戦後からの消費者物価の動向をさぐる

↑ お金の価値は物価によって大きく変動する。その物価の指標が「消費者物価指数」(ペイレスイメージズ/アフロ)

戦後の消費者物価指数の動き

一定期間以上の月日が離れた時期において、商品やサービスの価格の高い・安いを判断する時に、単純に金額の移り変わりだけを物差しにするのは賢い手口では無い。物価の変動を考慮する必要がある。

その価値を標準化するための「指針」が「消費者物価指数」である。総務省統計局の定義によると次の通りとなる。

全国の世帯が購入する家計にかかわる財及びサービスの価格などを総合した物価の変動を、時系列的に測定するもの。つまり家計の消費構造を一定のものに固定していると仮定し、これに必要となる費用が物価の変動で、どのように変化するかを指数値で示したもの

この消費者物価指数につき、日本銀行や総務省統計局のデータベースから取得可能な値、1950年以降分に関して逐次抽出(直近年分は公開月分までの月次値を平均化)。その上で1950年の値を基準値の1.000として、値の変動をグラフ化した。

↑ 消費者物価指数推移(1950年~2017年)(1950年の値を1.00とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(全国)(2017年は3月時点までの平均値)
↑ 消費者物価指数推移(1950年~2017年)(1950年の値を1.00とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(全国)(2017年は3月時点までの平均値)

このグラフは例えば、1950年に100円だった商品が2017年には約819円の価格をつけていることを意味する。当然商品によって上昇幅は大きく異なり、さらに「70年ぐらい前と現在で同じ品質・量・需給関係の商品が存在するのか」との問題もある。例外的なものに卵が挙げられそうだが、それとて品質・分量はほぼ同じなものの、需給関係は大いに変化している。今件はあくまでも概念・参考値として、物価変動そのもののの動きを知るためのデータとして見るのが賢明。

その「全般的な物価動向」だが、1990年代頭までは概して上昇を継続していた、つまり物価は上昇していた。表現を変えると「インフレが進んでいた」ことになる。中でも1970年代から1990年前後までは急激な上昇を示しているが、この期間に「高度経済成長」「オイルショック」(2回分)「ニクソン・ショック」などが起きており、これら複数の要因が物価を押し上げたことが理解できる。

そして1990年以降は物価はほぼ横ばい。「消費者物価指数」を構成する商品やサービスそのものに、消費者の一般生活とのかい離があるとの指摘もあるが、それを指し引いたとしても、この20年間ほどは物価が安定していると評せる。むしろ今世紀に入ってからは、やや下がり気味のようですらある。ただし後述するようにこの数年に限ると、いくぶん上昇しているように見える。

1991年以降に限って詳細を確認する

最近の動向が分かりやすいよう、1991年以降にに絞ったグラフも作成した。こちらは基準値を1991年の値にしている。上記グラフの値とは単純比較できないので要注意。

↑ 消費者物価指数推移(1991年~2017年)(1991年の値を1.000とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(全国)(2017年は3月までの平均値)
↑ 消費者物価指数推移(1991年~2017年)(1991年の値を1.000とした時、持家の帰属家賃を除く総合)(全国)(2017年は3月までの平均値)

この30年足らずの間では物価は上昇してもせいぜい5%強(1.055、つまりプラス5.5%)しか上昇していない。1991年以降は踊り場を経て上昇したが21世紀に入ると(金融危機ぼっ発後の2008年に、資源高騰に伴う物価上昇が特異な動きなものの)全般的には下げ基調にあった。特に2009年以降は確実な下落を示していた。いわゆる「デフレ感」を裏付ける一つの結果といえる。

2014年4月に改定された消費税率に関する影響だが、年ベースの直上グラフを見ると、ややイレギュラーな影響を及ぼしているように見える(消費税率が3%から5%に改定された1997年にも盛り上がりが確認できる)。そこで2013年以降に限り、同様の条件で月次ベースの動向を記した次のグラフで、詳しく見ていくことにする。

↑ 消費者物価指数推移(2013年1月~2017年3月)(全国)(2015年の年平均値を100とした時、持家の帰属家賃を除く総合)
↑ 消費者物価指数推移(2013年1月~2017年3月)(全国)(2015年の年平均値を100とした時、持家の帰属家賃を除く総合)

2014年3月から4月にかけて、有意な上昇が発生している。これは消費者物価指数が「世帯が消費する財・サービスの価格の変動を測定することを目的としていることから、商品やサービスと一体となって徴収される消費税分を含めた消費者が実際に支払う価格を用いて作成されて」いるからに他ならない。つまり消費税率の引き上げに伴い、支払金額が上昇した分だけ、消費者物価指数も上昇した次第である。

2014年5月まで上昇は続き、それ以降は横ばい、2014年の年末から2015年の頭まではむしろいくぶん下げ基調を見せていたが、その後上昇。しかしそれ以降はもみ合いを見せ、全体的には2015年の年平均水準値100.0をはさんだ値動きに終始している。震災後は家計を圧迫する要因の一つだった光熱費周りも、最近では値を大きく落としており、これも消費者物価指数の安定化に影響を与えている。

物価の安定、さらには下落は消費最小単位の家計から見れば、良いことづくめのように見える。可処分所得が同じならば、消費財の価格が下落することで、実質的な購買力は上昇しうる。

しかし外食産業や建設業の事例に代表される通り、デフレ化が続くと、小売業、さらにはそこに商品を卸す輸送・生産を行う製造業への負担は蓄積されてしまう。同じ数だけ商品を販売できても、今までより金額上の売上が減るのだから、結果として利益も減る。しかもコスト(原材料だけでなく人件費なども含む)はあまり変わらないので(人件費は正社員の場合、解雇以外では容易には下げられない)、利益は圧迫される。調整がしやすい非正規雇用が増え、正社員も厳しい状態が続く。

物価のゆるやかな上昇は、需要が活性化することを中心にした経済の発展も意味している。1970年以降の動きが好例である。その観点から物価を眺めると、前世紀末期以降、日本経済はほぼ停滞していることになる。長期に渡るデフレ経済が喜ぶべき類のものなのか、今一度考えねばなるまい。

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