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アマゾンドットコムの2014年売上は約10兆円

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ アマゾンドットコムのプライム会員解説ページ。大規模な勧誘攻勢継続中

累乗的に伸びる売上、2014年は890億ドルに

今や日本国内でも最大のネット通販サイトの立ち位置を有するアマゾン。同社のアメリカ本社が先日2015年1月29日付で発表した2014年における決算内容によると、世界全体で890億ドル(約10兆円)もの売り上げを確保したことが明らかになった。その内情を電子開示システムEDGAR(Electric Data Gathering、Analysis and Retrieval)などで公開されている各種財務データから確認していく。

まずは売上と営業利益率。

↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率
↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率
↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率(2002年以降)
↑ アマゾンドットコムの売上と営業利益率(2002年以降)

営業利益率」とは「売上高営業利益率」のことを指す。つまり売上と営業利益(その企業の本業における利益)の関係。計算方法は「総売上を営業損益で割る」だけ。この値で「本業の稼ぎにおける効率の良さ・悪さ」が分かる。高い方が効率よい本業をこなしている、マイナスならば本業が赤字を出していることを意味する。

グラフの動向からも分かるように、売上高は累乗的に増加する一方、営業利益率は1999年に一度落ち込み(営業費用の大幅な増加が原因)、2001年まではマイナスのまま推移。2002年にはようやくプラスに転じている。しかしそれ以降、大きな上昇を見せることなく、営業利益率は横ばいを続けていた。

2007年以降は4%台、直近の2014年は0.2%しかなく、日本の一般小売店とさほど変わりがない、むしろ低い値。これはアマゾンドットコムが「利益率の高いビジネスをしているから」ではなく、「スケールメリットを活かしたビジネスをしている」「薄利多売の手法を採用している」からに他ならない。

また、2010年以降営業利益率は減退傾向を続けている。2011年以降は額面上の営業利益、そして純利益まで減少している(2012年、そして直近の2014年では純損失すら発生している)。これはアマゾンでは電子書籍端末のKindleの開発・販売も手がけており、同端末は競合するiPadなどに比べて、機能を絞り込み価格を抑える一方、アメリカ国内では通信コストは同社が負担するなど普及に向けた取組みを進めているのが原因。また社内外を問わずに投資案件を積み上げ、ビジネスの領域拡大を推し量っており、その影響から利益が圧縮されている。

さらに2014年の決算発表リリースで強調されているが、同社ではここ数年は、より大きな社の売上への貢献が期待できる、有料制会員サービス「プライム会員」への投資を積極化している。例えば動画ストリーミングサービス「Prime Instant Video」への投資に2014年だけで13億ドルを投資したことなどを挙げ、「我々は今後ともプライム会員のための投資・努力を惜しまない(We'll continue to work hard for our Prime members.)」と言及している。その甲斐もあり、2014年だけでプライム会員は53%増加、アメリカ合衆国に限れば前年比で50%増し、それ以外の地域ではアメリカ合衆国以上の成長率を示しているとのこと。

アメリカの消費欲を吸収するアマゾン

最新版となる2014年分の年次報告書をはじめ、過去数回分の報告書では、主要地域別の年間売上高推移が米ドル単位で記されている。為替レートの問題もあるので単純比較をするのは多分に無理があるが、本社のあるアメリカで各販売エリアの売上を如何にとらえているのかを知ることが出来る。

↑ アマゾンの地域別総売上推移(米億ドル)
↑ アマゾンの地域別総売上推移(米億ドル)

北米(アメリカ合衆国とカナダ)の売上だけで、直近ではアマゾン全体の6割強を占めている。いかにアメリカがアマゾンにとって、そしてネット通販市場として巨大なのかをあらためて理解できる数字ではある。

現在ではアマゾンは、インターネット上の通販ビジネスで世界ナンバーワンの地位を占めている。そして昨今では電子書籍・リーダーの世界にも乗り出し、関連事業も含め、確実に躍進を続けている。その上プライム会員への独自サービスを次々と打ち出し、ネット通販利用者の囲い込みに惜しみなくリソースを注入している。確固たる意志とそれを体現化するための絶え間ない努力、そして関係者の協力が、今の状況を作り出していることは間違いない。

昨今の電子書籍リーダー「Kindle」への注力ぶり、そして「営業利益率を下げてでも注力する価値のあるものへの邁進」との同社の方針も、同社の中長期的なかじ取りの一環と見れば、十分理解できるというものだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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