「チンする」「サボる」系コトバの利用状況
「チンする」使用経験者9割超え
電子レンジを使う行為を「チンする」と表現するように、状況を示す名詞に「る」「する」をつけて動詞的に扱う表現方法が増えている。その利用状況を文化庁の「国語に関する世論調査の結果」から確認していく。
「チンする」のように外来語や状況を示す単語の一部に「る」「する」をつけ、その状況を実行する動詞として使う言い回し。これに対し、正式なものではない、知らない人も多いとの理由から、公的な発言の上で、あるいはビジネス文章をはじめとした第三者への文面では使うべきでないとの認識も強い。要はスラング的な扱いを受けている。
それでは現実問題として、それらはどの程度認知されているのか。具体例を10個挙げ、それぞれ「聞いたことが無い」「聞いたことはあるが使うことは無い」「使うことがある」「分からない」のいずれかを選んでもらった結果が次のグラフ。
列挙された項目中では「チンする(電子レンジで加熱する)」(電子レンジの調理終了の合図音「チン」が由来)の利用率がもっとも高く、90.4%。使ったことは無いが聞いたことがある人は8.3%。聞いたことも無い人は1.2%に留まり、ほぼ誤差の範囲。「サボる(なまける)」(サボタージュが由来)も86.4%とほとんどの人が用いている。
「お茶する」は「聞いたことはあるが使ったことは無い」とする意見が1/4を超えている。もっとも認知度の点では「チンする」「サボる」とさほど変わりはない。
「愚痴る」はもう少し多くの人が使っている印象があるが、実際には5割足らず。「パニクる」とさほど変わらない。「お茶する」同様、多分に陳腐さのイメージがある「告る」、言い回し的にやや無理な印象がある「タクる」は利用率が低く、「タクる」「ディスる」に至っては聞いたことが無いとの意見が7割超との結果が出ている。
世代間格差が明確化している「パニクる」「ディスる」など
これらの言い回しは多分に若年層が使う傾向が多い。報告書では「パニクる」「タクる」「ディスる」「お茶する」の4項目につき、世代別の動向を掲載している。
「パニクる」「お茶する」は中堅層の利用がもっとも多く、シニア層になると急激に利用率が減少する。さらに「タクる」「ディスる」は特異な動きを示し、前者は20-30代、後者は10-20代のみで多く使われている。「ディスる」はとりわけインターネット上のスラングとして使われることから、特定の利用環境内で周知されている言い回しであることが推測される。
昨今では特定のウェブサービスを動詞的に扱う表現を、今件のように「●×する」「●×しておいて」などと表現する事例が増えている。サービスを指す名詞がそのまま動詞的に使われているわけだ。省略された文言を表することなく相手に意図が伝わること、そもそも言葉とは相手に意思疎通をするためのツールであることを考えれば問題は無い……のだが、抵抗感を覚える人も多く、誤解釈のリスクもある。
「チンする」「サボる」のように、より多くの人に認知され、利用されるようになれば、それらの言葉もやがて、ごく普通の一般的な言い回しとして用いられるようになるのだろう。
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