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「TTPのトップが米無人機で死亡」誤読で思いっきり釣られた件

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
「TTPのトップが米無人機で死亡」誤読で思いっきり釣られた件

先日、読売新聞社のニュースサイト「YOMIURI ONLINE」を斜め読みしていたところ、目に留まるキーワードが。「米無人攻撃機」「TPP」「指導者」「死亡」。え? 何があったんだ、とばかりにクリックをして具体的記事を確認する。

↑ タイトルラインに並ぶ該当記事
↑ タイトルラインに並ぶ該当記事

記事の題名は「米無人機でTTP最高指導者が死亡」。パッと見では「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定、Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)」の関係者でトップの人が、なぜか米軍の無人機で死亡したと思ってしまう。昨今においてTとPで構成される3文字のアルファベットの羅列による言葉をパッと見すれば、「TPP」と認識し、ほぼすべての人が「環太平洋戦略的経済連携協定」、そこまで覚えていなくとも「日本が交渉している太平洋周辺諸国との間の貿易関係の協定」などと回答するに違いない。だからこそ「パッと見」の記事タイトルに違和感を覚え、注目してしまう。「なぜ?」が頭に電流を走らせる。

↑ 具体的な本文
↑ 具体的な本文

しかし記事をよく読むと、アルファベット3文字は「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」では無く「TTP」つまり「パキスタンのタリバン運動(Tehreek-e-Taliban Pakistan)」の略名であったことが分かる。

【イスラマバード=丸山修】パキスタン軍関係者は1日、米国が同日、パキスタンで行った無人機による攻撃で、同国のイスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動」(TTP)最高指導者のハキムラ・メスード司令官が死亡したと明らかにした。

国際ニュースとしては相応にビッグなニュースではあるが、当方の、そして恐らくは多くの人のイメージとは別物の内容。要は「TPP」と「TTP」を読み間違え、そして「TPP」とは普通には連動しない「米無人攻撃機」「死亡」との兼ね合わせに驚き、見事に釣られてしまったわけだ。

記者側としては”「パキスタンのタリバン運動」とタイトルに付けるのは長すぎる。略名として「TTP」があるから、それのみをタイトルに使っても問題は無い”と主張するに違いない。確かにそれは間違いではない。しかし同時に、「TTP」とよく似た「TPP」という略語が、今の日本では直上で説明した協定として容易に連想され、センシティブなキーワードであること、そして「TTP」と「TPP」を見間違え易いことは容易に理解できるはず(さらに日本では「TTP」という言葉の知名度は極めて低い)。その上であえて使ったのだとしたら、いわゆる「釣り」の意識があったことになる。

注目を集めるため。アクセスを増やすため。クリックをしてもらうため。絡め手、トリック的な手法を使うのはさまざまな広告でも良く行われる。しかしその手法を使う場合、一連の動作が終わった後、対象者に不快感をもたらしてはならない。確実にその媒体そのものへのマイナス評価につながるからだ。

インターネット上における情報チェックの場合、瞬時に詳細を見る・見ないを精査する(斜め読みする)必要があるため、このようなレベルの誤認は起きやすい。それを逆手にとる形で使われる事例も良くある。スパムメールの有名企業を騙るタイトル(例えば「NTT」と「NNT」)が良い例だ。

いわゆるエンタメ系ブログやまとめサイトで、パッと見では刺激的なタイトルが並び、それに釣られて中身に目を通すと、まったく別のことが書かれていたり、タイトルそのものが誤認させるようなものであることが分かったり、中身そのものが無く、不愉快さを覚えた経験を持つ人は多かろう。ましてや報道大手の同社が、このような「釣り」と取られても仕方がないタイトルを付けるのはいかがなものだろか。書き手、編集者はそのリスクについて、「まずいかな、読み手が別件の用語(今件なら「TPP」)と勘違いしてしまうのでは」「読者が意図したものとは別の言葉をイメージさせ記事内容へ誘導させることにならないだろうか」という発想が頭に浮かばなかったのだろうか。

今件なら、本来は単に「TTP」では無く「タリバン勢力」「武装勢力(の)TTP」と書くべきだった。それで誤認識は確実に防げる。文字数の問題が生じるなら「最高指導者」を「トップ」に代えれば良い。それだけのことがなぜできなかったのだろうか。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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