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老後に希望する「子供との距離」、同居? 近所住まい、それとも別居!?

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 最近では二世帯住宅も注目を集めているが……

高齢者の増加に伴い社会問題化している様々な事案の一つに挙げられるのが、高齢者とその家族の居住関係。リスク面では同居が望ましいが、プライバシーや負担面では敬遠されがち。内閣府が2015年8月に発表した世論調査「国民生活に関する世論調査」の結果から、現状の認識を確認していく。

今調査項目では設問で「一般的に、老後は誰とどのように暮らすのがよいと思うか」とあり一般論を尋ねている。もっとも設問の性質上、実質的には回答者自身の希望・要望が多分に反映されている。直近の2015年においては、子供との同居を望む人は2割強、近所住まいは1/3、別居を希望する人は4割近くとの結果となった。

↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(別居か同居か)(2015年)
↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(別居か同居か)(2015年)
↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(2015年)
↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(2015年)

大まかな仕切り分けでは別居派と近所住まい派が競る形で、同居派はやや少なめ。他方、同居・近所住まいの対象となる子供の性別に見ると、男性の子供との同居あるいは近所住まいを望む人が多い。また子供の性別は構わずとの意見は、近所住まいを望む人に多い。

男性の子供との緊密な関係を望む理由は、今調査では具体的に調べられていないが、金銭的な余裕や力仕事、自動車の運転周りの問題、そして何よりも子供世帯における影響力の問題があるのだろう(子供夫婦で自分の子供が男性=夫の場合、その夫婦内に対する影響力は自分の子供が女性=妻の場合よりも強いものになるとの想像は容易にできる。また同居を願った時の許諾の可能性も多分に子供が男性の方が多いものと考えられる)。

この結果を回答者の年齢階層別に見たのが次のグラフ。

↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(別居か同居か)(2015年、回答者年齢階層別)
↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(別居か同居か)(2015年、回答者年齢階層別)

20代と30代でやや違いが出ているものの、大よそ若年層ほど同居派は少なく、近所住まい派が多い。特に回答者自身が老後世代となる60代以降では同居派が大きく増え、近所住まい派や別居派が減っていく。各世代としての結果なのか(年齢に関係なく、昔に生まれた人は子供の同居を望み、最近に生まれた人は別居を望む)、それとも年齢階層別の特性、つまり自分自身の現状に合わせた回答の可能性(高齢者自身は頼りになる子供と共に生活をする同居を望み、若年層は近所住まいや別居を希望する)も多々あるが、それは10年単位で同一世代の変化を見なければ確認ができない。

しかし単純比較ができるのは2008年以降の分のみ。そこで参考までに2008年と2015年の結果に関して、老後に該当しうる60代以降の動向を比較したのが次のグラフ。

↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(別居か同居か)(2008年と2015年、回答者年齢階層別、一部)
↑ 老後に関する子供との同居希望スタイル(別居か同居か)(2008年と2015年、回答者年齢階層別、一部)

回答者の歳が上になるほど同居派が増えることに違いは無いが、同時に経年変化に伴い「老後」に該当する回答者自身で同居派が減り、近所住まい派や別居派が増えている。同居で子供に何かと頼れるのは事実だが、同時にわずらわしさを覚える面もあり、また子供から敬遠される事例も想定できる。老後における居住環境の意識変化も、少しずつ起きているようだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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