全住宅で3.0%…意外と少ない太陽光発電の導入住宅
先の震災以降注目を集めるようになった住宅設備の一つが、太陽光発電機器。発電効率は低く、住宅内で使うすべての電力を恒久的にまかなうには至らず、初期導入費用は高く、耐久年数を合わせてそろばんをはじくとコストパフォーマンス的な問題が生じる、さらには生産行程まで考慮した場合の環境負荷など、問題は少なくないが、利用時における電力の節約が出来るのが好感され、新築住宅を中心に導入が進めれられている。
それでは実際に、太陽光発電による発電機器が設置された居住用住宅はどれ位存在しているのだろうか。総務省統計局が2014年7月に発表した住宅・土地統計調査の結果から確認していくことにする。
太陽光発電による発電機器が設置された居住用住宅は、2013年時点では156万8000戸。居住者が常時いる住宅に占める比率では3.0%となる。公開されている計測データの上でもっとも古い2003年当時の27万6000戸から比べれば5倍強の伸びだが、全体比では33戸に1戸の割合でしかない。
以前は大いに普及していた「太陽熱を利用した温水機器」と比べ、以前は費用対効果・技術上の面から今一つ伸びがみられなかった太陽光発電機器。しかし昨今の技術革新により、電力変換効率と低価格化が進み、補助金制度も整備されることで、設置の意義・有効性が高まりつつある。特に震災以降は電力需給問題もあり、積極的な導入が推し進められ、住宅供給側でもセールスポイントの一つとして重要視している。
震災による影響は極めて大きく、同じ5年間の伸び方を見ても、2003年から2008年までと、2008年から2013年までにおける違いが、一目で分かるグラフとなっている。無論この類の技術・普及は通常の状態でも累乗的・加速度的に推移するものだが、震災が大きな後押しとなったことは、誰もが否定できまい。
しかし一方で、総数で160万戸足らず、全住宅比率で3%に留まっている現状を見るに、さまざまな問題がハードルとなっている実態を改めて認識させる。一部では「一度取り付ければフリーメンテナンスで永久に電力が低コストで沸いてくる」と誤解されている太陽光発電だが、そのような領域に達するのは、まだずっと先の話である。そして「フリーメンテナンス」なる設備が存在するのはゲームの中だけの話でしかない。
また、「借家」の普及率がひときわ低いのにも目が留まる。貸し手・家主の立場からすれば「余計な費用がかかる設備をつけると、空き家状態におけるリスクが高まる」とのデメリットがあるのは理解できる。しかし居住者の視点で考えると、エネルギーの節約≒光熱費の節約は、それだけ賃貸住宅としての魅力を増すものとなる。
現状においてすでに賃貸住宅の客取り合戦が激化している状況を見る限り、賃貸住宅でも省エネ部門の充実が、十分以上に検討する必要が出てくるに違いない。
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