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米ゴルフ界の"一大事"!代表選手が大会軽視発言。それでもライダーカップに出場する顛末は!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ある意味、米ゴルフ界の“一大事”と言っても過言ではない。

 来たる9月24日から3日間の日程で開催される米欧対抗戦のライダーカップは、米国チームと欧州チームが自分たちの国と大陸の名誉をかけて競い合う伝統的なチーム戦。2年に1度、米国と欧州の交互で開催され、今年は米国のウィッスリング・ストレイツが舞台となる。

 各々12名で構成されるチームのメンバーに選ばれることは「メジャー優勝より大切」「そのために僕はプロゴルファーになった」などと、過去にライダーカップ出場を果たした選手たちは、みな口を揃えてきた。

 今年は「ホーム」の米国側は、選手はもちろんのこと、ゴルフファンを含めた米ゴルフ界全体が勝利を目指し、文字通り、燃えている。

 しかし、そのチームメンバーに選ばれていながら、ライダーカップを軽視するような言葉の数々を口にする選手が現れ、その余波が米国チームや米ゴルフ界を揺らしている。

 メジャー4勝を誇るブルックス・ケプカは、米国のゴルフ雑誌のインタビューに応えた際、こんな言葉を口にした。

「正直なところ、(ライダーカップの週は)悪いとは言わないけど、いつもとは違うし、疲れるし、ちょっと変だ。僕がマッチに勝てば、僕が自分の仕事をしたというだけのことだよね。それなのに、それ以上に何を僕に期待するっていうんだろうね?」

「たぶん僕のDNAの中には、チームスポーツ云々というものが無いんだよね」

 これを聞いて、あちらこちらで批判の嵐が巻き起こったことは言うまでもない。

 2008年ライダーカップで米国キャプテンを務めた経験があり、現在は米国のゴルフ中継でアナリストを務めている元全米プロ覇者のポール・エイジンガーは、真っ先に怒りを露わにした。

「(ケプカが)ライダーカップを愛しているのかどうかに疑問を覚える。もし愛していないのなら、彼は米国チームメンバーの座を放棄し、ライダーカップをこよなく愛する別の誰かに譲るべきだ。心の底からライダーカップに出たいのに、出られない選手たちがいるのだからね」

 米国チーム入りが叶わず、無念の想いにさいなまれている筆頭は、キャプテン推薦でチームメンバーに選ばれることに最後の望みをつなぎ、そして夢破れたパトリック・リードだ。もちろん、リード以外にも、悔しい想いを噛み締めている選手は大勢いる。

 ケプカの発言は、そうした選手たちやその家族、友人知人、みんなの想いを踏みにじる発言だとして、エイジンガーが怒りの声を上げ、エイジンガーの声に賛同するファンの声が広がっている。

 その一方で「考え方は自由」「誰も言わないことをはっきり言うブルックスに拍手」といった声も、一部にはある。

 ケプカは、プレーオフ・シリーズ最終戦のツアー選手権で、木の根っこの上でショットして手首を痛め、途中棄権。その後もMRI検査を受けるなどして治療回復中とのことで、ライダーカップのチームメンバーたち全員が参加したウィッスリング・ストレイツでの下見会を欠席し、「ケプカはライダーカップに間に合うのか?」「そもそも出る気がないのでは?」などと噂されていた。

 そして昨日15日(米国時間)の夜になって、ようやく「ライダーカップには出る。手首の状態が回復した。戦う準備が整った」と発表した。

 しかし、思ったままをストレートに奔放に発言し、周囲を震撼させたケプカの存在が、米国のチームワークにどんな影響を及ぼすのかは、蓋を開けてみるまでわからない。

 ともあれ、ライダーカップを目前にして、ケプカのような発言が聞かれたことは、愛国心と忠義を掲げるライダーカップの歴史を振り返れば、史上稀なる、いやいや、史上初の「一大事」だ。

 だが、いざライダーカップが始まり、ケプカが全戦全勝のような大活躍を見せてチームに貢献したら、それはそれでケプカは絶賛されるような気がしてならず、そこがますます危機的状況に思えてならない。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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