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寝る間も惜しんでスマホする高校生の日常生活

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 眠くてもついつい使い続けたくなるもの。必然的に睡眠時間は……

音声通話はもちろんだがオンラインゲームにソーシャルメディア、ニュースなどのウェブサイトにブログ閲覧、さらには音楽や動画の視聴まで可能な、アプリ次第であらゆる娯楽が楽しめる、魔法のツールがスマートフォン。さらに手持ち可能なことから、保護者の監視も受けずに利用できるインターネットアクセス機器との点でも、高校生など子供にとっては魅力的なアイテムに他ならない。情報通信政策研究所が2014年5月に発表した実態調査「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査」によれば、すでに高校生全体の84.5%がスマートフォンを利用しているとの結果も出ている。

↑ スマートフォン利用率(高校生、2014年1月)
↑ スマートフォン利用率(高校生、2014年1月)

一方、高校生に限らないが、1日は24時間しかない。たとえ「ながら利用」をしていたとしても、他の日常生活における時間を削らないと「スマホの時間」は増やせない。それではどのような時間と引き換えに、高校生はスマートフォンの時間を楽しんでいるのだろうか。スマートフォン利用者に、使い始めてからどのような時間が減ったかを聞いた結果が次のグラフ。

↑ スマートフォン利用開始により減った時間(高校生、スマートフォン利用者限定、2014年1月、複数回答)
↑ スマートフォン利用開始により減った時間(高校生、スマートフォン利用者限定、2014年1月、複数回答)

一番多くの高校生が「スマホ使い始めてから減った」と実感しているのは睡眠時間。スマホ利用者の4割強の人が肯定している。利用は夕食や翌日の準備を終え、寝る間でのプライベートタイムによるところが多いので、ついつい長丁場となり就寝時間が遅くなる。読み始めた小説が面白く、気が付いたら日付が変わっていた、さらには朝を迎えていた、あの感覚と同じ。

次いで多いのは「勉強の時間」で34.1%。今調査別項目を確認すると、スマートフォンの利用がきっかけで(勉強に身が入らず、時間がとられてしまい)試験に失敗した(悪い点数を取った)ことがあるとの経験を持つ人も5%を超えており、悪影響が実際に出ている。

以下「テレビ視聴」「読書」「マンガ・雑誌」「趣味」と続くが、これらは個人のプライベートな時間で費やす、余興的なもの。つまり個人の休息時間の多くをスマートフォンに集中投入している人が多数いることになる。心身共に休むための時間に、熱中して逆に疲労しかねないスマートフォンの利用を重ねることで、身体も心も休む暇が無くなるのではないか。そう不安視する保護者も出てくるかもしれない。

なお今件について、インターネットへの依存度合に関する自己診断の結果内容(自己診断そのものは「スマートフォン保有者の方が「ネット依存傾向」は強い法則」参考の事。あくまでも本人の判断によるもので、医学的見地・裏付けのなされたものではない)で区分し、再集計したのが次のグラフ。「高」、つまり「自分はインターネットへの依存度合いが高い」と自己判断している人ほど、今件でも高い値を示している。

↑ スマートフォン利用開始により減った時間(高校生、スマートフォン利用者限定、2014年1月、複数回答)(ネット依存傾向別)
↑ スマートフォン利用開始により減った時間(高校生、スマートフォン利用者限定、2014年1月、複数回答)(ネット依存傾向別)

ネット依存傾向が強い人ほど、他の色々な日常生活上の時間を削り、スマートフォンの操作を続けることを望み、それを実行に移していることになる。「当てはまるもの無し」は「高」では6.2%しかおらず、9割以上は「何らかの時間をスマホ操作に振り分けた」と認識している。

とりわけ「高」の区分では、「家事」「外出」「家族との対話」「友達との交流」「食事の時間」「部活」の項目で、「中」「低」と比較して高い値が示されている。これらは対人コミュニケーションと深い関係のある行動に他ならず、時間が削られることで、「引きこもり」的な状態につながる、加速させることが懸念される。情報を収集し、他人とのコミュニケーションを活性化させるツールのスマートフォンが、その魅力ゆえに、逆に対人コミュニケーションの時間を減らしているのは、やや皮肉めいた現実ではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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