Yahoo!ニュース

日本や諸外国別に見た「真の自国民たる条件」への想いの相違

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自国民としての認識を確たるものとするための条件とは(写真:アフロ)

平穏な共同社会の維持管理には欠かせない仕組みの一つが国家形態であり、地球にはその概念に基づいて国境線が設定され、数多くの国家が存在している。しかし昨今では技術の進歩や環境、状況の変化に伴い、その理念がゆらぎ、一人一人がその国の自国民であるか否かについて、再認識・再確認を求められる風潮が強まりつつある。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社PewResearchCenterが2017年2月に発表した調査結果「What It Takes to Truly Be ‘One of Us’」(※)から、日米欧に仕切り分けした上で、それぞれに住む人達における国籍以外の「自国民として必要な要素」への認識の相違を確認していく。

今調査では法的な問題(国籍など)以外で自国民たる自覚、他人からの認証を受けるのにはどのような条件が必要かに関し、「自国語が話せるか」「自国の習慣や伝統を尊重・共有しているか」「自国で産まれたか」「自国の主宗教を信仰しているか」の観点で、どこまで重要か否かの判断で答えてもらっている。

次に示すのは諸国毎における、その4項目の全体的な回答動向を示すものである。まずはアメリカ合衆国。

↑ 真の自国民としては重要か否か(アメリカ合衆国、2016年春)
↑ 真の自国民としては重要か否か(アメリカ合衆国、2016年春)

「自国語が話せる」は重要視されており、賛意派が9割超え。「習慣や伝統の尊重・重視」は大変重要派こそ少なめだが、やはり重要視されており賛意派は8割を超えている。他方、自国で産まれたか否かは重要視する人としない人がほぼ同率となっている。同国の実情を色々な意味で思いはかることができる結果ではある。主宗教もまた同様で、しかも重要視しない人のうち強度の回答が多い結果となっている。

続いてヨーロッパ諸国。

↑ 真の自国民としては重要か否か(ヨーロッパ、2016年春)
↑ 真の自国民としては重要か否か(ヨーロッパ、2016年春)

ヨーロッパ各国でその国内事情や歴史により傾向は大きく異なるので、今回調査に参加した諸国(ハンガリー、ギリシャ、イタリア、ポーランド、スペイン、イギリス、フランス、オランダ、ドイツ、オーストラリア、スウェーデン)の平均値との認識が欠かせないのだが、自国語や自国の習慣・伝統に関してはアメリカ合衆国とさほど変わりない高い値動きをしている。むしろ強度の重要視との回答率はアメリカ合衆国より高いほど。

自国で産まれたか否かもアメリカ合衆国とさほど違いは無いが、主宗教に関しては大きな差異を示しているのが興味深い。重要視派は3割強に留まり、重要視しないとの意見は6割近くに達している。もっとも今件は2016年春の調査結果であり、ここ数年に渡りヨーロッパ諸国で大きな社会的意識変化が生じているであろう実情を思い返すと、それから1年経過した現在ではどのような状況なのか、気になるところである。

最後は日本。日本の宗教事情に鑑み、元々の調査でも「自国の主宗教を信仰しているか」は日本では問われていないので省略してある。

↑ 真の自国民としては重要か否か(日本、2016年春)
↑ 真の自国民としては重要か否か(日本、2016年春)

自国語が話せるかについては他国同様大変高い値を示している。習慣や伝統の尊重は大変重要派がやや多い一方で、重要視していない人の割合もいくぶん高め。そして自国で産まれたかについては他の国以上に重要視する人が多く、実に9割に達している。日本の実情を思い返せば、すべての項目に関して納得のいく結果には違いない。

■関連記事:

アメリカが抱く日本のイメージ「豊かな伝統と文化」がトップ

アニメや漫画より自然や神社・寺院、日本食…海外の人が日本に求める文化・コンテンツとは

※What It Takes to Truly Be ‘One of Us’

対象国に2016年3月から5月に18歳以上の男女に対して渡り電話による通話アンケート方式(一部は対面応対方式)で行われたもので、有効回答数は約1000件(一部の国ではそれ以上)。それぞれの国の実情に合わせてウェイトバックが行われているが、一部の国では都市部のみの調査となっている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事