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カートに乗れない全英オープンを欠場するJ・デーリー、同週開催の米ツアー大会に乗用カートでプレー!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
デーリーのカート使用は全米プロOK、全英オープンNG、米PGAツアーはOK!?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 全英オープンで乗用カート使用を求めたものの、却下され、カートに乗れなくなったジョン・デーリー。全英オープン欠場を表明。だが、その直後、今度は全英オープンと同週開催の米ツアー大会出場を表明。その米ツアーでは乗用カート使用が許可されるという。

 デーリーの乗用カート使用を認めるべきかどうか。世界のゴルフを率いる団体間で、その可否や姿勢、対応に違いが出ていることで、欧米ゴルフ界が揺れ始めている。

【米PGAツアーでは全試合OK!?】

 右膝に変形膝関節症を発症し、「歩くだけでも、かなり痛い」というデーリー。今年5月の全米プロでは大会を主催するPGAオブ・アメリカから許可され、乗用カートを使用してプレーすることができた。

 しかし、今月18日から始まる全英オープンでは、主催者のR&Aから申請を却下され、落胆したデーリーは、それでも「痛みに耐えながらプレーできることを祈るばかりだ」と、歩いてプレーする意志を示した。

 だが、その直後、家族旅行中だった英国で「クモに刺され、病院に救急搬送された」とツイッターで発信。それを理由に全英オープン欠場を表明した。

 そして、そのまた直後、今度は全英オープンと同週に米国ケンタッキー州で開催される米PGAツアー大会のバーバソル選手権に出場する意志を示した。

 そこまでなら、出場日程を決めるのは「ご自由に!」という話だが、関係者が驚いたのは、そのバーバソル選手権ではデーリーの乗用カート使用が許可されるという点だ。

 米PGAツアーが今季の米ツアー大会とチャンピオンズツアーの大会においてデーリーの乗用カート使用を許可することを昨年のうちに本人に伝えていたことが、米メディアによって報じられた。

【異なる判断、異なる対応】

 世界のゴルフを率いる団体間で、デーリーの乗用カート使用の可否を巡る判断が分かれたことになる。

 もう一度、整理すると、PGAオブ・アメリカは今年の全米プロにおけるデーリーの乗用カート使用を許可、そして米PGAツアーとシニアのチャンピオンズツアーは今季の全大会でカート使用を許可していることがわかった。

 一方、全英オープンを主催するR&Aはカート使用の申請を却下した。

 デーリーが今年の全米オープンの出場資格を有していなかったため、USGA(全米ゴルフ協会)は今年はデーリーへの対応検討の対象外になっている。だが、昨年の全米シニアオープンの際は、USGAはデーリーからのカート使用申請を却下し、デーリーは同大会を棄権した。

 今のところ、世界のゴルフルールを司るR&AとUSGAは、デーリーの乗用カート使用を認めない姿勢を見せていると言えそうだが、そのUSGAは、過去には先天性の足の故障を抱えていたケーシー・マーチンの乗用カート使用を1998年と2012年の全米オープンで許可した

 そして、米PGAツアーは1997年にマーチンから訴訟を起こされ、2001年に敗訴している。そんな過去の経緯も踏まえての判断だったのかどうか、そのあたりの詳細は米ツアー側から明かされてはいないが、ともあれ、デーリーは今季の米ツアーとチャンピオンズツアーの全大会でカートに乗ることが許されている。

 これだけ判断や対応が分かれると、乗用カート使用の可否の基準は一体何なのだろかと首を傾げてしまう。

 ゴルファーに故障は付きものであり、「乗用カートが使えるならプレーできる」という状況は、他選手にも起こってきたし、今後も起こりうる。そのたびに大会やツアーによって違いが出るのでは「アンフェアだ」の声が上がり、混乱を招くばかりだ。

 乗用カート使用の可否の問題は、もはや「お騒がせデーリー」だけの話に留まらず、世界のゴルフ界で再び慎重に討議・検討されるべき問題となりつつある。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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