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中国の高圧的拡大政策や米国の対応策を関係諸国はどのように見ているか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 覇権的政策を遂行するため軍事的圧力を強める中国に対し米国は……(写真:ロイター/アフロ)

米軍増派に賛成は51%

周辺国への積極的な軍事的圧力、さらに実力行使を繰り返す中国に、多くの同盟国を持つアメリカ合衆国がアジア方面への軍事リソース配分を増やし、積極的サポートの姿勢を見せている。その状況を該当国はどのように見ているのだろうか。アメリカ合衆国の民間調査機関Pew Research Centerが2015年6月付で発表した世界規模の調査結果「Global Publics Back U.S. on Fighting ISIS, but Are Critical of Post-9/11 Torture」をもとに確認していく。

次に示すのは今調査の対象国のうち関連国(アジア諸国)において、対中政策としてアジア方面にアメリカ合衆国の軍を増派する施策が行われることに関して、アジアの平和を維持することになるので良いと判断しているか、それとも中国との緊張を高めるので悪いと考えているかを答えてもらったもの。多くの国は中国の意欲的圧力に脅威を覚えているため、同盟国のアメリカ合衆国の助力的施策には好意的だが、中国との関係が緊密な国ではむしろ否定する意見が多い。

↑ アジア方面への米軍増派は平和を維持するのに良いことか、それとも中国との緊張を高めるので悪いことか(2015年春)
↑ アジア方面への米軍増派は平和を維持するのに良いことか、それとも中国との緊張を高めるので悪いことか(2015年春)

反対派が多いのはマレーシアとパキスタン。両国とも中国との関係が緊密であることから、否定的意見が多いのも理解できる。一方、アメリカ合衆国自身も賛成派と反対派が均衡しており、国内でも意見が分かれている。

アメリカ合衆国の助力に対する判断では無く、回答者の属する自国の施策方針としてどちらの方向を向くべきかでも、個々の国の考え方が良く現れている。中国と経済関係を強めていくことを優先すべきか、領土問題において中国の圧力に屈せず自国の主張を強く行うべきかの二択で尋ねたところ、マレーシアでは8割超えが経済優先との結果が出ている。

↑ 中国との関係において領土問題で自国の主張を強く行うべきか、経済的な関係を強めていくべきか(2015年春)
↑ 中国との関係において領土問題で自国の主張を強く行うべきか、経済的な関係を強めていくべきか(2015年春)

中国側の経済力の発展ぶりに伴う影響力もあり、ベトナムとマレーシア以外では領土問題と経済問題の優先回答率にはさほど違いは出てない。衝突相次ぐフィリピンでも、経済を優先すべきだとの意見がわずかながら多いほどである。

対中有事発生時、米国は助けに行くべきか、関連国は期待しているか

それでは仮にアジア方面におけるアメリカ合衆国との同盟国、例えば日本や韓国やフィリピンのような国が、中国との間で深刻な軍事対立状態に陥った場合、「アメリカ合衆国の人達」は軍事力の行使による助力をすべきと考えているだろうか。それとも静観すべきと判断しているのだろうか。

↑ 日本や韓国やフィリピンのような同盟国が中国と深刻な軍事対立状態に陥った場合、アメリカは軍事力を行使して助力すべきか(2015年春)
↑ 日本や韓国やフィリピンのような同盟国が中国と深刻な軍事対立状態に陥った場合、アメリカは軍事力を行使して助力すべきか(2015年春)

軍事力で助力すべきとの意見を持つ人が過半数の56%、静観すべきとの人は34%。ケースバイケースは5%と案外少なめで、分からない人も5%に過ぎない。同盟に従い軍事力による手助けをすべきとの意見が多数を占めていることになる。

他方、それら同盟国側ではアメリカ合衆国の軍による助力がなされると期待しているだろうか。

↑ もし自国と中国が深刻な軍事対立状態に陥った時、米軍は軍事力による助力をしてくると思うか(2015年春)
↑ もし自国と中国が深刻な軍事対立状態に陥った時、米軍は軍事力による助力をしてくると思うか(2015年春)

今回掲示された、特に緊迫感の強い3か国ではすべてが期待派が多数を占めている。期待派が一番少ない日本でも6割、韓国では3/4近くが期待を有している。否定的な意見は2割から3割に過ぎない。

一連の中国による軍事的強圧行為は、中国においては防衛行動に過ぎないとの意見もある。実際中国側は「核心的利益」との文言を用いるなど意欲的侵略行為では無く、自国の利益を守るための防衛的施策であるとの主張をしている。しかしそれが各国の視点で意欲的侵略行為に該当するならば、許容されるはずはない。

今調査ではアメリカ合衆国内の回答者において、支持する自国政党別の回答状況による仕切り分けも行われている。「日本や韓国やフィリピンのような同盟国が中国と深刻な軍事対立状態に陥った場合、アメリカは軍事力を行使して助力すべきか」に関しては、現在のオバマ大統領属する民主党支持者よりも、共和党支持者の方が積極性は高い(共和党支持者68%、民主党支持者49%)。

来年の大統領選挙の結果次第では、アジア情勢に大きな変化が生じるかもしれない。

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主要国の軍事費をグラフ化してみる(2015年)(最新)

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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