牛肉と豚肉、どちらが良く食されているのか(金額編)
消費額で牛肉トップは和歌山市、豚肉は横浜市
さまざまな歴史的背景によって、関東では肉といえば主に豚肉、関西では牛肉を指し示す。よって、食品の名前にも注意をする必要がある。例えば「肉まん」は実際には豚肉が使われているが、関東では「肉=豚」なのでそのまま「肉まん」となる。しかし関西では「肉=牛」なので「肉まん」の表現では「牛肉入りの中華まん」と勘違いされてしまう。そこでわざわざ「豚まん」と呼んでいる。
それでは地域別で肉としてのイメージではなく、消費性向に違いは生じているのだろうか。総務省統計局が定期的に調査を実施し、その結果を公開している「家計調査」から必要な値を抽出し精査の上、状況の確認を行うことにする。
今件でまとめる必要があるのは主要3種の精肉「牛肉」「豚肉」「鶏肉」(精肉で細かい仕切り分けを確認できるのはこの3種類のみ。羊肉などは無い)の地域別消費性向。そこで家計調査年報から、すべての世帯に相当する「総世帯(単身世帯+二人以上世帯)」に関して、必要な値を取得する。全国都道府県庁所在市別の各食品における年間平均消費「額」について、「牛肉」「豚肉」「鶏肉」それぞれのデータを抽出し、世帯当たりの年間消費金額における上位10位を寄り抜いてグラフ化したのが次のグラフ。現時点では年ベースの値は2015年のものが最新のため、当然2015年におけるランキングとなる。
いくつかの都市は複数のグラフ内に顔を見せており、特定の種類だけでなく多種目の精肉を金額面で多く購入=消費していることが分かる。また上位陣を見ると「牛肉は西日本が多い」「豚肉は東日本が多め」「鶏肉は西日本、特に九州が多い」傾向が見て取れる。
このうち「九州で鶏肉の消費金額が多い」のは、九州地方が「唐揚げのメッカ」的存在なのと深い関係がある。また鶏肉自身の消費が大きい起因に関しては、「九州で鶏肉の消費が多いのは、古くから外国との交流があり、水炊き、筑前煮などの食文化もあったことが影響している」との説明が「全国やきとり連絡協議会」の公式サイトで確認できる。鶏肉の消費が元々メジャーなため、唐揚げ文化も活性化したようだ。また日本唐揚協会の歴史解説「唐揚げの歴史」でも、元より養鶏場が多くあり、それが戦後の食糧難打開という国策にも相まって、この地域で唐揚げが多く食されるようになったと説明されている。
牛がメインか豚がメインか、なるほどな傾向
良い機会でもあるので、状況のさらなる把握を行う。まずは「肉類(精肉以外に合いびき肉、他の生鮮肉、ハムやソーセージなどの加工肉も合わせたもの)全体額」の上位20位と、それぞれにおける「牛肉」「豚肉」「鶏肉」の金額を積み上げたグラフを創り上げる。肉類を金額ベースで一番多く消費しているのは奈良県奈良市で9万2460円、次いでわずかな差で和歌山県和歌山市が9万2372円で続く結果となった。
鶏肉は単価が安いので牛・豚と比べると金額ベースでの比率は小さくなるが、それでも和歌山市以外に長崎市、宮崎市や鹿児島市などでは大きな値を占めている。またこのグラフから確認できるように、牛と豚で第2位、鶏ではトップの奈良市が、肉類の合計消費額でも群を抜いて最上位のポジションについている。主要3種を食べまくり状態。
最後に金額ベースで都道府県別(各都道府県庁所在地がある地域別)に、世帯単位での消費金額を比較し、牛肉と豚肉のどちらを多く消費しているかで色分けした地図を作成した(鶏肉が最上位の場所は皆無)。また今図版の作成には「白地図ぬりぬり ver.δ」を利用している。
九州・中国地方で一部「豚肉>>牛肉」の地域もあるが、大よそ近畿地方より西は牛肉の購入消費金額が、豚肉を上回っている。例えばカレーに使われる肉の件も合わせ、「西牛東豚」な状況が確認できる次第ではある。
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