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米ツアー最終戦は「フェアじゃない」?優勝16億円超、最下位4300万円超の何が不満?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

米男子ツアーのプレーオフ・シリーズ最終戦、ツアー選手権は、米国のパトリック・カントレーがスペインのジョン・ラームとの接戦を1打差で下し、今季4勝目、通算6勝目を挙げて、年間王者に輝いた。

優勝したカントレーには15ミリオン・ダラー(約16億5000万円)のビッグボーナスが贈られ、2位に甘んじたラームには5ミリオン(約5億5000万円)、3位のケビン・ナには4ミリオン(約4億4000万円)、26位タイだった松山英樹には42万5000ドル(約4675万円)、3日目のラウンド途中に左手首を故障したブルックス・ケプカにも最下位相当の39万5000ドル(約4345万円)が支給された。

日本の男子ツアーの賞金額と比べたら、喉から手が出そうなほどのビッグマネーだ。これほどの大金が手に入るのだから「米ツアーに感謝こそすれ、文句を言う選手などいるはずがない」と考えるのが自然だ。

だが、実を言えば、フェデックスカップやプレーオフに関しては、2007年の創設以来、長年、選手たちからの不平不満が絶えず、創設15周年を迎えた今年も、やっぱり「フェアじゃない」という声が上がった。

今大会の開幕前、カントレーはこう言っていた。

「2020年のツアー選手権でザンダー・シャウフェレが最小スコアを出しても勝てなかったことは、ほとんどクリミナル(犯罪的)だ。いいフォーマットだとは思わない。フェアじゃない」

しかし、だからと言って、どうすべきかと問われると、カントレーは「僕にも答えはわからない。ツアーの賢い人々に考えてもらいたい」と他力本願の姿勢だ。

ラームは「自分がどの位置にいて、最終戦や最終日に、自分が何をすべきか、何をしないと勝てないかということは、(2019年から改良された)現行のシステムでは、ずいぶんわかりやすくなった。でも、やっぱりフェアだとは思えない」と語った。だが、なぜフェアだとは思わないのかという明確な説明はされずじまいだった。

結局、フェデックスカップやプレーオフのシステムがあまりにも複雑で難解ゆえに、選手たちは「なんか変だ」と感じても、「何が変か」「どうすべきか」を明確に指摘することができず、そこが曖昧ゆえに、不平不満や批判をズバリ解消する施策がなかなか出てこない。

だから創設以来15年もの歳月が流れたというのに、いまだに全選手の納得が得られるシステムには至っていないというわけだ。

しかし、そもそもすべての選手が納得し、満足するシステムなど存在しえないのではないだろうか。

批判を口にした筆頭のカントレーとラームが優勝争いを演じたことは、皮肉な偶然だったのかもしれない。

だが、今季ただ一人3勝を挙げていたカントレーが勝利して4勝目を挙げ、世界ナンバー1のラームが2位になり、2人が揃ってワンツー・フィニッシュしたことは、現在のフェデックスカップやプレーオフのシステムが、本人たちが感じているほどアンフェアなわけではなく、かなりの確度と精度で強さや頑張りを反映していると考えられるのではないだろうか。

年間を通じて高額賞金と破格のボーナスを手に入れたことは、もちろん選手たちの努力と鍛錬の賜物である。素晴らしいパフォーマンスと素晴らしい戦いぶりを披露してくれたのだから、彼らはビッグマネーを手にするにふさわしい。

しかし、ビッグマネーを獲得することが可能になるバックボーンや環境がそこにあるからこそ、彼らはビッグマネーがもらえるのだということを、くれぐれも、お忘れなきように――。

私はひっそり、そう呟いた。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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