2012年度は79%にまで改善…緊急地震速報の精度をグラフ化してみる
震災をきっかけに仕組みを大改善、精度は再び上昇へ
「緊急地震速報」とは2007年10月から導入された気象情報上の仕組みの一つ。各地に設けられた観測点の状況を網羅するシステムで、地震のP波(初期微動)とS波(主要動)を観測し、両波の到達時間の差異などで、揺れが生じ得る地域へ警戒を発しようというもの。要は「ここで地震が起きたから、その揺れが伝わって、そちらでも地震が起きる可能性がありますよ、注意してくださいね」というお知らせを、地震そのものよりも速く伝える科学的な仕組みである。
今般では「地震波が2点以上の地震観測点で観測」「最大震度が5弱以上と予測それた場合」に発表される(1地点のみでないのは、地震計のそばへの落雷による誤報を避けるため)。そして「地震の発生時刻や震源推定地、地震発生場所の震央地名」と共に、「強い揺れ(震度5弱以上)が予想される地域」「震度4が予想される地域」について、その地域が随時発表されることになる。そして個々の速報について予想誤差がプラスマイナス1以下に収まった地域の割合を、上記の精度指標(的中率)としている。
次のグラフは気象庁が毎年発表している業績評価レポートを元にした、緊急地震速報の精度を示したもの。
この的中率2009年度までは70%から80%で推移していたものの、先の2011年3月11日に発生した東日本大地震・震災において、本震、そしてそれ以降も余震が相次いだため、複数同時に発生する地震の分散処理ができず、適切な速報が行えない事例が多発した。そのため、的中率も3割を切るという大きな下落を示すこととなった。
そこで緊急地震速報の精度向上、震度過大事例28例のうち13例で改善を確認で伝えているように、「同時発生地震の適切分離処理手法の導入」「観測点増幅度(地面の揺れやすさを震度予想に反映させるため、観測点毎に設定する補正値)の導入(2012年度では全観測点のうち約6割で実行)」などで対策としての精度改善を行っている。さらに「観測装置の電源強化」「衛星回線によるバックアップ通信のための機能強化」の順次実施、「多機能型地震計」の増設(50か所)も実施。これにより昨年度に続き今年度でも、震災後からは大幅な的中率上昇が果たされることとなった。
昨日の「誤報」に関する内情
昨日、2013年8月8日に気象庁は16時56分過ぎ、近畿地方を中心に、東海、四国、中国、北陸、甲信、関東、伊豆諸島、九州の各地方を対象とする緊急地震速報(警報)を発表した。最大ではマグニチュード7.8の地震を推計し、最大震度7程度を予測したものだった。
しかし実際には体に感じる地震(震度1以上)は観測されなかった。これは同日16時56分頃に和歌山県北部を震源とするマグニチュード2.3の地震(無感)が発生した際に、ほぼ同じタイミングで三重県南東沖の海底地震計(「東南海3」と呼称されている地震計)がノイズ(電気的な雑信号)を感知しており、これが地震の揺れとして取り込まれたのが原因。
これが原因で上記の速報発表の条件「地震波が2点以上の地震観測点で観測」に合致したため、今回の緊急地震速報が発表されたと説明されている(気象庁:8月8日16時56分頃の和歌山県北部を震源とする地震に関する緊急地震速報について)。
気象庁ではこれを受け、該当するノイズを拾った「東南海3」のデータ利用を停止し、「過大な予想により、ご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします」とコメントしている。
今回の事象を良い経験と成し、さらなる精度向上に励んで欲しいものである。