少年非行の社会環境原因、大人の認識は「スマホやネットが悪い」
大人が認識する少年非行の原因は「スマホやネットが悪い」
実際には件数・人口比共に減少しているにも関わらず、大人達の多分は増加中との誤認識をしている少年(14歳から19歳までの少年・少女)非行。それではその大人達は、どのような環境が原因で少年非行が増加していると考えているのだろうか。内閣府が2015年9月に発表した世論調査(2015年7月23日から8月2日にかけて、層化2段無作為抽出方によって選ばれた全国の日本国籍を有する20歳以上の人に対して、調査員による個別面接聴取法で実施。有効回答数は1773人)を元に確認していくことにする。
次に示すのは少年非行に関して、どのような社会環境が問題か、後押しする要因となるのか、回答者が認識している条件を尋ねた結果。あくまでも回答者の考え、認識であり、科学的根拠や因果関係的裏付けがあるものとは限らないことに注意。小見出しにもある通り、スマートフォンやインターネットの普及に伴い生じた環境が、少年非行に後押し的な影響を与えたと認識する人が多数を占めている。
最上位はスマホやネットなどで簡単に少年にとって有害な情報が手に入ってしまう環境が問題だとするもの。次いでスマホやネットを介して見知らぬ他人との接触機会が生じるとの意見。さらにスマホやネットによるやりとりが多様化され、少年の行動が大人、保護者が掌握しにくくなるとの意見が続いている。スマートフォンやインターネットは(フィルタ機能を用いることで制限はできるものの)基本的に大人が使うことを前提としたインフラのため、少年が操作しても使える機能も大人と同様のものとなる。当然、大人と同様のことを「少年が」行えるとなれば、リスクも大きなものに。例えるなら、自動車の運転を無免許の子供が行えば(法的問題は別として)、行動範囲もまた大人と同様のものとなるようなもの。
またこれらの状況は多くの大人、保護者にとって、自分自身が子供の時には無かったものであり、経験則が利用できないことから、言葉通り手探り状態での対応が求められる。布おむつから紙おむつへのシフトなど比べものにもならない、劇的な環境変化のため、これまでの常識、経験の応用も難しい。対応が不十分となれば、歯止めが効きにくく経験も不足している子供達は、あっという間にリスクを体現化しかねない。大人が問題視するのも当然。
第4位の「問題情報を取り扱ったDVDや出版物の入手」はコンビニの普及によるところも一部考えられるが、同時にインターネットによる通販での取得も想定されるため、見方によっては上位陣の「スマホやネットが悪い」と類似性は多分にある。一方、第5位以降の項目は昔から少年非行の原因とされていた要件で目新しいものは無く、今の大人でもすぐに理解できるものばかり。
男女別に見ると「少年が遊んだり、スポーツをする施設や活動の場が少ない」以外は具体的項目のすべてで女性の回答率が高い、つまり問題視している。その分女性は子供の非行を心配している、あるいは多様な情報を取得してリスクを認識していることになる。
4年前と比較すると
上位3項目となった「スマホやインターネット」は、前回調査の4年前においては子供達の間には、今ほどの浸透状態には無かった。その点を踏まえ、4年前の調査結果を併記し、大人が認識している少年非行に係わる社会環境のリスクの変化を確認する。
同じ「スマホやインターネット」でも見知らぬ人と出会ってしまう項目は以前から高い値を示しているが、情報の入手やコミュニケーションの実情が把握しにくくなっている点は、4年前と比べて大きく増加している。多分にソーシャルメディアやチャットシステムのようなサービスの充実が、少年におけるスマートフォン・インターネットとの付き合い方に変化をもたらした結果といえる。
他の項目は大きな変化は無し。ゲームセンターなどの環境周りは実情に合わせて減っている一方、リスク系アイテムの増加が見られるのは、ネット通販によるところもあるのかもしれない。
昔ながらの少年非行のリスク要因は変わらず、あるいは漸減する一方で、「スマホやインターネット」の影響は非常に大きなものとなっている……これが今の大人たちの認識であることは容易に理解できる結果となっている。
他方、喫煙や夜間徘徊(はいかい)などの不良行為の捕捉実態が減少する傾向にあることに関しては、「スマホやインターネット」が原因であるとの認識を持つ人が5割近くにも達している。
あくまでも副作用的、たなぼた式的な認識だとは思われるが、多くの人が「スマホやインターネット」の普及により、不良行為が減っているとの認識を示しているのも事実。ただし「減っていない」とする意見は18.8%、「隠れてやってるので見つからないだけ」は33.3%。実情を認識できない人も多分に居ることに違いはない。
少年非行問題の状況改善のためには、まず指導啓蒙を行う大人側における、煽動や感情、偏見にとらわれない、正しい現実認識・状況把握が求められよう。
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