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「免許有り・自動車無し」から垣間見る自動車離れの理由

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 新車は今でも魅力的な存在に違いはないが……

金銭負担、バスや電車で間に合う、必要性を覚えない

都心部の若年層を中心に広まりつつある「自動車離れ」。ライフメディアのリサーチバンクが2014年9月に発表した自動車に関する調査(自動車免許証取得者限定)の結果から、なぜ「自動車離れ」が起きるのかを見通していく。

今調査対象母集団では自動車免許取得が前提となっているが、その上で自分が運転する自動車を所有していない人は28.0%いる。その人たちに、なぜ免許があるのに自動車を持っていないのかを聞いた結果が次のグラフ。最上位の理由は「維持費がかかる」で40.2%に達していた。

↑ 自分が運転する自動車を所有していない理由(複数回答)
↑ 自分が運転する自動車を所有していない理由(複数回答)

免許はあるので法的に運転は許されている。自動車の便宜性も理解できる。しかし所有することで発生する諸経費の負担が大きすぎ、とても使えないとするもの。実際に自動車を所有する人なら、各種経費の実情を実体験しているので多くの人が納得できるはず。第4位の「自動車の購入費がかかる」も、金銭負担が原因との視点では近い回答。

次いで多くの人が答えた回答は「公共交通機関で間に合う」。トップとほぼ同率の38.3%。バスや電車などの公共交通機関を乗り継ぎすれば普段の移動は間に合うので、自分の自動車を改めて持つ必要はないとする意見。もっとも今項目の回答者は、多分に都市居住者が多いことは容易に想像できる。地方では逆に「公共交通機関では用が足りないから自動車を所有する」との事例が多々あるからだ。また都市居住者では「駐車場確保が難しい」の意見も多い事が容易に想像できる。

「公共交通機関で間に合う」に近いのが「日常生活で使うことが無い」で36.7%。行動範囲が歩きや自転車、バイクの移動で済むため、あるいは子供などを引き連れて、多くの荷物を運びながらの移動の必要性が無いため、自動車を持つまでも無いとするもの。独り暮らしならばなおさら。

一方昨今の一部自動車離れの原因と言われている「車に興味が無い」「欲しい車が無い」は少数派に留まっている。

男女別に見ると「自動車の意義」が良くわかる

これを男女別に見たのが次のグラフ。

↑ 自分が運転する自動車を所有していない理由(複数回答)(男女別)
↑ 自分が運転する自動車を所有していない理由(複数回答)(男女別)

いくつかの項目では男女の違いが確認できる。例えばトップの「自動車の維持費がかかる」は男性の方が回答率が高い。女性の場合は子供の送り迎えや買物の荷物の移送など必要場面が多くなることから、ある程度の維持費はコストとして許容し得ると考えれば道理は通る。類似項目の「自動車の購入費」も同様だろう。

他方「自分で運転したくない」とする回答は大幅に女性が多い。免許はあるが、とっさの判断が苦手とする人も多く、また運転は疲れるからとの場合もある。運転を避けることに対する性別上の生物学的な差異は無いはずだが、心理的には女性の方が多いということなのかもしれない。あるいは「配偶者が運転してくれるから」との考えを持つ人が多いと考えれば道理は通る。

自動車の必要性は立ち位置や環境で大きく異なる。トップの「自動車の維持費がかかる」も、地方で自動車による移動が必要不可欠なら、たとえ夫婦世帯で配偶者が自動車の運転を出来たとしても、コストが高くついても自分も運転したい・せざるを得ない場合も多い。

一方で金銭面で自動車を所有したくても出来ないとの回答が多いのは、現在の自動車の実情を明確に示しているようで、興味深い話ではある。

※一部グラフに掲載ミスがありましたので修正しました。ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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