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トップは米国、次いで中国…主要国の軍事費最新情報

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 大規模な海軍の軍拡を推し進める中国。軍事費総額は推計でも世界第二位(写真:ロイター/アフロ)

米中だけで世界の軍事費の約半分

ストックホルム国際平和研究所が先日発表した世界の軍事費動向を集約したレポートによると、2016年の世界全体における軍事費総額は1兆6866億米ドルだった。各国の軍事費の現状を同レポートや同じタイミングで更新されたデータベースの公開値から探る。

最初に示すのは主要国の2016年における軍事支出の上位陣国。米ドル換算で統一しており、「*」がついているのはSIPRIによる推定値。またあくまでもSIPRIが軍事費であると認識した額で、主に対外勢力に対抗する物理的国家軍事組織に対する執行予算が計上されている。北朝鮮など一部の国では推計すらできないため除外されている。

↑ 主要国軍事費(2016年)(上位15位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)
↑ 主要国軍事費(2016年)(上位15位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)
↑ 世界の軍事費シェア(2016年、米ドル換算、上位10位国とその他)
↑ 世界の軍事費シェア(2016年、米ドル換算、上位10位国とその他)

世界全体の軍事費総額のうち1/3強をアメリカ合衆国一国が計上している。次いで多いのは中国で2152億ドル、12.8%。為替レートが影響しうること、海外からの購入品もあるとはいえ、そして単純な軍事費の多い少ないで軍事力の大小が推し量り切れるわけではないが、両国の軍事力の大きさが改めて認識できる。

昨今防衛費周りで一部から多様な意見が出されている日本だが、ここ2、3年はようやく持ち直してきたものの、今回の統計では8位に留まっている。

対GDPで比較

軍事支出の比較は単純な絶対額だけでなく、その国の実情に考慮すべきとの意見もある。そこで今回は、よく使われる指標の一つ、対GDP比を確認する。これはIMF発表の各国GDPと比較し、その国の軍事支出が何%に値するかを計算したもの。要は各国の経済力に対する軍事支出のバランスを示した値で、かつて日本で指標の一つとされた「防衛費はGNP1%まで」が良い例である(GNP1%枠はすでに撤廃されており、しかもGNPとGDPは別物)。なおグラフは軍事費そのものの上位陣に絞り、国の並びも軍事費の大きい順としている。

↑ 主要国軍事費対GDP比(2016年)(米ドル換算で上位15位の順、対IMF発表によるGPD比率、*は推定値参照、SIPRI発表値)
↑ 主要国軍事費対GDP比(2016年)(米ドル換算で上位15位の順、対IMF発表によるGPD比率、*は推定値参照、SIPRI発表値)

サウジアラビアが群を抜き、1割強を示している。またUAEやイスラエルも5%を超えており、石油産出国・中東の軍事費の大きさが認識できる。次いでロシアが5.3%、アメリカ合衆国が3.3%。日本は1.0%で、中国は1.9%。軍事支出上位陣の国は大よそ1%から2%台に収まっており、日本が一番少ない。

SIPRIの過去の発表リリースなどを元に直近5年分について、軍事支出絶対額と対GDP比の推移を、2016年時点の上位国に絞ってグラフ化したのが次の図。米ドル換算の際に、為替レートの大きな変動が影響しうるため、あくまでも対外比較指標程度に見てほしい。

↑ 主要国軍事費(2016年における上位10位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)
↑ 主要国軍事費(2016年における上位10位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)
↑ 主要国軍事費(対GDP比)(2016年における上位10位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)
↑ 主要国軍事費(対GDP比)(2016年における上位10位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)

アメリカ合衆国が軍事費を削減していることは良く知られた話ではあるが、その実情がよく把握できる。他方中国の大幅な軍拡が、GDPの底上げを背景としていること(軍事費そのものが大きく増大しているが、GDPも同時に成長しているため、対GDP比はさほど増えていない)、それらも合わせて概して先進諸国が軍縮、新興国が軍拡の方向を示していることがうかがえる。これは冷戦終結後、特にここ数年の一つのトレンドとなっている。

なおサウジアラビアの値が2016年では前年と比べて大きく落ちているが、これについてSIPRI側では「2016年は実支出だが2015年では予算が計上されている。また2015年の値ではイエメンへの軍事支援に200億サウジリヤル(約6000億円)が計上され、これが加算されているが、2016年では計上されていない。2016年の値が前年と比べて大きく落ちているのは、軍事支援額が含まれていないからかもしれない」と説明している。急に軍縮へかじ取りをしたわけでは無い。

繰り返しになるが軍事費はあくまでも指標の一つでしかなく、また為替レートで多分に影響を受ける。とはいえ、対外的要因が大きい軍事力の物差しとしては、十分以上に参考になるものに違いは無い。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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