夫の家事育児への積極参加は子だくさんに貢献するのだろうか
昨今の社会問題の一つとしてしばしば話題に登る「少子化」。育児コストがかさむため世帯で子供を持つ数を自主的に規制したり、子供そのものを持つことを躊躇してしまう傾向を指す。また世帯収入を増やすために共働き世帯が増え、特に妻の育児負担が積み上がってしまうのも大きな要因。そこで視点を変えて、その家事・育児の負担を減らすべく、一番身近に居る夫がサポートをすれば良いとするのが、昨今の「夫も家事・育児を手伝おう」とするムーブメント。男性の育児休暇取得促進運動もその一環。
それでは実際に、夫が家事や育児を積極的にこなすことで、子供が増える可能性はあるのだろうか。国立社会保障・人口問題研究所が2014年8月に発表した「全国家庭動向調査」の結果をもとに検証していくことにする。
夫の家事・育児の参加率と、妻(今調査の回答者は結婚(経験がある)女性)における「今後子供を持つ予定があるか否か」の回答率の関係を示したのが次のグラフ。現状で子供が何人いるか次第で、さらに子供を欲したいか否かの動機率も変わるので、その区切りもしてある。「育児」で「子供ゼロ」の項目が無いのは、自世帯の子供が居なければ育児の参加は不可能だから。
大よそ「夫の家事や育児への参加度合いが大きいほど、さらに子供を設けようとする気持ちが大きくなる」との結果が出ている。特に家事では現時点で子供が居ない場合、「ほとんどしない」が5割足らずに留まっているのに対し、「よくする」では7割を超えている。
無論この結果のみで「夫が家事や育児をよく手掛けることで、妻もさらなる子供を設ける傾向が強くなる」との因果関係を証明することは出来ない。報告書でも単に「夫の家事や育児の遂行頻度が高い場合、今後子供を持つ予定がある妻の割合は高い傾向がみられる」と事実関係のみを記し、それ以上のことは解説していない。
子供を持つ、さらに増やしていく際の障壁としては育児や家事以外にも色々な要素があるが、その大きなものとして挙げられるのが金銭的サポート。お金周りが安定した世帯だからこそ、夫も妻の手助けを積極的に行えるだけのリソース的余裕があり、家事や育児の点で積極的に妻をサポートできるとする考え方もできる。
家事や育児の実行度は、子供を持つ・増やす動機の直接的原因では無く、その原因から派生した現象によるものであるとする考え方である。無論直接的原因にもなりうることには違いないが、その証明までには至らない。
しかし夫が家事や育児を手助けすることで妻の負担が減り、子を持つ、増やすことへの懸念要素が減るのも事実。例え今件が相関関係を示したに過ぎないとしても、十分因果関係の一つとなりうるものとして、当事者はもちろん、関係各方面も考慮の対象としてほしいものだ。
■関連記事: