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#ゴルフ 欧州女子ツアーで珍事。ドライバーが次々壊れ、それでもプレーオフを勇敢に戦ったプロ根性

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 欧州女子ツアー(LET)のKPMGアイリッシュ女子オープンで珍事が起こった。

 オランダ出身の27歳、アン・バンダムは最終日の最終ホールでバーディーを奪い、先に首位タイでホールアウトしていた2人の選手に並んで、サドンデス・プレーオフを戦うことになった。

 そして、バンダムは大会のオフィシャル女性が運転する乗用カートに乗せられ、プレーオフ1ホール目となる18番のティグラウンドへ急いで向かった。

 乗用カートに乗ったまま、ギャラリー・ロープを潜り抜けようとしたときのこと。きっと気が急いていたのだろう。2人の頭がロープの下側を潜り抜け終えた直後、バンダムはロープを持ち上げていた手をすぐに放してしまった。

 そのタイミングは、ほんの少しだけ早すぎたようで、ロープは乗用カートの後方に積まれていたバンダムのクラブヘッドに引っかかり、そのことに気が付かず、そのまま乗用カートは勢いよく前進したために、バンダムのゴルフバッグは地面にドサッと落ちてしまったのだ。

 その大きな音で、ゴルフバッグが落ちたことに気付いた2人は、大慌てでカートを止め、横倒しになっていたゴルフバッグを拾い起こした。だが、地面にはドライバーヘッドが無残な姿で落ちてしまっていた。

 もちろん、そのドライバーはサドンデス・プレーオフでは使い物には到底ならず、バンダムはプレーオフ1ホール目の18番(パー5)を3番ウッドでティオフ。直前のアクシンデントにも動揺することなく、2打目で見事にグリーンを捉えてイーグルチャンスに付けた。

 しかし、バンダムのイーグルパットはカップに沈んではくれず、見事にイーグルを奪ったデンマーク出身のスマイラ・ターニング・ソーンダービーのツアー初優勝で大会は幕を閉じた。

 それにしても、ゴルフルールによれば、バンダムはこのケースでは、別のドライバーを急遽バッグに入れてプレーオフを戦うことが許されたはずである。それなのに、なぜ彼女はバックアップのドライバーを入れず、3番ウッドを握ったのか。

 米ゴルフダイジェストによると、今大会の会場にやってくる際、航空会社のミスでバンダムのエースドライバーは壊れてしまい、仕方なく、彼女は試合ではバックアップのドライバーを使っていたそうだ。

 そのバックアップまでもが乗用カートでのアクシデントで壊れてしまい、もはや彼女にはドライバーが1本も無かったとのこと。

 まさに「泣きっ面にハチ」の災難続きだったが、優勝争いに絡み、再度のアクシデントに際しても取り乱すことなく冷静に対処し、プレーオフでもナイスプレーを見せたバンダムのプロ根性に、拍手を送りたい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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