10年強で金額半分、頻度は4割にまで減った世帯単位の音楽・映像メディア購入実態
定額制ビジネスの急速な普及で最近では伸び率が低下しているが、デジタル経由の音楽や映像コンテンツの販売はそれなりに堅調。だがそれにも増して、CDやDVDなどの物理メディアによる音楽、映像メディアの販売不振が続いている。その実態を総務省統計局の家計調査の結果をもとに、世帯単位の購入実情から確認していく。
次に示すのは総世帯(全部の世帯)における年単位の、音楽や映像に関する収録済みのメディア(音楽や映像ソフト。録画用の何も記録されていないCDやDVD、BD媒体は含まず)購入の傾向を、金額と頻度の点から見たもの。今件は音楽・映像市場における影響を世帯単位で見るのが主目的なため、平均的な世帯となる総世帯の値を用いている。
また家計調査では2004年以前は「音楽・映像収録済メディア」項目は「オーディオ・ビデオ収録済テープ」「オーディオ・ビデオディスク」に分散して収録されていたが、今回はその双方を合算して計算に加える。
さらに2002年より前の値は、二人以上世帯のみのデータしか存在せず、購入頻度の値が無いこと、音楽や映像ソフトに関する概念が現状とは大きく異なることを考慮し、連続性の高い2002年以降の動向についてのみ精査を行う。
2002年以降に限れば2004年が購入金額・頻度共にピーク。金額では世帯当たり年間6780円を音楽や映像ソフトに費やしている(インターネット通販で購入しても物理媒体ならば該当する。デジタルデータ系は該当しない)。100世帯当たりの購入頻度は205、つまり大よそ1世帯当たり2回ほど購入している計算になる。単純試算だが、1購入あたりの金額は3300円ほど。一度に複数本のタイトルを購入することもあれば、この位の額はすぐに達する。今件はあくまでも全世帯の平均値であり、実際には毎年数万円も映像ソフトに投資する世帯もあれば、まったく購入しない世帯も多分にある。
購入金額、購入頻度は共に2004年をピークに漸減。一時盛り上がりを見せる場面もあったが、結局減少に歯止めはかからず、直近の2014年においては世帯平均金額は約3000円、購入頻度は年間で5世帯に4世帯が1回購入する程度にまで縮小してしまっている。
減少度合いが分かりやすいように、一番古いデータとなる2002年における値を基準値の1.00とし、各項目の相対値を算出する。購入額や購入頻度の大きさの違い、グラフの描写上発生しうる誤認を極力避けることが出来る。
2002年から2014年までの10年強の間に、平均的な世帯における音楽・映像ソフトの購入金額はほぼ半額、購入頻度に至っては4割強にまで落ち込んでいる。どれほどまでがデジタル系媒体で補完されているかについて、今件家計調査では確認が出来ないが、少なくとも音楽・映像業界を支える世帯購入において、半分程度に資金投入が減ってしまったことは間違いない。さらにこの下げ基調は留まる気配が無く、今後も下落を続けるものと考えられる。
音楽・映像メディアは企業や団体単位でも購入されるため、今件の購入性向の変化がそのまま業界全体の需要には一致しない。しかし大きな影響力を持ち、市場の多分を支える一般の世帯で、その購入意欲・支出金額が減っている実態は否定できない。
他方、この10年強あまりの間にも世帯平均の人数は減少しているため(2002年時点では2.63人、2014年には2.41人にまで減っている)、「世帯人数が減れば世帯単位での購入金額も減るはず」との意見もある。そこで一人当たり金額を算出し、その上で指数動向を見たのが次のグラフ。世帯人数には子供も含まれる、そして子供は購入性向が大人と変わるため、ぶれが生じ得るので、あくまでも参考程度のもの。また購入頻度は世帯人数で除算すると無意味な値となるため、今件では算出しない。
単純な世帯試算と比べて値を上げたものの、減少傾向にあることに違いは無い。10年強で一人当たり大よそ4割減。音楽業界、特に物理メディアの市場が加速時に縮小しているのも理解できる値ではある。
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