500円・5700円・3万円。この程度の金額ならそれこそ1日のアルバイト料金で満たせる額であり(私立理工系は1日分の稼ぎでは難しいが、これは1967年の値だからに他ならない)、当時大学生だった人たちが「自分達は大学授業料位は自分の手で稼いだものだ」と語っても、特に不思議ではない。一方で2017年時点の月額はそれぞれおよそ4万5000円・6万5000円・9万5000円。かなりハードな額には違いない(無論これは授業料のみの話。他に入学金や教材費など多種多様な学費が必要となる)。

少なくとも金額負担の観点に限れば、大学はよりハードルの高い場となっていることは間違い無い。

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