差別発言のH・ヘイニー氏が今度はT・ウッズに応酬。「恥を知るべし」と言わざるを得ない嘆かわしい現状
タイガー・ウッズの元コーチだったハンク・ヘイニー氏が差別発言でラジオ番組から一時降板(実質は恒久的に降板)させられた一件に対し、ウッズがヘイニー氏に対する批判的なコメントを出した途端、今度はヘイニー氏が過去の話を持ち出してウッズを批判。反省するどころか、ヘイニー氏の醜態は留まるところを知らない様子である。
【ウッズの批判にヘイニー氏が応酬】
ウッズはヘイニー氏の差別的発言に対し、「明らかに彼(ヘイニー氏)は(日頃から思っていたことを)そのまま口にした。(批判や番組降板は)なるべくしてなった」、つまり、そうなるに値する当然の報いであるとコメントした。
すると、ヘイニー氏は、ツイッターでこう応酬した。
「タイガー・ウッズがモラルの権威になっているなんて驚きだね。私はタイガーをコーチするために6年という歳月を費やした。その間、彼はセクシスト(性差別主義者)的、レイシスト(人種差別主義者)的な言葉を私の口から一度でも聞いたことがあったのか?(なかったはずだ)。タイガーはメジャー15勝のチャンピオンになったことに加え、今度は人の心を読み取れるマインド・リーダーにでもなったつもりなんだろうなあ」
【コトの経緯】
この一件、ご存じない方々のために、ざっと振り返ってみよう。コトの発端は、ヘイニー氏がレギュラー出演していた米PGAツアー直営のシリウスXMラジオ局の番組における5月29日(米国時間)の発言だった。
アナウンサーから「今週は全米女子オープンですね」と投げかけられたヘイニー氏は「えっ、ホント?まあ、優勝は韓国人だと私は予想するよ」と答え、「LPGAの選手の名前は6人も挙げられないけど、リー(Lee)と言っておけば、ファーストネームを言わなくてもいい。たくさんいるからね」。
そこまで言ったあと、「ところで全米女子オープンはどこでやるんだい?」と続け、栄えある女子のメジャー大会を軽視し、そこで戦う韓国人選手、韓国系米国人選手を愚弄する発言をした。
こうしたヘイニー氏のコメントをミッシェル・ウィーをはじめとする女子選手たちが「きわめて人種差別的で女性蔑視でもある」と指摘し、SNS上でヘイニー批判の嵐が起こった。
そして、シリウスXMラジオは、母体である米PGAツアーの指示の下、30日に共同声明を出し、ヘイニー氏を番組から一時降板(サスペンション=停職)させて今後の処分を検討すると発表。だが、発言の内容と多大なるイメージダウンを考えれば、実質降板と言える。
【開き直り、そして応酬】
巻き起こった自身への批判に対して、ヘイニー氏が取った行動はというと、「言い方を間違えた。ごめんなさい。サスペンションを受け入れます」と、まずは大慌てで謝罪コメントを出した。
だが、皮肉にもヘイニー氏がコメントで触れた通り、実際に全米女子オープンを韓国人選手のリー(Lee)・ジョンウン6が制すると、ヘイニー氏の語調は、むしろ誇らしげに強まった。
「全米女子オープンのリーダボードの最上段に韓国人選手が来るという私の予想は、統計と事実に基づいたものだった。韓国人選手たちがLPGAを席捲していることは紛れもない事実。同じ質問をもう一度されたとしても、私の答えは(先日のそれと)変わらない。ただし、より慎重に言葉を選ぶけどね」
批判を逆手に取り、むしろ自身の予想が的中したことをアピールするヘイニー氏の姿勢には驚かされたが、それに続き、今度は自身を批判したウッズへの応酬に出たというわけだ。
【落胆、落胆、また落胆】
先日もここで書いたばかりだが、2009年暮れにウッズの不倫騒動が巻き起こり、大揺れしていたとき、それまで足掛け7年も二人三脚で歩いてきたヘイニー氏がいの一番にウッズから離れていった姿に私は衝撃を覚え、落胆もした。
その直後、ヘイニー氏は米メディアにこうも言った。
「私が知っている唯一のこと。それは、タイガーがセックス中毒という問題を抱えていることだ」
その後、ヘイニー氏は、コーチとしてウッズの傍らにいた7年間で知り得たウッズの数々の言動を世間に晒す暴露本「ザ・ビッグ・ミス」を2012年に刊行。それが2人の関係を断つ決定打になった。そのとき、再び、ヘイニー氏の言動に落胆させられた。
そして今回。ラジオ番組内での差別的発言に落胆させられ、その後の開き直りと、さらにはウッズへの応酬。「もう、たくさんだ」と感じている人は少なくないだろう。
マナーやエチケットを重んじるゴルフ。その指導者は、ゴルフの技術のみならず生きる姿勢や考え方においても人々の範となってほしい。その意味で、ゴルフの指導者として名を馳せ、ラジオ番組にレギュラー出演までしていたヘイニー氏は、大いに恥を知るべし。
そう言わざるを得ない現実が、今とても嘆かわしい。