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育児休業、求められている長さは1年から2年が最多

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 乳幼児の育児をするために欠かせない育児休業、求められている長さは…

今件調査はメディケア生命保険によって未就学児(初等教育機関の就学する年齢に満たない子供)を有する、あるいは間もなく出産予定の女性保護者を対象としている。

現行政権の施策の一つとして「育児休業3年」が掲げられている。これは法令の改正では無く、企業の独自施策の促進をうながすものだが、この動きについて今調査対象母集団に尋ねたところ、賛成派は71.2%、反対派は28.8%という結果が出た。好意的な意見が多数のようだ。

↑ 「育児休業3年化」について
↑ 「育児休業3年化」について

一方、育児休業を取得する・取得中、あるいは取得した経験を持つ今調査対象母集団において、実際に育児休業を取得するとしたら、どの程度の期間を希望するのかを聞いた結果が次のグラフ。政策目標の「3年」を望む回答は比較的少数で、「1年半」を中心とした回答者が一番多かった。

↑ 実際に取得したいと思う育児休業の期間(単一回答)
↑ 実際に取得したいと思う育児休業の期間(単一回答)

この「1年半」を中心とした回答率の高さは、現行法(育児・介護休業法)で、子供が生まれてから最大1年半まで休業することが認められ(原則1年、希望により半年の延長が可能)、これを理由に事業者側は不利な扱いをしてはならないことがベースとなっている。つまり現行法の適用範囲内+αで十分とする意見が多数というのが実情となる。

他方、施策目標とされている「3年」を中心とする回答区分にも一定の回答者による山が出来ており、合わせて22.1%が答えている。最多回答区分ではないが、「3年」にも一定以上の需要があるのが確認できる。見方を変えれば「3年」までに幅を広げることで、育児をする側の需要に、より広範囲に応えられることができることになる。

育児休業期間が長いほど、育児の懸念が減るのと共に、待機児童問題解消に一役買うことや、出産・育児のための退職が減るなどのメリットが期待ができる。一方、「女性が就職や転職の点で不利になる」など、企業と女性の関係が悪化する懸念も強くなる。大手企業の中には先行して育児休業期間を延長する、できる仕組みを導入しているところもあるが、中小企業にはその負担が大きすぎるのも問題。さらに実際には、育児世帯における育児休業中の家計のやりくりなどの問題から、3年もの休業は難しく、時短就業を求める声も少なくない。

今件の「育児休業3年化」は、「3年まで必ず取得しなければならない」ではなく「状況に応じて3年までの延長が可能な状態を整備してもらう」を意味する。実際には労使間での臨機応変な対応が行われることになる(さらにいえばこれは「法制度の改正」ではなく「企業の独自制度の拡充による実質的な選択肢の拡大」である事を忘れてはならない)。選択肢が増えること自体は、大いに評価すべき話ではあるが、実際問題としてどの程度の年数が適用されるのか。企業体力・規模による、企業間格差が生じる可能性もあり、気になるところだ。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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