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「支えになる」は2割足らず…他国と大きく異なる日本の若者の宗教観

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 多様な宗教が入り乱れる日本。カオスな安定感と呼ぶべきなのか……

無宗教とも多宗教とも呼ばれる日本の宗教観は、他国とは大きく異なるものとしてしばしば話題に登る。若者の間でもその特異性は変わらず、日本の宗教観への依存度は他国と比べて特異な傾向を見せている。信心に欠けるところがあるのではなく、文化的に多様性を持つため、一つのものに固執しない結果であるとの分析も行われているほど。カオス的な調和をむしろ楽しむとも表現できようか。例えばクリスマスとお盆とお正月を多数の人が満喫し、さらには結婚式の様式の多彩さからは、いわゆる「つまみ食い」感すら覚えることができる。

それでは若年層において宗教たるものは、どの程度暮らしの中で心や行動の支えとして位置づけられているのか。2014年6月に内閣府が発表した、日本や諸外国の若年層を対象にした意識調査「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」から、その実情を確認する。

次に示すのは宗教観の問題として、回答者自身において「宗教」が日々の暮らしの中で、心の支えや態度・行動のよりどころになると思うか否かに関する質問の結果。4段階「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」、さらには「分からない」の計5選択肢を用意し、いずれか自分に一番合うものを選んでもらったものである。

↑ 自分自身にとって宗教は、日々の暮らしの中で心の支えや態度・行動のよりどころになると思うか
↑ 自分自身にとって宗教は、日々の暮らしの中で心の支えや態度・行動のよりどころになると思うか

調査対象となった7か国の中では、一番宗教観が浸透している、日常生活に深い影響を与えているのはアメリカ。肯定派は55.3%に達している。次いでイギリス、ドイツと続き、韓国、スウェーデンと並ぶ。強い肯定はイギリスの次に韓国が続くが大勢に変化は無い。

やや意外なのはフランス。7か国中では日本に続き2番目に肯定派が少なく、22.8%に留まっている。しかも「分からない」とする態度留保派は極めて少なく5.9%しかなく、「そう思わない」との強い否定は日本すら超えて最大値の58.1%に達している。宗教観においてはとりわけ強い否定感を覚えている次第である。将来への展望や、不安・不信感などの項目でもフランスは他の西洋諸国とはやや異なる傾向を示し、むしろ日本や韓国に近い値の動きが確認できるが、根底にはこのような宗教観が一因としてあるのかもしれない。

日本の実情を見てみると、日本の宗教観は(今件は若年層を対象としたものだが)非常に薄い。自分の日常生活におけるよりどころとして何らかの宗教を抱く人は18.4%に過ぎず、7か国では最低値。さらに強い肯定派は3.5%のみ。強い否定派は46.6%とフランスにこそ負けるものの、第2位。

そしてある意味もっとも日本らしいのが「分からない」の回答項目。他国では韓国が10.7%とやや多めだが、それすら大いに抜き離し、17.5%にまで達している。若年層に限った話ではないが、日本人の宗教観「あまり深い関係は無い」「そもそもよく知らないし、分からない」という実態が、実によく出ている結果ではある。

今件が示す実情について、深い宗教観を持つことが良い、あるいは逆に悪い、という意味はまったく無い。単に若年層の社会生活、日常の意識形態の中で、宗教がどのような関わり合いを持つか否か、その実態が表れているに過ぎない。そしてその観点では(若年層限定ではあるが)日本は他の国々とは、大きな違いを有していることは間違いあるまい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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