じわりと減り続ける若年層の持ち家率
価値観の変化や近所付き合いの煩雑さ、防犯、転勤などの問題、さらにはお財布事情から、必ずしも最優先されないことも多くなったが、今なお自前の「持ち家」を有することは夢の一つ。一方、気軽さなどを優先し、借家住まいを好む人も少なくない。今回は総務省統計局が2014年7月に発表した、住宅・土地統計調査の最新データなどから、世帯主の世代別区分を中心に、持ち家率の動向を確認していく。
まずは全体的な「持ち家」と「借家」の世帯数比率。住宅の「数」は増加傾向にあるものの、「持ち家」「借家」の比率は6対3.5程度で変わりなく推移している。
2013年分では持ち家率は約6割。それでは世帯主(単身世帯も含む)の世代別に見ると、割合にはどのような変化があるだろうか。当然のごとく若い世代世帯ほど、低い割合となっている。
20代はさすがに1割前後でしかない。30代に入ると急激に持ち家率が増加し、40代後半までに6割強に達する。30代以降住宅取得の機運が急激に高まり、取得していくようすが良く分かる。
一方、60代前半、つまり家計主が定年退職時期には5人に4人の世帯で、持ち家を保有している。住宅取得熱は50代でほぼ終結し(「可能性のある世帯」「願望を持つ世帯」における取得が終わり)、それ以降の伸び率は微々たるものとなる。見方を変えれば、定年退職後も約2割の世帯は賃貸住宅住まいになる。
「それにしても若年世帯の持ち家率が低い」との嘆きの声が聞こえてきそうな結果だが、経年データを見ると、その声がさらにボリュームアップされる感はある。
50代以下、特に40代より若い世代では最新調査に近づくほど、持ち家率が低下する。「家計主の年齢」だけを考えれば、「若年層の持ち家取得が年々難しくなっている」と結論付けられる。
しかし今調査では単身世帯も二人以上世帯も合わせて計算されている。そして家計の上でやりくりが難しい単身世帯率が(特に若年層で)増加している以上、住宅取得率が減少しても仕方が無いとの一面もある。
とはいえ、単身世帯の増加だけでは、若年層の急激な持ち家率の低下は、説明が付きにくいのも事実。財力の格差、将来を見越した上での住宅取得の回避など、さまざまな理由が若年層をして持ち家率を下げていると考えた方が、道理は通りそうだ。
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