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電子書籍×タブレット型端末のカップリング最強説

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 紙の書籍同様にタブレット端末での読書。ごく日常の風景となりつつある。

タブレット型端末と電子書籍購入の相性の良さはどれほどなのか

アマゾンの電子書籍リーダーも兼ねた「キンドル」がようやく本格的に展開されたことで、日本でもタブレット型端末の普及浸透に加速がついた。そのタブレット型端末と電子書籍の購入者の相性の良さを、総務省の「通信利用動向調査」から確認していく。

「通信利用動向調査」では電子書籍について、対価を支払って購入した人の割合・人数を確認できる。最近とみに漫画方面で増えつつある、無料で閲覧できるタイプの電子書籍利用者は把握できないが、購入タイプの電子書籍利用者動向はこの値から精査が可能。

次に示すのは、純粋なインターネット利用者に対する電子書籍の購入者の割合を算出したもの。比重調整や無回答者による調整はしていないので、現実にはもう少し比率が上になる可能性はある。例えばタブレット型端末の場合、9.3%と出ているが、これはタブレット型端末を使ってインターネットを利用している人の9%強は、過去1年間でその端末を使って電子書籍を「購入」した経験があることになる。

↑ 電子書籍の購入者比率(2013年末、インターネット利用者限定、比重調整・無回答調整なし)
↑ 電子書籍の購入者比率(2013年末、インターネット利用者限定、比重調整・無回答調整なし)

電子書籍とタブレット型端末の相性は極めて良い。数あるデジタル系端末の中でも、雑誌や書籍と形状、機動性の面でもっとも近く、雑誌や新聞を読む感覚で電子書籍を読めるからだろう。Pew Research社によるアメリカの電子書籍やタブレット型端末の調査でそれを裏付ける複数の具体的事例も確認されている。今件調査結果でも、他の機種から群を抜く高い値を示しており、タブレット型端末における電子書籍の有効性、購入性向の高さが認識できる。

意外にもパソコンは低め。スマートフォンにすら及ばない。電子書籍では機動力を求められていることが想像できる。

比率では無く実数では!?

タブレット型端末が電子書籍と相性が良い、端末の機動力が高いほど、電子書籍が購入されやすいなどの特性は、上記結果から大体理解できる。一方で「比率では無く絶対数として、購入者数はどれほどだろうか」との疑問もわいてくる。パソコンやスマートフォンと比べ、タブレット型端末は今なお少数派で、利用台数も少ないはず。

そこで今調査における全電子書籍購入者の数を1.0とし、それぞれの属性の実購入者数を比率で概算算出し、比較してみることにした。例えば全体で電子書籍を購入した人が100人だとしたら、パソコンで買った経験を持つ人は94人になる。重複カウントがされていることに注意。つまりパソコンで購入した人はパソコンのみでの購入者ではなく、例えばパソコンとタブレット型端末の双方で購入していることもありうる。

↑ 電子書籍の購入者比率(2013年末、インターネット利用者限定、比重調整・無回答調整なし、全体購入者数を1.00とした場合の相対比率)
↑ 電子書籍の購入者比率(2013年末、インターネット利用者限定、比重調整・無回答調整なし、全体購入者数を1.00とした場合の相対比率)

絶対数ではパソコン経由による購入者が一番多く、次いでスマートフォン。タブレット型端末による購入者はそれらに続くことになる。パソコンによるインターネット利用者が多いため、利用者に対する比率は低くても、購入絶対数は多くなるわけだ。ただしインターネット利用者そのものは、タブレット型端末ではパソコンの1/5程度でしかないにも関わらず、電子書籍購入者「数」は半分程度にまで肉薄しており、あらためて、電子書籍とタブレット型端末の相性の良さに驚かされる。

今件「通信利用動向調査」では無料閲覧による電子書籍の利用状況は一切反映されていない。よって電子書籍の利用者(率)は実情ではさらに大きな値となることは容易に想像できる。一方で今件は有料電子書籍に限定されてはいるが、普及状態を推し量る有益な指針であることにも違いない。

今後タブレット型端末の普及がさらに広まるに連れて、電子書籍の利用性向は確実に上昇していく。利用しやすさを考慮すれば、スマートフォンよりも期待が持てる端末として、電子書籍の市場の拡大動向と合わせ、大いに注目・期待したいところだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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