子供達の喘息(ぜんそく)の現状と状況推移を探る
喘息(ぜんそく)は他人からの見た目以上に、本人に体力だけでなく精神面でも大きな負担が課せられる。子供達の間ではどれほどの割合で症状が確認されているのだろうか。文部科学省が2016年12月に発表した「学校保健統計調査」から確認していく。
まずは最新2016年度における学校種別・年齢別の喘息の者の割合。
5歳から6歳に成長すると急に値が高まり、10歳ぐらいまでは4%前後の高い値を示す。この年齢は小学校時代に該当する(大よそ6歳から12歳までが該当する)。小学校の環境が喘息を誘発するのでは無く、「小学校に進学して身体検査などを綿密に行う」「保護者の健康意識が高まる」などの理由から、喘息が”発覚する”ものと思われる。中学校へ進学するにつれて値が低くなるのは、身体的な成長の他、環境がやや開放的になることが考えられるが、このデータだけでは確証は持てない。一方で高校生でも2%近くの値は、50人に1人(2クラスに1人程度)は喘息持ちとの実態を示していることになる。
これを男女別に見ると、一様にして女性の方が低い値を示している。
幼稚園から高校まで、男女間では男性が女性よりも高い値との結果が出ている。原因は不明だが、中高生の場合は「女性の方が生育が早く、体力が付きやすいから」と考えることができる(その場合でも幼稚園・小学校の説明はつかない)。ホルモンの影響によるものとの説もあるが、まだ類推の域を出ていない。
最後に経年推移。
概して喘息保有者は増加傾向にあった。収録されているもっとも古い1967年度分では、幼稚園0.29%・小学校0.25%・中学校0.08%・高校0.03%だったのに対し、2016度年ではそれぞれ2.30%・3.69%・2.90%・2.30%にまで増加している。
これは前述の通り健康意識の高まりで診断をする人が増え、結果として喘息持ちであることが判明した、と考えられる。つまり喘息持ちそのものが増加したのではなく、露呈・確認数が増えたと考えた方が自然ではある。無論高度経済成長期を中心に、工業化や自動車の普及で生じた大気汚染が原因で、喘息を罹患する割合が増えたのも一因だろう。
一方直近の動きとしては、2010年度から2011年度を天井として、小学校や幼稚園では減少の動きも見受けられる。中学校・高校では頭打ちの状態だが、現在幼稚園や小学校の世代が進学するに連れて、今後中高校でも喘息の者が減ってくる可能性は多分にある(直近2年間に限れば幼稚園が増加しているのはやや気になるが)。
喘息は他人からの見た目以上に、本人にさまざまな負担が課せられる。特に体力の消耗ぶりは想像を絶するものがある。何しろ日常茶絶え間なく行われる呼吸プロセスで、多分に息苦しさと疲労を覚えてしまうのである。身内も含め、もし周囲に喘息持ちの人(特に子供)がいたら、十分以上の配慮を願いたい。
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