30年余りのサラリーマンのおこづかい動向を探る(2014年)
回復基調だがまだ30年前の基準には届かないおこづかい
景気にも大きな影響を受けるサラリーマンのおこづかい。多くの人にとって最も身近なこの金銭上の動向について、定点観測的に調査をしている新生銀行の「サラリーマンのお小遣い調査」による公開データを基に確認をしていく。
次に示すのは公開されている限りのサラリーマン(正規社員としての就業男性)における、月額のおこづかい推移。さらには公開値としてはもっとも古い1979年の額を基準値の1.00とし、その額と比較した指標としての推移。グラフの形状は同じになるが、変移の観点では後者の方が分かりやすい。
最高値は1990年の7万7725円、これは1979年比で6割強のプラスとなる。一方最低額は1982年の3万4100円。グラフの形状も合わせ、おこづかいの動向は「2001年までは収入と相関」「前年の日経平均株価に相関」「2000年以降は消費者物価指数に相関」との分析が成されている。もちろんすべてにおいて因果関係は無く、相関関係までしか実証できない。また今世紀に入ってから収入との相関関係が見られなくなったのは、おこづかいが収入の減収幅よりも大きな下げ幅を示しているからに他ならない。これ自体は悲しい話ではあるが。
消費者物価の変動を考慮してみると……
上記の動向は単純な額面での変移。そこで実質購買力の変化を見るため、消費者物価指数を考慮に入れて試算をし直してみる。1979年の数値を基準に、各年のおこづかい額を実質購買力で修正した結果が次のグラフ。例えば同じ金額1万円がおこづかい額だったとしても、1979年から2014年の間に物価が2倍に跳ね上がっていれば、実質的な2014年のおこづかいの購買力は(1979年ベースで)5000円分でしかなくなってしまうというものである。
額面ベースでは1979年の6割強増しだった、最高額を示した1990年も、実は消費者物価指数の上昇に伴うものであり、実質的には2割強の増加でしかなかったことが分かる。また今世紀に入ってからはしばしば、金額ベースでは最低額だった1982年をさらに下回る実質購買力でしかない値をつけているのも確認できる。「デフレが継続しているのでおこづかいが少なくなっても何とかなっている」のは事実だが、元々の実質購買力が低いため、その下げ幅が小さい程度の慰めにしかならない。
さらに昨今ではおこづかいの内訳として飲み代や昼食代以外に、携帯電話代の存在が無視できない、圧迫感を増すものとなりつつある。
自らのおこづかいに関してサラリーマンは、より一層の工夫が求められそうだ。
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