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住宅ローンの重荷が分かる、夫婦世帯などの貯蓄や負債状況を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 住宅取得は夫婦世帯のロマン。家計への負担は増えるけれど……

夫婦世帯をはじめとした二人以上で構成される世帯では、その多くが住宅を取得し、そして少なからずはローン返済のさなかにある。その実情を総務省統計局の定点観測調査「全国消費実態調査」の結果を元に、貯蓄や負債、純貯蓄高の現状から確認していく。

二人以上世帯、大よそ夫婦世帯の場合、年収は世帯主年齢と共に上昇し、50代がピークとなる。60代に入ると早期定年組も含めて定年退職することもあり、減少に転じる。

↑ 世帯主年齢階級別貯蓄現在高及び年間収入(二人以上世帯、2014年)(万円)(無貯蓄世帯も含む平均)
↑ 世帯主年齢階級別貯蓄現在高及び年間収入(二人以上世帯、2014年)(万円)(無貯蓄世帯も含む平均)

一方、世帯主の年齢階級別による負債現在高は次の通りとなる。やはり住宅ローンを抱えることが多い30代から40代で飛び跳ねる値が出ている。

↑ 世帯主年齢階級別負債現在高(二人以上世帯、万円、2014年)(負債非保有世帯も含めた平均)
↑ 世帯主年齢階級別負債現在高(二人以上世帯、万円、2014年)(負債非保有世帯も含めた平均)

青色(不動産関連)の負債が大部分を占めている。この値は二人以上世帯全体の平均値であり、不動産を購入していない人(あるいは元々持ち家保有者、ローン完済の人)は丸々この負債の分が無いことに留意する必要がある。世帯主が30代未満でも住宅を購入する世帯はあるが少数派。やはり30代から40代で購入し、50代のうちに半ばが完済しているようだ。

さてそれでは、「貯蓄額」から「負債額」を引き、「純貯蓄額」を算出する。ただし負債の多くは直上の通り「住宅ローン」であり、これを他の「通常の負債」と一括して考えて貯蓄と相殺するのはやや難がある。住宅はそのまま換金はできず流動性も低いが、世帯の資産となるからだ。あくまでも参考値程度のものとして見てほしい。さらに持ち家率も重ね、住宅ローンとの関連も精査できるようにする。

↑ 世帯主年齢階級別純貯蓄額と持ち家率(現在貯蓄額-負債)(二人以上世帯)(2014年)
↑ 世帯主年齢階級別純貯蓄額と持ち家率(現在貯蓄額-負債)(二人以上世帯)(2014年)

住宅ローンの負担は大きく、40代までは実質マイナス。30代で大きなマイナス値を示すが、同時に持ち家率も30%ポイント以上跳ね上がっている。30代で多くの二人以上世帯が住宅を取得し、そのローンによる負担を抱える状況となったことが分かる。恐らくは子供が生まれ、あるいはそれに備えての取得だろう。

40代でも実質的な貯蓄額はマイナス。50代になってようやく首が回るようになる。繰り返しになるがあくまでも参考値であるものの、金銭的なプレッシャーの観点では「住宅ローンを(あらかた)返し終えた50代で、ようやく気軽さが見えてくる」といった実情が理解できる。

実際、住宅ローンなどの負債保有者率などの動向を確認すると、50代で大きく減り、それと共に完済(実際には一括購入した人や遺産相続などで取得した人も含む)して負債負担の無い持ち家を持つ人は50代で急増している。

↑ 世帯主年齢階級別住宅・土地のための負債と持ち家率(二人以上世帯)(2014年)
↑ 世帯主年齢階級別住宅・土地のための負債と持ち家率(二人以上世帯)(2014年)

「住宅・土地以外の負債」が50代で大きく増える現象も確認できるが、その理由は住宅ローンという「肩の荷が下りた」のが一因なのかもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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