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西日本の鉄道各社の携帯マナー「優先座席付近では”混雑時には”携帯電話の電源をお切りください」に変更へ

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 優先座席の窓に貼られているポスター。今は無条件で電源オフとのお願いだが……

JR西日本及び関西の鉄道各社(関西鉄道協会加盟の鉄道事業者)は2014年6月25日付で、これまでの車両内携帯電話(従来型携帯電話、スマートフォン双方。以下同)の利用マナーとして「優先席座席付近」(一部では「携帯電話電源オフ車両」内)において、携帯電話の電源を切るように案内していた件について、同年7月1日以降は「混雑時に」を追加し、「優先座席付近では、混雑時には携帯電話の電源をお切りください」との案内に変更(実質的な条件緩和)することを発表した。車両内の携帯電話による通話はこれまで通り、混雑度合いに関わらずひかえるよう呼びかけを行う(「該当プレスリリース:優先座席付近での携帯電話使用マナーを「混雑時には電源をお切りください」に変更します」)。

従来西日本の鉄道事業者各社においては、車両内の携帯電話の利用時におけるマナーとして、優先席付近では終日、電源を切るように案内していた。また一部事業会社では「携帯電話の電源オフ車両」を設け、その車両内ではどのような場所でも電源を切るよう勧めていた。

一方総務省では2013年1月から「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」を改正し、これまで携帯電話端末と埋め込み式医療機器の装着部分との距離について22センチ程度以上としていたものについて、(第二世帯携帯電話サービスの終了を受け)15センチ程度以上に短縮するなどの見直しが実施された。

「平成24年度電波の医療機器等への影響に関する調査結果及び当該結果に基づく「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」の改訂」による、具体的文言部分は次の通り。

ア 植込み型医療機器の装着者は、携帯電話端末の使用及び携行に当たっては、植込み型医療機器の電磁耐性(EMC)に関する国際規格(ISO14117等)を踏まえ、携帯電話端末を植込み型医療機器の装着部位から15cm程度以上離すこと。また、混雑した場所では、付近で携帯電話端末が使用されている可能性があるため、注意を払うこと。

イ 携帯電話端末の所持者は、植込み型医療機器の装着者と近接した状態となる可能性がある場所では、携帯電話端末と植込み型医療機器の装着部位との距離が15cm程度以下になることがないよう注意を払うこと。なお、身動きが自由に取れない状況下等、15cm程度の離隔距離が確保できないおそれがある場合には、事前に携帯電話端末が電波を発射しない状態に切り替えるなどの対処をすることが望ましい。

なおこの指針に関しては後日(2014年5月)に「携帯電話端末」には「スマートフォン等の無線LANを内蔵した携帯電話端末も含む」と改訂が行われている。これらの指針変更は随時一般社団法人日本不整脈デバイス工業会をはじめ、各種関連のある協会・団体などでも公知がなされ、判断指針の変更が伝えられている。

また携帯電話の利用スタイルも、携帯電話のタイプが従来型からスマートフォンへ、コミュニケーションツールとしての利用も通話からメール・ウェブ利用(特にソーシャルメディア)にシフトしつつある。これらの状況変化を受け、今回の変更が成されることになった。

7月1日以降における車両内での携帯電話関連の案内では、「優先座席付近では、混雑時には携帯電話の電源をお切りください」となり、これまでの案内文言に「混雑時には」が加わることになる。これは公知ポスターにもある通り、利用客同士の身体が触れ合う程度の混雑となると、指針の上での「15センチ程度以下」に抵触してしまう可能性が生じるとの理由によるもの。

↑ 今回の見直しに伴い展開されるポスターのデザイン
↑ 今回の見直しに伴い展開されるポスターのデザイン

他方、携帯電話による「通話」は、総務省の電波関連による指針に関わらず、周囲の利用客の迷惑になることから、これまで通り混雑度を問わず、遠慮願うように呼びかけを行うこととなる。

利用現場となる電車内の実情、そして携帯電話やコミュニケーション絡みの数々の調査の結果にある通り、携帯電話の利用が「通話」から「メール」や「ウェブサービス(特にソーシャルメディア)」にシフトし、利用機種も「従来型携帯電話」から「スマートフォン」が多勢を占めるようになりつつある。以下は「若者のコミュニケーションはメールからソーシャルメディアへ…意志疎通メディア利用状況を探る(2014年)(総務省)」で詳細を解説しているグラフだが、コミュニケーションツールとしてのメディア利用時間が、多分に「通話」から「インターネット系サービス」にシフトし、主力となっている実情がうかがい知れる。昨今では電車内の携帯電話の利用はもっぱら端末を指で操作する場面ばかりで、音声通話をしている人は滅多に見られない実状にあるのは、多くの人が認知しているはず。

↑ コミュニケーション系メディアの平均利用時間(平日、2013年、分)
↑ コミュニケーション系メディアの平均利用時間(平日、2013年、分)
↑ コミュニケーション系メディアの平均利用時間(平日、2012年から2013年への変移、分)
↑ コミュニケーション系メディアの平均利用時間(平日、2012年から2013年への変移、分)

今回の西日本における鉄道各社の方針変更は、多分に総務省提示の指針変更が起因となっている。一方で携帯電話の利用環境の変化が、鉄道車両内での公知マナーの変更ももたらした実状には、時代の流れを再確認させられる感はある。

今件は西日本にある鉄道事業会社各社によるもの。ちなみにJR東日本など関東17の鉄道事業会社では、現時点で「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください。それ以外では、マナーモードに設定の上、通話はご遠慮ください」との文言が用いられている。総務省の指針改定や携帯電話の内部事情の変化は日本全体に渡るものであることから、同じような動きは東日本側でもなされることになるかもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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