日米中、それぞれの個人ベースでの好感度
米中どちらが好かれてる?
自国・他国を問わず国への好き嫌い度は個々においては国同士の外交に何ら関与しないが、集大成としての好き嫌いの傾向は国の施策をも動かすことになる。諸外国における個人ベースでの日米中への好感度の違いを、アメリカの大手調査機関Pew Researchが2014年7月に発表した報告書「Global Opposition to U.S. Surveillance and Drones, but Limited Harm to America’s Image」から確認していく。
次のグラフは各国毎に尋ねた、「個人的感情としての」アメリカと中国への感情。「とても好き」「好き」「嫌い」「大嫌い」の4段階による好意度、そして「分からない」の合わせて5選択肢の中から1つを選んでもらい、そのうち「とても好き」「好き」を合わせた、いわゆる「好意派」の値を示したもの。つまり米中への「好き度」と見ても良い。米中それぞれ別途回答しており、どちらか一方しか好意を示せないわけでは無い。
国民感情は多分に各種情報や経済的な結びつきに左右される。各値がそれぞれの国における米中のポジションをおおまかに表していると考えると、興味深い動きが出ている。差異はあれど西欧諸国はアメリカ寄り。ただしギリシャは中国への好意度が高い。これは先の財政破たんで、中国が同国へ積極的な経済投資をしているのが原因。またロシアや中東地域では中国の方が好感をもたれている。それだけにイスラエルのアメリカ好きが目立つ。
東南アジアではインドネシアやマレーシア、パキスタンのように、歴史的背景や華僑の活躍などに伴い中国への好感度が高い国もあるが、大よそアメリカ寄りの値を示している。特に日本やフィリピンの米中間の差は著しい。ベトナムも似たような状況だが、これは対中感情の反動によるところもある。
注目すべきは南米やアフリカ諸国の新興国。これらの国々への中国からの経済的アプローチが功を奏しているのか、対中感情はかなり良い。ほとんどアメリカと変わらず、国によってはアメリカを追い抜くところもある。対中・対米感情がほぼイーブンな国が南米にちらほら見受けられるのは、アメリカには危機感を覚える状況かもしれない。
日本を加えて見ると……
今調査項目では日本への意識も尋ねている。設問設定国が対米・対中と比べて少ないため、別途グラフを生成し直したのが次の図。
中国や韓国の対日感情の悪さ、日本の中国敬遠傾向などは他調査でも良く見聞きする話だが、それ以外の国に関する日米中への感情が推し量れて興味深い。例えばバングラデシュは日米中すべてに同程度の好印象を持っている、インドネシアやタイ、ベトナム、マレーシアは米中よりも日本への好印象度の方が強いなど、なるほど感を覚えさせる。
そして今回の調査対象国に限った話だが、中韓をのぞけば日本は多くの国から「そこそこ」な程度のポジティブな印象を持たれているのも注目に値する。あくまでも国民感情レベルでの話ではあるものの、何か米中が関与する事案が発生した際、多くの国で日本は間に立って仲裁的な立場を取り得ることを意味する。
見方を変えれば八方美人的との表現も出来るが、そして外交的なやりとりには並々ならぬ努力が必要となるが、日本はこの立ち位置を最大限に活かす手腕と発想が求められよう。
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