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40年余りの諸外国における二酸化炭素排出量動向

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 二酸化炭素排出量の増加は人口・産業・経済の発展の証でもあるのだが

現在パリで開催中のCOP21で重要事案として掲げられているのが温室効果ガス、中でも主要となる二酸化炭素の排出量問題。その半世紀近くの動向について、国際エネルギー機関(The International Energy Agency (IEA))の公開情報から確認する。

まずは世界全体の総量、そして主要国(直近年時点で排出量上位国。具体的には中国、アメリカ合衆国、インド、ロシア、日本、ドイツ、韓国、カナダ、イラン、サウジアラビア)の経年における二酸化炭素排出量推移。1971年以降、及び1990年以降に関し、その推移をグラフにする。なおロシアは1989年分まではソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)のデータを当てはめているため、その前後の年で値に大きな変動が生じている(以降のグラフで同様。1990年以降もしばらく不規則な動きが生じているのは、対象地域に変化が生じているから)、中国は原則的に2000年より前のものは香港を含めず、それ以降のものは含んでいる(平均値周りは中国本土のみ)ことに留意してほしい。

↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1971年~2013年時点、IEA調べ)(世界総量)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1971年~2013年時点、IEA調べ)(世界総量)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1971年~2013年時点、IEA調べ)(上位国のみ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1971年~2013年時点、IEA調べ)(上位国のみ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1990年~2013年時点、IEA調べ)(上位国のみ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(1990年~2013年時点、IEA調べ)(上位国のみ)

中国の急上昇ぶり(増加率、増加量)やアメリカ合衆国の昔からの値の大きさ、そしていくつかの先進諸国における技術革新・公害対策などによる効果が出ているのが確認できる(ロシアが急激に値を落としているのは、上記説明の通り、ソ連からロシアへ計測対象が変わったため)。日本やドイツは元々排出量が(今グラフ中では)少なめなポジションなのに加え、それでもさらに値を削っているのが見て取れる(もっとも2008年から2009年にかけての減少は、景気後退によるところも大きい)。

なお中国とアメリカ合衆国のポジションが入れ替わったのは2006年。この時アメリカ合衆国は56.0億トン、中国は59.2億トンだった。

続いて全世界比の推移。こちらは1990年以降に限定する。

↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(1990年-2013年時点、IEA調べ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(1990年-2013年時点、IEA調べ)

世界全体の排出量との比率の上でも、中国の増加、アメリカの漸増から漸減への転換、インドの漸増が見て取れる。またドイツや日本は漸減状態にあることが確認できる。特に中国は確実にその値を増やしているのが容易に把握できる状況となっている。

なお日本が2011年以降わずかだが排出量が増加に転じているのは、震災起因による発電方式の状況変化に伴い、二酸化炭素排出量が増えているのを受けての結果。特に天然ガスの燃焼による増加が著しい。

最後に「国民一人当たりの」二酸化炭素排出量推移。こちらは折れ線グラフでは分かりにくいところもあるので、直近10年分の棒グラフを併記し、合わせてその推移を見ることにする。なお棒グラフの横軸は直近年の国別排出量の多い順にしてある。

↑ 一人当たりの二酸化炭素排出量(排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)
↑ 一人当たりの二酸化炭素排出量(排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)
↑ 一人当たりの二酸化炭素排出量(直近10年、排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)
↑ 一人当たりの二酸化炭素排出量(直近10年、排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)

アメリカ合衆国やカナダは高めの水準だが、それでもじわじわと値を落としていること(景況感の回復と共に横ばいにシフトしているが)、ドイツや日本も同様に今世紀に入ってからは削減効果が出始めていることが読み取れる。ただし日本においては、2011年以降は上昇。震災による電力事情の影響が出ている。一方で韓国は急速に値を増していたがこの数年は頭打ち。

また総量部分でも増加傾向が目に留まったサウジアラビアが、アメリカ合衆国と肩を並べる多さ(実際、アメリカ合衆国以上の値を示している)・中国を抜かんばかりの上昇傾向にあるのが確認できる。これは他の中東石油産出国でも起きている現象で、例えば国ベースの排出量上位国に限定しなければ、一人あたりの排出量の最上位国はカタールで33.38トン/年となる。それだけ原油価格の高騰を受け、近代化による増加が進んでいることになる。

一方、中国の確実な上昇ぶりも注目に値する。同国の人口数を考慮すれば、この傾斜が何を意味するのか、今記事一つ目のグラフと照らし合わせれば容易に理解できるはずだ。また、人口の観点で考慮すると、今グラフでは傾斜こそ現時点ではゆるやかで一人あたりの値も低いものの、インドの動向も気になるところではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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