高まる自衛隊や防衛問題への関心、7割強は「関心あり」
関心ありと関心なし、その内情は
公的機関の一つではあるが、他の公務執行機関とは幾分異なる性質を持つ自衛隊。そして国の体制と安全を維持するのには欠かせない防衛問題。それらに対する日本国民の関心は高まりを見せつつある。内閣府が定期調査を行っている「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」の最新版にあたる調査結果が2015年3月に発表されたが、それによると自衛隊、そして防衛問題に対して否定肯定を問わず、興味関心のあるなしを「非常にある」「ある程度ある」「分からない」「あまり無い」「まったく無い」の5段階評価で尋ねたところ、全体では71.5%の人が「非常にある」「ある程度ある」を合わせた「関心あり派」に属する回答を示した。
男女別では男性の方が、世代別では高年齢層ほど強い関心を示している。ただし世代別では20代をのぞけば「ある程度関心がある」の回答率に大きな変化は無く、「非常にあり」の層の回答率の高低が、そのまま「関心あり派」の多い少ないを左右している。他方、関心がまったくない人はいずれの層でも数%。つまり世代別の変容は「非常にあり」が少しずつ増え、代わりに「あまり無し」が減っていく形を示している。
もちろん「関心がある」はそのまま自衛隊・防衛問題の肯定にはつながらない。否定をしているからこそ関心を持つ、あるいは否定肯定とは別次元で関心を持つ場合もある。そこで「関心あり派」「関心無し派」それぞれに、その理由を選んでもらった結果が次のグラフ。前回調査にあたる2012年分(2012年1月実施)の結果と併記し、その変化も合わせて確認する。
「関心あり派」の最大理由は、自衛隊の最大存在意義とされる「国土防衛問題」。前回調査と比べると7%ポイント近い上昇を示しているが、これは昨今の日本を取り巻く周辺地域環境問題で、該当国による軍事的・疑似軍事的圧力の事案が多数生じていることを背景にしたものだと考えられる。
一方それに近い値で「事態対応」、特に「大規模災害」などにおける「緊急展開可能な”まとまった実戦力(実践力)”」としての意義が挙げられる。これはこれまでの実績に加え、先の東日本大地震・震災での奮戦ぶりによるところが小さくない。もっとも震災から4年目を迎えるにあたり、前回の震災直後の調査結果と比べて、回答率はいくぶん減少している。なお「関心があるのは自衛隊の存在を否定しているからだ」とする回答者は関心あり派の1%にも満たず、「関心あり」の回答者はそのほとんどが、肯定的な意味での回答であることが確認できる。
「関心無し派」では「良く分からないので関心が無い」とする意見が半数近くを占めており、啓蒙不足が懸念される値が示されている。2番目の「自分の生活に関係が無い」は、1番の回答と意味的に近い。警察や消防同様に、本来なら「生活に関係が無い」平穏無事が一番望まれる状態であり、それを陰から支え、いざという時にだけ存在を再認識されるのが自衛隊のあるべき姿と表現できるからだ(「縁の下の力持ち」的なものとして、各種インフラもまた同様の立場といえる。もちろんこれは「ないがしろにして構わない」を意味しない)。
中長期的には増加する関心度
自衛隊や防衛問題に対する関心度は年々上昇する傾向にあり、今項目調査開始の1978年と比べ、「関心あり派」は20ポイント近い上昇を見せている。
直近では71.5%が「関心あり派」で調査開始以来の最大値。周辺環境の変化に伴い、大よそ好意的な意味での関心を寄せる意見が増加した結果といえる。ちなみに1991年において湾岸戦争を機会としたものと思われる「関心あり派」が大規模に増加しているが、この時にもその内情としては「日本の平和と独立に係わる問題だから」が48.9%、「国際社会の秩序維持に関わる問題だから」が22.7%と多数を占めており、否定派的な関心を意味する「自衛隊は必要ないから」は2.0%に留まっている。
政府機関への関心が高まること自体は良い事ではあるが、不十分な情報や無理解による過度な期待を寄せられたり、逆に誤解による反発が高まるのは好ましい話では無い。関心に応えるだけの適切な情報提供・啓蒙を行い、理解を深めてもらう努力が欠かせまい。
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