「今の場所にずっと住み続けたい」希望者は8割近く
高齢化や過疎化と共に地域サービスの希薄化、そして住宅などの老朽化が顕著化し、引越しを余儀なくされる・強く勧められる状況も多分に想定され、一部では実体化している。老後の生活を考えた場合、それでもなお人々は現居住地域に住み続けたいと思うのだろうか。内閣府が2015年10月に発表した国土形成計画の推進に関する世論調査の結果を元に、現状を確認していく。
住民自身の高齢化に伴い行動範囲が狭まるのは周知の事実で、また日常生活における事故の可能性が上乗せされるに連れ、そして過疎化が進むと、現居住地域での生活はリスクの上で好ましくない状況となる場合もある。そのような事態に陥るケースを踏まえ、老後において(より生活しやすいと考える場所への)移住を考えているか否かを尋ねた結果が次のグラフ。
大よそ8割は現住所での定住を希望し、移住を望んでいる人は2割足らずでしかない。男女差はほとんどなく、わずかばかり男性の方が定住意向が強い程度。
むしろ差異が大きいのは、回答者の年齢階層や現在の居住地別の移住・定住志向。
年齢階層別ではきれいな形で、高齢層ほど定住派が多くなっている。これは高齢層ほど賃貸ではなく持ち家に住んでいることに加え、単なる「住宅という建物に住む」に留まらず、周辺住民との付き合いも含めた「地域に住む」との認識で居住を考えているからに他ならない。新しい場所で生活行政サービスが充当していたとしても、新たな周辺住民との関係を構築し直す自信が無い、時間的・精神的余裕が無い。そして思い出も無い。だからこそ定住を希望する。
本来ならば過疎化のリスクが高い地方ほど移住意欲も高くなると想定されがちだが、実体としては都市部よりも地方の方が定住意向は強いのも、近所づきあいが親密であるからこそ(もっとも同時に、地方ほど高齢者の割合が高いのも一因だが)。
都市構築のシミュレーションゲーム感覚で人口の行き来を操作できれば楽ではあるが、実際の行政上の話となると、個々の住民の感情も多分に影響を与えるため、一筋縄ではいかない。単なる人数の差し引きのみで考えると、多くの人の不幸を導くことは、直近ならば震災以降に移動を余儀なくされた、一時的に避難をした人達のさまざまな逸話を見聞きすれば容易に理解はできるはず。
過疎化は解決への施策が急がれる問題には違いないが、その解消策として妥当性の高い方策を実施する際に、どこまで該当する人達の意図・感情をすくい取ることができるか。それこそが今後の課題となるに違いない。
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