メジャー3勝の強者、ブルックス・ケプカの10キロ減量の是非を考える

相変わらずマッチョなケプカだが、昨秋から10キロ超、体重が減っている(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャー3勝の実力者で世界ランキング現在3位の米国人選手、ブルックス・ケプカ(28)が、昨秋から24ポンド(10.88キログラム)も体重が減り、飛距離が落ちていることが米メディアの間で話題になっている。

 ケプカは昨年10月に韓国で開催された今季開幕シリーズのCJカップ・アット・ナインブリッジズで米ツアー通算5勝目を飾ったが、翌月の11月から減量に挑んだ。

 そして今年、ケプカはすっきりした顔姿で米ツアーにやってきた。だが、3月上旬のホンダクラシックでようやく2位タイに食い込んだのが今季唯一の好成績。翌週からのアーノルド・パーマー招待は予選落ちを喫し、プレーヤーズ選手権は56位タイと成績は今のところ振るってはいない。

 その原因は体重減少に起因する飛距離不足だと米メディアは指摘。実際、ケプカのドライビング・ディスタンスは2018年は313.4ヤードで8位だったが、今季現在は307.9ヤードで16位と低下している。

 ケプカ自身も212ポンド(96.162キロ)あった体重が190ポンド(86.183キロ)まで減ったため、「ウエイト不足でボールを前へ進められない。そういうフィーリングが自分の中に感じられない」と明かした。

 体重減少はケプカが意図的に減量に挑んだ結果だという。ジムでのワークアウトやランニングを大幅に増やし、通常の食事を減らしてヘルシーフードの摂取を増やしたところ、4か月で10キロ超、体重が減ったそうだ。

 

 気になるのは、なぜ減量したかだが、ケプカは「そのうちわかるさ」としか言わず、その理由はまだ明かされていない。

 

 だが、4カ月間に渡った減量はなかなか厳しいものだったようで、それなりの理由や意志がない限り、易々とできるものではなかった様子である。

「たった4か月のことだと思って頑張った。でも、ずっと食べたいものを我慢してきたので、早くチーズバーガーが食べたい」

【昨年も「減量」はキーワード】

 ケプカが減量に挑んだ理由を明かさず、曖昧にしたことで、米メディアの間ではさまざまな憶測や推測が飛び交っている。

 病気や故障が原因という傷病説も聞こえてきた。治療のための減量をドクターから指示され、挑まざるを得ずして減量に挑んだという見方だが、ケプカ自身が口をつぐんでいる現状下では、真偽のほどは知りようがない。

 筋肉質のがっちりした肉体からパワフルで正確性の高いショットを打ち出し、数々の勝利を重ねてきたケプカが、パワー不足、飛距離不足に陥ったとなれば、彼のゴルフの根幹が揺らぎ、自信レベルも低下するなどメンタル面にも、ひいては成績面にも悪影響が及ぶのではないかと危惧する声も聞こえてくる。

 だが、ケプカの過去の歩みを振り返れば、彼が自分の意志であえて減量に挑んだのであれば、そのこと自体は「いいサイン」ではないかと私は見ている。

 というのも、昨年のケプカの快挙の裏側でも「減量」はキーワードになっていたからだ。

【飛距離ダウンより健やかな心身!?】

 昨年1月、ケプカは左手首を痛め、戦線離脱を余儀なくされた。当初は「左手で軽いものを持つことすらできなかった」という症状。

「もう2度と試合で戦えなくなるのではないかと思った」

 

 ゴルフはもちろんのこと、トレーニングやワークアウトにもドクター・ストップがかかった。

「毎日、ソファに座ってテレビを見ることしかできない日々。僕の体重はどんどん増えていった。鏡を見るたびに太った自分も顔や姿を眺めるのは決してハッピーなことではなかった」

 いろいろな医師を訪ね、さまざまな治療を受けたが、左手首はなかなか治らなかった。途方に暮れたケプカは、思いあまって馬のカイロプラクターを訪ねた。そこで受けたわずか30分の施術で左手首の痛みはウソのように消え去り、以後、ケプカは水を得た魚のようにトレーニングと練習を始めた。

 「太った自分」「なまった腕前」から脱却し、心技体すべてのシェイプアップに勤しんで5月に戦線復帰したケプカが、6月に全米オープン2連覇、8月に全米プロ初制覇を遂げて、メジャー3勝、世界ランキング2位へ、果ては世界ナンバー1へと昇り詰めていったことは、すでに周知の事実だ。

 そんな成功体験が「シェイプアップこそが成功につながる」という想いを彼に抱かせ、昨秋から今春にかけて再び減量に挑んだのだとすれば、しかも厳しい減量に成功したのだとすれば、これはさらなるメジャー制覇へ向けた彼の強い意志の表れであり、きわめて「いいサイン」と見ることができる。

 飛距離が落ちたことは、もちろん無視はできないが、ケプカ自身は「大きな問題ではない」と気に病んでいる様子ではない。

 むしろ、心身がヘルシーになったという確信や手ごたえが、これからの彼のゴルフに活力をもたらし、落ちたと感じているパワーは早々に戻ってくるのではないか。少々落ちた飛距離より、健やかな心身が大きなモノを言い、来たるマスターズ制覇へとつながっていくのではないか。

 ケプカの減量の是非が取り沙汰される中、私はそう思っている。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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