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社内に若者は何%いるのだろうか・若年労働者比率の実態を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 若年層も多くは正社員での就労を望んではいるのが……

若年層の労働市場における弱い立場が問題視される昨今だが、現状ではどれ程の若年労働者が企業内に就労しているのだろうか。また正社員・非正社員の割合はどれ位なのか。厚生労働省が2014年9月に発表した調査結果「平成25年若年者雇用実態調査結果の概況」から実情を確認していく。

今件調査では各種就業状態について次のように定義されている。

「若年労働者」…15-34歳の労働者

「常用労働者」…期間を定めずに雇われている、1か月を超える期間を定めて雇われている、日々・一か月以内の期間を定めかつ2013年8月と9月の双方で18日以上雇われているのいずれかに該当(実調査直前の月)

「正社員」…直接雇用関係のある労働者のうち、正社員・正職員など

「非正社員(元資料では正社員以外の労働者)」…直接雇用関係のある労働者のうち、正社員・正職員などとされている”以外”の者(例 パート・アルバイト、契約社員など)

まずは全体的な「雇用形態別・若年労働者」の割合。全体としての労働者の各種比率を算出したのが次のグラフ。青系統は正社員・赤系統は非正社員、ベタ塗りは若年以外(35歳以上)・ぼかし塗りは若年層を示している。例えばグラフの左端は「青のぼかし塗り」なので「若年」の「正社員」となる。

↑ 産業、雇用形態別若年労働者割合(2013年)
↑ 産業、雇用形態別若年労働者割合(2013年)

産業全体では正社員が約6割強・非正社員が3割強。一方、産業別に「赤青」別、「ベタ塗り・ぼかし塗り」別で見ると、産業別の特性が色々と見えてくる。例えば小売業やサービス業全般では35歳以上の非正社員が多い事、特に飲食関係では約2/3が非正社員で構成されている事など。

この図は資料性には優れているものの、それぞれの区分(若年層か否か、正社員か否か)との視点では少々把握しにくい。そこでそれぞれの区分で数字を合算し、グラフを再構築してみることにする。まずは若年層か否か。

↑ 産業、雇用形態別若年労働者割合(若年・若年以外別)(2013年)
↑ 産業、雇用形態別若年労働者割合(若年・若年以外別)(2013年)

全体では労働者のうち3割足らずが若年層、残り7割強がそれ以外(35歳以上)で占められている(若年層が居る・居ないの事務所数比率とは幾分差があることに注意)。情報通信業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業などで若年率が高めだが、一方で運輸・郵便業や鉱業・採石業・砂利採取業、建設業などのように、2割前後しかいない業態もある。業態の特性、人材の新陳代謝の違い、若年層からの人気のあるなしなど、複数の要因が関係してくるので、善し悪し語ることはできないが、若年層が1割から2割前半の業態は今後人材不足が懸念される。あるいは人員が余剰気味なので、新人をあまり雇わず・雇えず、結果として高齢化状態となっているのかもしれない。

続いて正社員か否かの仕切り分け。

↑ 産業、雇用形態別若年労働者割合(正社員・正社員以外別)
↑ 産業、雇用形態別若年労働者割合(正社員・正社員以外別)

一番非正社員率が高いのは宿泊業・飲食サービス業で76.4%。ファストフード店などを思い返せば、アルバイトが多数を占めている実態は容易に想像できる。また、パートの人が多いスーパーは「卸売業・小売業」に該当し、こちらも48.7%と高めの値。逆に専門職やインフラ系、第一次・第二次産業系では正社員が多い。

全体的な構造の上で注目すべきは、一部の第一次・第二次産業の形態で、「正社員・35歳以上」の比率が異様に高い点。業態そのものが人員削減のさ中にあるのなら仕方が無いが、中期的に見た場合、突然急激な人員不足が起きる可能性を秘めている。昨今の人材不足の一因は、まさにこの点にある。団塊世代がいちどきに定年退職を迎えたため、企業そのものを支える人材も多分に含む、この「正社員・35歳以上」の部分が企業から居なくなってしまっている。

各企業とも短期的な視点ではなく、中長期戦略意識の上で、若年層の雇用に臨むことが求められよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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