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リブゴルフ初の「戦力外通告」!?チームから追い出された選手の「これから」は、果たしてどうなる?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 新興の男子プロゴルフツアー「リブゴルフ」で「初の戦力外通告か!?」と言われる事例が発生。米ゴルフ界では、さまざまな噂が広まり、その“トバッチリ”はリブゴルフとの対立を深めているトラディショナルなPGAツアーにも波及している。

 リブゴルフは48名の選手が4名1組、合計12組のチームに分かれて競い合うチーム戦と、個々の選手による個人戦が同時進行で行なわれている。

 独特のスイングから絶大なるパワードライブを披露する24歳のマシュー・ウルフは、名門オクラホマ州立大学を経て2019年にプロ転向。同年にPGAツアーにデビューするやいなや、早々に3Mオープンで初優勝を挙げた期待の若手だったが、昨年、リブゴルフへ移籍した。

 しかし、昨今は成績が低迷しており、先週のリブゴルフのワシントンDC戦では、3日目に突然、途中棄権した。

 リブゴルフの4名1組のチーム戦では、通常は4名のうちの上位3名のスコアを採用して「チームの成績」としているが、棄権者が出た場合は残る3名全員のスコアを「チームの成績」とすることになっている。

 ウルフが所属するチーム「スマッシュGC」は、ウルフが棄権した後、キャプテンのブルックス・ケプカと弟のチェイス・ケプカ、それにジェイソン・コクラックの3名のスコアでチーム戦を戦ったのだが、全スコア採用となれば、他チームと比べて成績が下がるのは当然の流れで、結果は最下位の12位に終わった。

 米スポーツイラストレイテッド誌によれば、ウルフの棄権の理由は当初は「不明」。リブゴルフのHPでは後に「病気」と記されたが、それと前後して、リブゴルフのインスタグラムの公式HPでは、「スマッシュGC」のチームメンバーの中からウルフの名前が忽然と消えた。

 何かの手違いで消えた可能性も最初のうちは疑われていた。だが、他のメディア上のリブゴルフHPでも「スマッシュ」のチームメンバーはウルフを除いた3名の名前と写真のみになったことで、ウルフがチーム・キャプテンのケプカから「戦力外通告」を受け、「クビになった」ことは「ほぼ間違いない」と複数の米メディアが報じている。

 昨年6月から創始されたリブゴルフは、昨年の年間8試合においては、出場希望者の大半に出場機会を与えていた。できたばかりのツアーゆえ、初年度だった昨年はできるだけ多くの選手に経験してもらうことが狙いだったと見られ、日本からも谷原秀人ら数名が出場した。

 しかし、2年目の今年からは、「選りすぐり」の48名が基本的には年間を通じて「フィックス(固定)」され、年間14試合を戦う顔ぶれは変わらないことが前提になっている。

 48名は4名1組、全12組に分かれ、各チームがロゴ入りグッズの販売や独自の広告展開をするなどして収益化を図る「フランチャイズ化プロジェクト」が進行中であることも今年の大きな特徴となっている。

 そのプロジェクト推進のためにも、チーム戦での成績向上のためにも、チームメンバーの人選は重要な問題となるわけで、チーム・キャプテンにはメンバーを「解雇」「入れ替え」する権限が与えられている。

 「スマッシュGC」では、キャプテンのケプカにその権限があり、ウルフはケプカから戦力外通告を受けたと見られている。

 たった一度の棄権だけで戦力外通告を受けるとは、もちろん考えにくい。だが、ウルフはこのところ個人戦でも成績が振るわず、4試合連続で下位止まりだった。それに加えて、周囲からは「感情的になることが多かった」といった声が聞こえてきている。

 成績不振でチームへの現実的な貢献度が低下し、さらにチームワークも乱すという意味で、ケプカがウルフをクビにした可能性は、確かに高い。

 実を言えば、昨年、リブゴルフに移籍した際は、ウルフは「ハイ・フライアーズGC」というチームに所属していた。だが、今年からはケプカ率いる「スマッシュGC」へ移籍した。

 そして今、「スマッシュGC」から追い出されたと見られるウルフは、3つ目の所属先(チーム)を探している真っ最中だと米メディアは見ている。

 ところで、キャプテンのケプカは、暫定的に3名体制になっている「スマッシュGC」を4名に戻すため、「PGAツアーの選手を必死でリクルート中だ」という噂がSNSで広がっており、「最有力候補はゲーリー・ウッドランドだ」とされている。

 ケプカとウッドランドは以前から仲が良いことや、今年のマスターズでケプカのキャディがウッドランドのキャディに使用クラブをジェスチャーで「教えた」という疑惑が取り沙汰されたことなどから、そういう噂が広がっているのだと思われる。

 ウッドランドを勧誘中という噂の信憑性はなんとも言い難い。だが、ウルフが「スマッシュGC」からリブゴルフ初の戦力外通告を受けたことは、ほぼ間違いない。

 「第3の所属先」が見つからない場合は、ウルフの今年のリブゴルフ出場は難しくなる。だからと言って、古巣のPGAツアーに戻ることはもちろんできない。

 果たして「ウルフのこれから」はどうなることやら。いろんな意味で、彼に視線が集まっている。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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