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消費税改定が買い替えを促進? エアコンの買い替え年数動向

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 環境次第で命綱にすらなりうるエアコン。その買い替え年数が前倒しされて……

エアコンの買い替え年数は約10年。だが…

夏は冷房、冬は暖房機器として働き、室内を温度・湿度の点から快適化するエアー・コンディショナーことエアコン。ヒートアイランド現象の発生、居住環境の密閉化、さらに電力消費、高齢者の健康維持問題など、多数の観点から注目を集めている。このエアコンにおける買い替え年数の動向、さらには先日行われた消費税率改定による影響のあるなしを、内閣府が2014年4月に発表した消費動向調査の値を基に確認していく。

まずは一般世帯(二人以上世帯)における買い替え年数の推移。調査が開始された1992年以降の動向は次の通りとなる。

↑ エアコン買い替え年数推移(年、一般世帯)(-2014年)
↑ エアコン買い替え年数推移(年、一般世帯)(-2014年)

やや凸凹な部分もあるが、全般的には買い替え年数はほ10~11年で安定している(23年分平均は10.6年)。「一般家電、白物家電の買い替えサイクルは10年位」との一般論があるが、エアコンもこの法則にほぼ当てはまることになる。

また2014年分は前年から1.0年もの年数短縮が見られる。消費税率引き上げに伴い、改定前の前倒し的な買い替えが(例えば「あと1、2年は持ちそうだがいつ故障するか分からないし、良い機会だから」という状態での買い替え)多分に行われたようだ(これは後述の「買い替え理由」の動向で確定できる)。

これを「単身世帯」(一人身世帯)の動向と重ねてグラフ化したのが次の図。

↑ エアコン買い替え年数推移(年、単身/一般世帯)(-2014年)
↑ エアコン買い替え年数推移(年、単身/一般世帯)(-2014年)

デジタル系アイテム同様、お金周りで機動力の高い、同居人への気兼ねが要らない「単身世帯」の方が、買い替え期間が短かい動きにある。その差は半年~1年程度。2014年では2013年に起きたイレギュラー的動き(単身世帯より一般世帯の方が短くなる)も元に戻っている。また、特に「単身世帯」で駆け込み需要が大きかったことがうかがえる。

買い替え理由に大きく表れる「駆け込み需要」

次に示すのはエアコンの「買い替え理由」。世帯様式で事情が異なることが容易に想像できるため、それぞれについて確認したのが次のグラフ。

↑ エアコン買い替え理由(一般世帯)(-2014年)
↑ エアコン買い替え理由(一般世帯)(-2014年)
↑ エアコン買い替え理由(単身世帯)(-2014年)
↑ エアコン買い替え理由(単身世帯)(-2014年)

小回りが利きやすい「単身世帯」の方が「住所変更」による買い替えが多少ながらも多いように見える。一方「故障」要因では「一般世帯」の方が多い。これは一般世帯の方が使い方が荒いからではなく、故障でお手上げになるまで使い続けていると考えた方が無難。

エアコンは以前実施されていた「(家電)エコポイント制度」の対象商品だった。2009年5月15日から2011年3月末購入分までは何らかの反応、具体的には「その他」要因の増加がエコポイントによるプラス分として見られるはず。該当する2011年(3月)までの動きを見ると、「単身世帯」「一般世帯」共に2011年にやや大きな動きがあり、それなりの影響、具体的には買い替え促進、を及ぼした可能性は高い。特に「単身世帯」ではグラフ対象期間の7年間で最大の比率を示しており、大きな買い替えの後押しとなったようだ。

また「単身世帯」では「上位品目」要因で2012年に大きな伸びが生じている。2011年3月に発生した東日本大地震・震災に伴う電力需給の問題を受け、節電効果が高く性能のよい、新型機種への買い替えが反映されたのだろう。

2014年は先のエコポイント同様、「その他」の項目が「単身世帯」「一般世帯」共に大きく増加している。これは今件記事でスポットライトをあてている、消費税率改定に伴う駆け込み需要を理由とした回答が大きな影響を与えたと考えられる。見方を変えれば、その影響が無くなる来年は、再び通常の値に戻ることは容易に想像できる。

エアコンは稼働時期が原則夏と冬に限定されるが、該当時期では1日あたりの稼働時間が長く、さらに電力消費量も他の家電と比べて大きい。「最新機種に買い替え、同じ利用時間でも少ない消費電力で済むように」との「節電のための買い替え」の風潮はあったものの、震災後の電力需給の影響を受け、古いタイプのエアコンを買い替えて「日常生活における放置型の節電」への機運が高まっている。白熱電球をLEDに買い替えるのと考え方は同じである。

2014年ではさらに皮肉な形ではあるが、消費税率の改定がこの買い替えを後押しする形となった。来年以降は突発的な事態が生じない限り、通常の買い替え動向に戻ることだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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