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たばこ自販機は台数・販売額共に大きく減退…自動販売機の現状

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 日常生活に溶け込んだ多種多様な自販機。その動向は(写真:アフロ)

ジュースなどの飲料水やたばこに始まり、新聞・書籍やお菓子類などの実商品の販売、食堂やファミレスや牛丼チェーン店での食券、さらには両替機やコインロッカーのようなサービスの提供にいたるまで、世の中には多種多様な自動販売機が展開され、機能を発揮している。そして先の震災に伴う電力需給問題に絡んでバッシングを受け、省エネ化の動きが加速されたり、タスポの導入やたばこ需要の減退でたばこ自動販売機の数が激減するなど、社会情勢の変化を受けながらも、自動販売機は毎日活動を続け、人々の生活を支え続けている。今回はその自動販売機の動向を、業界団体の日本自動販売機工業会が毎年公開している統計値を基に、確認していく。

まずは直近、2016年末時点の自動販売機台数。飲料水、各種サービス、たばこその他もろもろを合わせ、全部で494万1400台。合わせて参考値として、直近分のみだが自販機による自販金額も併記しておく。ただしこの金額には両替機や自動精算機の取扱額は計上されていない。

↑ 自販機普及状況(万台、各年末時点)
↑ 自販機普及状況(万台、各年末時点)
↑ 自動販売機の自販金額(2016年、億円)
↑ 自動販売機の自販金額(2016年、億円)

種類別では飲料自販機がもっとも多く約半数の248万台、次いでコインロッカーや両替機、ビデオソフトやパチンコ玉貸し機などの自動サービス機が129万台。切手や乾電池、新聞などの「日用品雑貨自販機」の86万台が続く。飲料自販機内では清涼飲料がもっとも多く213万台、残りが牛乳やコーヒー・ココア(カップ式)、お酒やビールなどとなる。

前年からの変移を見ると、たばこ自動販売機の減少が著しい。この動きは2011年分から継続している傾向だが、2011年は震災による物理的ダメージに加え、たばこそのものの出荷制限や品目数の減少なども影響を与え、採算性の問題や省エネの観点から撤去する事例も多く、大きく減少していた。しかし2012年以降は少なくとも震災や出荷制限による直接原因は無いにも関わらず、相変わらず大きな減少を続けている。

これはたばこそのものの需要が減退しているのに加え、節電対策の矢面に立つ形で自販機そのものが一時停止させられたり照明を消されることでアピール度が減り売り上げが落ち(今なお節電の貼り紙と共に、灯りを消されているたばこ自販機の姿を目にすることもある)、採算が取れなくなる事例が増えていること、さらにはタスポ絡みや震災後の出荷制限などを経て、たばこを自販機で買う人そのものが少なくなっているのが要因(コンビニでの購入にシフトしつつある)。その上、だばこの自販機を併設している「街のタバコ屋さん」的なたばこ販売店が、店主の高齢化に伴い閉店、合わせて自販機を撤去してしまう例も増えている。

また台数よりも販売金額(自販機本体の代金ではなく、自販機が提供する商品やサービスの売上)の落ち込み具合が著しいのも特徴。これは自販機経由のたばこ購入者が減り、自販機あたりの売上、採算が落ちている事を意味する。このことから、現在稼働中の自販機でもビジネス面で厳しい状態が続き、来年以降もさらに台数が減退するであろうことは容易に想像ができる。

↑ 自動販売機動向前年比(2016年)
↑ 自動販売機動向前年比(2016年)

たばこ自動販売機以外で興味深い動きを示したのは券類自販機。乗車券の券売機需要はほぼ一巡したが、外食産業で効率化の促進や食品衛生の観点から飲食チェーン店を中心に職権自販機の導入が進み、台数は前年比でプラス5.0%もの値を計上する形となった

昨今各方面で消費分野に影響を与えているコンビニのカウンターコーヒーも、自販機動向に大きな影響を与えている。飲料自販機に関して台数の解説部分で「低価格商品販売自販機の展開やコンビニ・コーヒーとの競合により自販金額が減少した」の文言があり、直接カウンターコーヒーが自販機に影響を与えたのではなく「カウンターコーヒーの売り上げが伸びる」「需要が奪われ相対的に缶コーヒーの売上が減少する」「缶コーヒーのメーカーが自販機への投資リソースを減退する(「中身商品メーカーの自販機投資意欲が低迷した」との文言あり)」との連鎖反応的な流れが確認できる。販売金額面でも「コンビニ・コーヒーとの競合等が影響し、パーマシン(1台当りの売上)が減少したため」との表記が見受けられる。

他方昨今見かける機会が増えた、通常価格より廉価での販売をセールスポイントとしている低価格商品販売自販機も、業界の投資モチベーションの足を引っ張る形となっていることがうかがえる。

震災直後ほどではないものの、今なお自動販売機に対する無理解に端を発する、電力に絡んだバッシングの声を見聞きする。引き続き自販機業界には「合理的」な対策を求めると共に、一般の人たちにおいては感情論的・非論理的非難を起こさないよう願いたいものだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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