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スマホの普及と共に伸びる電子書籍

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 何百冊もの書籍が1端末に収まる電子書籍。その機動性の高さは計り知れない

電子書籍の利用率は2割ほど

アメリカではすでに「書籍」といえば紙媒体だけでなく電子書籍も該当するとの判断が主流。日本でもキンドルの日本語版の本格的展開と合わせ、アマゾンで電子書籍の本格的な取り扱い開始、さらに自己電子出版のサービスも始まったことで、加速度的に電子書籍が広まりつつある。それでは現状で、どこまで電子書籍は普及浸透しているのだろうか。

次以降のグラフはライフメディアのリサーチバンクが2013年10月に発表した、読書に関する調査結果を基にしたもの。なお今件における「電子書籍」に関しては、文庫本の電子化が成されたものだけでなく、雑誌や漫画をデジタル化した「電子雑誌」「電子漫画」も含まれる。

今調査対象母集団の、過去1年間における電子書籍利用率は約2割。

↑ 過去1年間に電子書籍を利用したか
↑ 過去1年間に電子書籍を利用したか

男女別では男性の方が利用率が高い。有料購読率に至っては男性で10.5%・女性5.1%と、2倍近い差を見せている。男性は仕事などで必要に迫られて購読する事例が多いほか、購入までの面倒くささ、さらには女性は書籍購読に際する対価を敬遠する傾向が強いことから、有料購読率が低くなっている。無料購読に限れば14.3%で、男性の18.0%と大きな差は無いことからも、それは明らか。

スマホと共に伸びる電子書籍利用率

それではこれら電子書籍利用者は、どのような端末で購読しているのだろうか。

↑ 電子書籍の利用端末(電子書籍を利用した人限定、複数回答)
↑ 電子書籍の利用端末(電子書籍を利用した人限定、複数回答)

直近の2013年において、もっとも多く使われているのはスマートフォンで5割近く。次いでパソコンが4割、タブレット機が1/4と続く。電子書籍の購読という視点では、すでにスマートフォンはパソコン以上のポジションに座している。閲覧できる面積はパソコンの方がはるかに上で読みやすいはずだが、それ以上に機動性の高さが好まれていると考えれば道理は通る。特定の場でしか読めない「書籍」の価値はさほど高くない。他方、昨年から(キンドル発売と共に)急速に浸透しはじめた電子書籍リーダーだが、現時点では1割強に留まっている。

経年別変化を見ると(2010年のスマートフォンはiPhone限定)、2008年から2011年頃まで流行した、一般携帯(フィーチャーフォン)向けの散文的・叙事詩的な小説「ケータイ小説」(「10代男性4割・女性7割近くは「ケータイ小説読んだことアリ」-広まりを見せる携帯小説(2009年)」)が貢献する形で、一般携帯電話による電子書籍利用者は相当なものだった。しかしモバイル端末の普及状況がスマートフォン主流となり、電子書籍も高機能なリーダー(アプリ)が多数展開され、作品も多種多様に及ぶようになると、スマートフォンによる利用者は増え、それと引き換えの形で一般携帯電話は漸減していく。また、電子書籍リーダーやタブレット端末も漸次増加の動きを見せる。

この電子書籍利用端末の「一般携帯からスマートフォンへ」という世代交代に伴い、パソコン利用率も漸減しているのは注目に値する。パソコン向けリーダーの機能が劣化していることは無く、むしろ改善され、単に読む点では問題が無い。すると、やはりスマートフォンや電子書籍リーダー、タブレット端末の利用普及に伴い、機動力の点で「パソコン(本体)自身が」劣るため、次第に使われなくなりつつあるものと考えられる。

今後は一般携帯、そしてパソコンも利用率は漸減し、機動力に長けた、それこそ紙の書籍同様に気軽な持ち運びが可能なスマートフォンが利用の度合いをこれまで以上に高め、電子書籍向け利用端末として浸透していく。一方、「併せ持つ」という機動性の上では不利だが、読み心地の点ではスマートフォンより優れた電子書籍リーダーやタブレット端末が、どこまで利用端末として普及していくのか。注目したいところだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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