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震災以降、確実に圧迫感を増す電気代とガス代

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 各世帯の電気メーター。電気代が上がるとつい注目してしまう

電気使用量とかい離する電気代動向

2011年3月に発生した東日本大地震・震災は、電力供給量の絶対的な不足を招き、その後「当時の」政権による失策などを要因とした発電力の漸減で、慢性的な電力不足が「今なお」続いている。先日3月31日までにおいても北海道を除き数字目標付き・法的拘束力のある節電要請こそ無かったものの、「北海道のみ6%・他は数字目標無しの節電要請…2013年度冬季の節電要請内容発表」で解説した通り、冬期の節電要請が実施されていた。また電力発電・供給様式のバランスが以前と比べて大きく偏った状態が続いているのが主要因となり、電気料金は大きな上昇を示している。

今件状況下における、二人以上世帯の電気使用量と電気代の前年同月比推移をグラフ化したのが次の図。これは総務省統計局の家計調査報告(家計支出編)の公開データを基に作成したものだが、2011年4月以降しばらくはマイナス値が続いている。震災後の電力供給量の大幅な制限に伴い、電力使用量が大きく削られ、結果として電気代も節約された様子が確認できる。なお今件グラフは調査世帯が電気料金を実際に支払った日(の月)の「電気使用量」「電気代」の変移であり、実際の電力使用とは一か月ずれが生じていることに留意が必要。

↑ 電気代の月別支出金額及び購入数量の対前年同月増減率の推移(前年同月比、二人以上世帯)(2011年-2013年)
↑ 電気代の月別支出金額及び購入数量の対前年同月増減率の推移(前年同月比、二人以上世帯)(2011年-2013年)

2011年夏の減少幅の大きさは、震災による電力需給問題で一般世帯でも半ば節電を強要されたことに加え、2010年夏が大変な暑さによる消費電力の多さに伴い、その反動が表れたもの。2011年夏に発令された電力使用制限令では、一年前の最大電力より15%減少が目標だった。今グラフは「電力量・電気代」で、しかも「一般世帯」であり電力使用制限令の対象となった大口需要家では無いが、電気使用量の点で「前年同月比15%減」は果たせていることが確認できる。

2012年になると、厳寒、猛暑・残暑が相次ぎ、さらには2011年の節電の反動もあり、前年同月比でプラスが散在することになる。とはいえ2012年夏の電力使用量の前年比はプラスマイナス2%内外に収めており、一般世帯レベルでも節電意識・行動が浸透しているのが分かる。他方2012年になると電気「使用量」のプラス分に比べ、「電気代」のプラス分が大きくなっている感はある。これは電気料金の値上げによるところが大きい。

2013年に入ると(オレンジで囲んだ部分)「電気使用量のマイナス域増加」「電気代のプラス域増加」「電気使用量と電気代とのかい離」が傾向として確認できる。「電気使用量のマイナス域増加」は節電意識の高まりと実行率の増加によるもの。「電気代のプラス域増加」は電気料金の値上げによるもの。そして「電気使用量と電気代とのかい離」は電気代の単価が押し上げられることで、電気使用量が減少しているにも関わらず、家計単位で支払う電気代金が増え続けていることを意味する。

一方ガス代も、電気代と似たような原因により上昇を続けている。しかし電気代と比べればその上昇幅は緩やかで、目立った動きには見えない。

↑ 電気代・ガス代の前年同月比推移(二人以上世帯)
↑ 電気代・ガス代の前年同月比推移(二人以上世帯)

ガス代についてはプラスマイナスゼロを中心に上下に行き来しているだけのようにすら見える。

家計負担をより現実味のある数字に

ガス代はともあれ電気代は2012年以降、少なくとも2013年の夏以降は家計毎の出費が増えていることが分かる。その「負担増」をよりリアルに実感できるのが次の算出値によるグラフ。これは各世帯の消費支出(世帯を維持していくのに必要な支出。「食料費」「住居費」「光熱費」など)に占める電気代やガス代の割合の推移を示したもの。

電気もガスも毎年2月支払、つまり1月利用時分がもっとも高くつく、つまり大量に使うことになる。多分に暖房によるところが大きい。電気代の小さな山は夏の使用増大に伴うものだが、それをはるかに上回る量が冬、1月に使われ、電気代が発生している。

↑ 電気代・ガス代の対消費支出比率推移(二人以上世帯)
↑ 電気代・ガス代の対消費支出比率推移(二人以上世帯)

電気代で毎年ピークの支払月となる2月の比率を数字でグラフ上に明記したが、震災前は4.4%。震災以降は4.7%、4.8%、4.9%、そして5.4%と、確実に増加をしている。特に2014年2月は直近の大幅値上げのあおりを受け、前年同月と比べて0.5%ポイントも増えている。それだけ電気代の家計への負担が増加している。震災前と比べてちょうど1.0%ポイント。この差は大きい。

他方ガスは変化がないように見えるが、実数値を追いかけると震災前は2.8%、震災後は2.9%・2.9%・3.0%となる。電気代と比べれば緩やかだが、こちらも確実に増加を続けている。これらの比率上昇は、電気代やガス代の値上げが、家計への圧迫感が積み増しされていることを裏付けるものに他ならない。

電気やガスは生活のためには必要不可欠。震災を経て数年経過し、電気やガスへの節制もほぼ限界に達している。今後、発電関連の状況に改善が見られなければ、圧迫感はさらに強まることは間違いあるまい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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