コロナウイルスで深刻な情報汚染、世界で情報検証の輪が広がっている「日本でもさらなる取り組みを」

新型ウイルスは情報汚染も世界に広げている(写真:ロイター/アフロ)

新型コロナウイルスは感染症としてだけでなく、メディア業界を変えた存在としても記録されるかもしれない。感染症が世界的に広がる「パンデミック」になぞらえて「インフォデミック」と呼ばれるほどデマや不確かな情報が広がる状況に、世界中のファクトチェッカー(情報検証者)たちが連携を強めている。

国際ネットワークで情報検証を共有

「この問題に一緒に対処しないか?」

1月24日、アメリカに本拠を置く国際ファクトチェックネットワーク(International Fact-Checking Network, IFCN)の担当者が、世界のファクトチェッカーたちに、コロナウイルスに関するミスインフォメーション(誤情報)やディスインフォメーション(虚偽情報)の検証への協力を呼びかけるメールを送った。

行動は早かった。このメールの翌日には趣旨に賛同したメンバーで情報を共有する体制ができた。各自が所属する組織でファクトチェックした情報を共有し、お互いにその要約や抄訳の掲載を可能にした。

IFCNはそのホームページで各国で検証されたデマをまとめて紹介する記事を立て続けに出している。#CoronaVirusFacts #DatosCoronaVirus. (datosはスペイン語で情報)という共通ハッシュタグも使われている。

日本からファクトチェック・イニシアティブも参加

日本ではファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)がこの活動に参加している。FIJはIFCNのガイドラインなどを参考に活動しており、現在、国内で12、海外でIFCNを含む3つの組織と協力してファクトチェックの普及啓発活動を続けている。

実際にファクトチェックを実施しているのはBuzzFeed Japanやインファクトなどの「メディアパートナー」だ。大手メディアでは毎日新聞、中京テレビ、琉球新報が入っている。

コロナウイルスに対しては、特設のファクトチェックサイトを設立した。「チェック済みの情報(国内)」「チェック済みの情報(海外)」「あやしい情報要注意リスト」「正しく怖がるためのリンク集」の4つにまとめて情報を発信している。

怪しい情報の3つのパターン

筆者は昨年までBuzzFeed Japanの編集長を務め、現在もFIJの活動にアドバイザーとして協力している。コロナウイルスのデマや怪しい情報は国内外を問わず、ほぼ3つのパターンがある。

  1. コロナウイルスの特効薬や予防薬が見つかったというデマ
  2. 「死者は報道より遥かに多い」などと不安を煽るデマ
  3. 感染源や感染経路などをでっち上げるデマ

1の例では効くと噂が広まった漢方が売り切れたり、2の例では「台湾で死者」などとデマが流れたり、3の事例では「ウイルスは中国の化学兵器」という陰謀論が生まれたりしている。

IFCNのコロナウイルスに関する情報検証のデータベースはすでに370件を超え、増え続けている。Twitter上の噂、運営元が不確かなウェブサイトからの記事、YouTubeの動画など、検証対象になった情報は様々だ。欧米を中心に日本のLINEのように使われているメッセージアプリ「ワッツアップ」上のデマも検証されている。

日本のファクトチェックさらに充実を

FIJの楊井人文・事務局長は「日本は中国の次に感染者が多く、影響を受けやすい。デマも広がっている」と指摘したうえで、こう警鐘を鳴らす。

「日本でもコロナウイルスに関するデマが流れていることが新聞やテレビなどでニュースになっている。しかし、実際にどの情報が間違っているかファクトチェックを自分たちで実施し、『この記事や情報は間違っている』と指摘する報道は少ない。『間違った情報がネットなどに流れているから注意を』というような一般的な形で報じているケースの方が多い。これでは不十分だ」

「情報の信頼性への注目が高まっているいまこそ、より多くの報道機関にファクトチェックに取り組んでもらいたい。まだ長期戦になる可能性もあるし、オリンピックも控えている。政治経済に影響を与えるデマや偏見も出てくるだろう。海外で広がるネットワークのように、日本でもファクトチェックをする体制を築いていく必要がある」