年収別に見る消費税率引き上げ後の消費性向
税率アップ後の引き締め感は女性の方が強い
この4月に実施される消費税率の5%から8%への引き上げに伴い、当然商品やサービスの販売価格(本体価格にあらず)も引き上げられることになる。これまで本体価格100円の缶コーヒーが105円で買えていたところ、もう3円足した108円で無いと手に入れられなくなる。商品購入の仕方に変わりが無ければ、出費もそれだけかさむことに。
それでは税率引き上げ後、家計における消費行動ではどのような心配りをするだろうか。これまで通り購入を続け、結果として税率アップ分の支出が増えるか、それとも支出が増えないように消費を引き締めるだろうか。上記の缶コーヒーの例なら「これまで通り購入して支出を105円から108円に増やす」「本体価格97円のものに質を下げるなり、購入頻度を落として支出を実質105円のままで維持する」「分からない」の3択で選んでもらった結果が次のグラフ(インターワイヤードのディムスドライブ事業局が2013年12月12日から27日にかけて実施した調査結果)。
全体では22.4%が消費性向はそのまま、税率分だけ支出がアップ。56.2%は消費を引き締め、支出を維持するとの結果になった。過半数は消費税の引き上げで購入品目が減る、質を落とすなどの節約行為に走るようだ。税率の上昇で消費性向の減退が起き、税率が上がっても税収そのものは変わらない、下手をするとかえって減少する可能性が多分にあることを暗示している。
性別・世代別に見ると、男性よりも女性の方が家計引締め派が多い。「今まで通り」は男性と女性間では5%ポイントから10%ポイントほどもの差。女性の方が支出増加には敏感で否定的ということになる。家計を握っていることが多い女性ならではの、素直な反応だろう。また世代別では若年層ほど「家計引締め」が少なく、「分からない」の回答が多い。消費税引き上げに伴い、どのような対処をすべきかについて、判断に迷っているようすがうかがえる(何しろ直近の税率引き上げは1997年4月、16年以上も前の話である)。
やはり高収入世帯は「税率アップも気にしない」
これを世帯年収別に見たのが次のグラフ。
「高年収ほど消費は今まで通り・支出増」「低年収ほど支出は抑えてこれまで通り・消費をセーブする」との動きが明確に示されている。マインド的には低所得者ほど、消費減退を意図するようだ。また高所得者は「3%ほどの引上げはあまり影響ない」といった、家計上の余裕さが回答にも反映されているのだろう。「今まで通り」が明らかな上昇を示し始めるのは年収900万円以上。この属性以上が、今回の税率引き上げでも心理的消費性向への影響を受けない、富裕層的存在として見ても良いかもしれない。なお「今まで通り」「家計引き締め」の回答率が逆転するのは年収1500万円以上のみである。
税率の上昇は消費マインドを冷やすマイナスの作用を持つ。消費性向が落ち込めば商品の巡りは悪化し、企業の収益は落ち込み、景気は低迷する。今件調査結果を見る限り、低所得層、中堅から高齢者層で消費マインドの小さからぬ低下が予想される。その結果として経済が委縮し、税収が変わらない、むしろ落ち込むことがないよう、関係機関にはしかるべき対応を求めたい。
……消費税率の引き上げの理由の一つ「不景気でも減収傾向が薄い消費税の方が安定しており、同じく支出が安定・漸増する社会保障財源として望ましい」が何とも皮肉な話に読めてしまう、不景気でも税収が変わらない税率引き上げが、その不景気の呼び水となりかねないというのは、笑うべきところだろうか。
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