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全体では9割強…エアコン普及の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ エアコンは今や生活に欠かせない存在となりつつある(ペイレスイメージズ/アフロ)

2017年では二人以上世帯において91.1%の世帯普及率

住宅の密閉性の向上や都市地域におけるヒートアイランド現象の実体化に伴い、エアコンは日常生活に欠かせない存在となりりつある。世帯ベースでの普及率の実情を内閣府の消費動向調査の結果からさぐる。

まず最初に長期データが取得できる「二人以上世帯」の普及率、そして「保有世帯における」平均保有台数推移をグラフ化する(回答世帯全体における平均台数ではないことに注意)。

↑ エアコン(クーラー)普及率と、保有世帯における平均保有台数(二人以上世帯)(3月末時点)(~2017年)
↑ エアコン(クーラー)普及率と、保有世帯における平均保有台数(二人以上世帯)(3月末時点)(~2017年)
↑ エアコン(クーラー)普及率と、保有世帯における平均保有台数(二人以上世帯)(3月末時点)(2001年~)
↑ エアコン(クーラー)普及率と、保有世帯における平均保有台数(二人以上世帯)(3月末時点)(2001年~)

1960年代はゼロに等しかった普及率も、1970年代から急上昇し、1990年代半ばには8割を超える。そして今世紀に入ると9割近くに達し、後はほぼ横ばいの動きを継続。この流れから、ほぼ天上・上昇限界点の状態であることが分かる。直近2017年における普及率は91.1%。前年と比べると1.4%ポイントの下落。

一方保有台数も似たような形で上昇・横ばいの動き。2017年では保有1世帯あたり3.1台に。これはエアコンの「保有世帯」において、平均3.1台のエアコンが「有る」ことを意味する。それらをすべて同時に稼働させているのでは無く、3台+α設置していることになる。例えば居間と、夫婦の部屋、子供の部屋に一台ずつのような状況が想像できる。

世帯種類別ではどうだろうか

最新の2017年分について属性別に見ていくことにする。まずは世帯の年収別。

↑ 世帯年収別エアコン普及率(2017年3月末)
↑ 世帯年収別エアコン普及率(2017年3月末)

一部凸凹があるものの、「二人以上世帯」「単身世帯」共に概して高年収ほどエアコンの普及率は高い。また「二人以上世帯」の方が「単身世帯」よりも高い普及率を示している(年収750万円以上の単身世帯は回答世帯数がそれぞれの属性で5人から19人と少数のため、統計上のぶれが生じている可能性がある)。

前者はエアコンそのものが設置料も含めるとそれなりの導入コストが必要になるのに加え、ランニングコストも高いハードルとなるため。もっとも初期投資額に関しては、最近の賃貸住宅は初めからエアコンが設置されている物件も多く、あまり考慮は要らないのかもしれない(それが単身世帯の普及率を押し上げている一因でもある)。

後者は「単身世帯」の場合、「自分が我慢すれば無くても良い(他人への配慮が要らない)」「お財布事情」など、一人暮らしにおける普及率を押し下げる事情が想定される。なお、この「一人暮らし」には若年層だけでなく、(特に定年退職後に配偶者と死別・離別した)高齢者も含まれていることに注意しなければならない。

↑ 性別・世帯主年齢階層別エアコン普及率(2017年3月末)
↑ 性別・世帯主年齢階層別エアコン普及率(2017年3月末)
↑ 住宅所有関係別エアコン普及率(2017年3月末)
↑ 住宅所有関係別エアコン普及率(2017年3月末)

概して上記グラフの傾向と同じく、「二人以上世帯」よりも「単身世帯」の方が普及率が低く、中でも男性高齢者の「単身世帯」(つまり男性のお年寄り一人身世帯)では、2割近くはエアコン無しと回答しているのが気になる。

住宅種類別では賃貸住宅や給与住宅の「単身世帯」での低さが目立つ。これらの住宅種類における普及率の低さは、上にある「年収と普及率の正比例関係」と浅からぬ関係があり、「単身世帯」まで合わせて考えると、「給与住宅住まいの独り身の若年層(特に男性)」「賃貸住宅住まいの一人身の高齢者(特に男性)」といった組み合わせにおける、エアコンなし世帯の比率の高さがイメージされる。

体力の衰えや地域社会との接触の難しさから、特に定年退職後に生活環境が一変する男性高齢者は、室内に閉じこもることが多くなる。そのような環境下でエアコンが無いとなれば、室内での熱中症のリスクが懸念される。さらに万一そのような病症に陥っても、誰にも気が付かれないまま病状が悪化する可能性が高い。まずはエアコンの設置が欠かせない。単身世帯、特に高齢者世帯では、エアコンの普及率向上は健康リスクの観点では急務の課題に違いない。

またエアコンが設置されているとしても、震災起因の電力節約志向の高まりに伴う意図的な、あるいは温度の変化を感覚的に認識しにくい高齢層の増加に伴い無意識に、必要不可欠な状況でもエアコンの稼働が成されず、健康被害が発生してしまう可能性は多分にある。室内で熱中症が発生した際に、その現場にエアコンがあるにも関わらず稼働していなかったケースは確かに少なからず存在する。

夏に向けて自分自身はもちろんだが、身の回りで熱中症のリスクが高そうに見える人に対しても、十分な配慮が求められよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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