電気は何から作られているのか、主要国別の違いをたどる(2014年)
電気は多様な姿に変換しやすいエネルギーとして重宝され、それゆえに国家の視点で「自国内で原材料を算出できるか、輸出でまかなえるものか」「工業構造や政治上との関連性、リスクの高低」などを考察し、影響を受けやすい状況下でも安定供給を継続すべく、最大限の努力が払われねばならない。まさに電気は人間における食事、さらには血流のようなもの。視点を変えれば、電気の電源(発電種類)別・発電電力量構成を確認することで、個々の国の経済・政治体系やエネルギー政策が見えてくる。今回は主要国における、電源別の発電電力量の構成を視覚化し、その実情を確認する。
参考にした資料は電技事業連合会が発行している「原子力・エネルギー図面集」の最新版2013年版。大本はIEA(国際エネルギー機関)が発行している「ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES」と「ENERGY BALANCES OF NON-OECD COUNTRIES」からのものである。電気の発電様式を主要な発電方法、具体的には「石炭」「石油」「天然ガス」「原子力」「水力」「その他」に区分し、それぞれの発電「量」(瞬間時の能力を示した「能力」ではない)を総計電力量比で示したもの。
特徴は次の通り。
・カナダ、ブラジルは水力発電の比率が高い。自然をフルに活用できる環境を有効に活かしている。特にブラジルは8割が水力で占められている。
・イタリアには原子力が無い(国策による結果)。
・イギリス、イタリア、ロシアなど欧州地域は天然ガスに寄るところが大きい。5割前後を占めている。
・中国やインドなどの新興国では石炭傾注度が高い。
・フランスでは約8割を原子力に頼っている
これらの特徴を示させる各国のエネルギー事情は大よそ次のようにまとめられる。
・イタリアは1987年に脱原発政策が国民投票で決定してから、原発ゼロを貫いる。現在では方針転換を二度繰り返し、結局原発ゼロは継続
・フランスは独立独歩的な政策をエネルギー面でも現実のものとするため、他国に関与されにくい原発を促進。一時的に大きな方針転換が行われる可能性が出てきたが、現在ではその動きも沈静化
・中国は電力の約8割を石炭から得ているが、石炭の安価さ・経済性の有利点から。ただし環境面での負担も大きい
昨今の欧州情勢(特にウクライナ情勢)で話題となった、西欧諸国とロシアとの間におけるパイプライン供給でのガスをめぐる駆け引きや、ブラジルのダム建設問題なども、このグラフを見ながら考察し直すと、理解を深めることが出来る。
なお石油のほとんどを輸入に頼っている日本だが、電力発電用としての比率は今回取り上げた国の中では最大値である。これは2011年3月に発生した震災とその後の政情的混乱により原発の稼動が止められ、不足した電力を火力発電所で補うための結果によるもの。2011年時点では震災発生前、及び「要請」で原発が止まる以前のものも加算されているため、この程度で済んでいる。来年分の2012年分ではさらにバランスの変移が見られることになる。
電気そのものは目に見えることは無く、コンセントにも「原材料は●×」と書かれてはいない。発電の原材料で電気の質に違いが生じるわけでもない。インフラがしっかりと安定的に整備されている中で日々を過ごせる、「当然のように繰り返される日常」、そのインフラを絶えず支えている関係者に感謝をしつつ、電気が作られた「素」に想いを馳せることをお薦めしたい。
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