●歌声のみで多様な感情に憑依する“歌うことしかできないバンド”

歌声のみで多様な感情に憑依するmzsrz(ミズシラズ)とは、顔出しマストでなくダンス審査もない次世代オーディション『ヨルヤン』(テレビ東京)を勝ち抜いた5人によって結成。歌声のみで多様な感情に憑依する“歌うことしかできないバンド”だ。デビュー作となった1stアルバム『現在地未明』は、DECO*27プロデュースで話題となっている。DECO*27とは、「ヴァンパイア」のヒットが記憶に新しい、ボカロ文化圏のレジェンドであり令和ポップシーンを切り開く要注目の音楽家だ。

mzsrz5人のメンバーは、グループ結成までそれぞれ“見ず知らず”の存在であったという。ひとりひとりを紹介しよう。

“光に反射して色々に騒めく水面の様な自在の多面声”大原きらり(18才)

“水々しく直線的な凛々しさと刹那的透明感の共存声”作山由衣(15才)

“まるで瀑布。曲への想いを歌へと叩きつける感受声”実果(18才)

“たゆたう歌声がそのまま波紋となり心震わせる共鳴声”ゆゆん(18才)

“優しく時には強く降る雨の様に育み洗い流す流動声”よせい(20才)

2022年3月16日にリリースされた1stアルバム『現在地未明』には、バンドとしての自身の進む先を示す初のライブ映像『mzsrz Live “現在地未明”』(約49分)を収録したBlu-ray付きバージョン。ajimitaやKICO、まご山つく蔵などのイラストレーターとコラボしたリリックビデオを収録したBlu-ray付きバージョンの2種類が用意されている。“ライブ”と“リリックビデオ”という選択肢。今の時代らしい試みだ。

1stアルバム『現在地未明』/ Photo by エイベックス・エンタテインメント
1stアルバム『現在地未明』/ Photo by エイベックス・エンタテインメント

アルバム・タイトルの『現在地未明』とは、“夜がまだ明け切らない”という意味を持ちながらも、夜と朝が溶け合う曖昧な時間である“未明”を用いることで、自分がいる場所が定まらないことから生じる不安や焦燥なども表現している。そんなmzsrzにとって、ファーストライブとは5人の結束の機会であり、個性が溶け合いひとつになる瞬間。バンドとして次のステップへと続く大きなターニングポイントとなる。

●ラウド仕様のパンクバンドをバックに従え、時代とシンクロする

ライブのキーワードは“ラウドロック”だ。パンデミック以降、ライブハウスは定員数を制限されロックフェスは中止となるなど散々な目にあってきた。この春、ようやくライブへの規制も緩やかになりつつはある。そんななか、mzsrzはラウド仕様のパンクバンドをバックに従え、時代とシンクロするポップパンク、ハイパーポップ などエモーショナルかつダンサブルなロックサウンドでリスナーを魅了する。

エモーショナルなハードコアを出自とするメンバーを紹介しよう。

●Drum:元FACTで、現在はKen Bandのドラマーとして活躍するEiji Matsumoto (KEN BAND / Radical Hardcore Clique)、

●Bass:まふまふバンドでも知られ、自身もアーティストとして活躍するベースシスト白神真志朗

●Guitars : FZ(sfpr / Radical Hardcore Clique)と、Mas Kimura(NOTHING TO DECLARE / JPME)によるツインギター

●Keyboard:シキドロップのピアニスト平牧仁

●夜明け前からの旅立ちの一歩、前に突き進む意志

スペシャルなバンドとともにステージははじまる。オープニングはバンドによる軽いセッション風景。暗がりに青く煌めくmzsrzの姿。緊張感が伝わってくるシーンだ。

ドラムの4カウントから1曲目は「夜明け」でスタート。バンドセッションと呼応するかのように、透明感ある透き通った歌声によって畳み掛けるように歌い上げていく。“まだ大丈夫って笑うんだ 夜明けの歌”と、夜明け前からの旅立ちの一歩、前に突き進む意志を感じられる。mzsrzのはじまりの歌であり、そして本公演『mzsrz Live “現在地未明”』のテーマソングと呼べるナンバーだろう。

続く2曲目は、アグレッシヴなロックビートと絡み合うシンセサウンドがカオティックな空間を撃ち抜くナンバー「インベーダー」。mzsrz結成のきっかけとなったオーディション番組『ヨルヤン』の課題曲として話題となったナンバーでもある。

なお、課題曲を発表するにあたり、オーディション審査員でもあったDECO*27が、Twitter上にイントロとAメロとBメロとサビのトラックを2種類ずつを公表し、投票によって各パートが決定した逸話を持つ。最先端シーンで話題のMUSIC3.0、ある種、リスナーをもプロデュースワークに巻き込んだ音楽DAO(分散型自律組織)理論、Cocreationを先取りしたスタイルだった。そんなmzsrzにとって大切なナンバー、「インベーダー」は“愛情”と“依存”をテーマにインベーダー=侵略者へ向けられたパンキッシュな展開がアグレッシブに繰り広げられていく。ツーバスの低音の響きが、愛する君に侵略される様、かき乱され心揺れ動く様を描きだす。ラスト、“バイバイは笑えないから「嫌だ」は黙っちゃった”というというフレーズが突き刺さるのだ。

繊細な打ち込みサウンドから繊細にスタートする「アンバランス」。徐々にアップテンポに加速するミクスチャーテイストを感じられるナンバー。人生は選択の連続、“こんなはずじゃなかった”と後悔するときにどんな行動をとれるかが大切だ。そんなアンバランスに揺れる感情を、ピュアネスを感じられる歌声で表現していく。しかしながら、“欲しいものばかりを望むなら 失うのは大切ばかり”というエグいほどに葛藤を描き切ったフレーズにmzsrzが生み出すポップソングがタダ者ではないことを証明していく。

聴こえてくるのは、Spotify公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』のTOPカバーに選曲された「ノイズキャンセリング」のイントロダクションだ。タイトルが醸し出す、時代のキーワードとなるノイズのみキャンセルする機能性のあり方。SNS世代、コミュニティーごとに別々の人格を使い分けるが故に、誘発される境界線があいまいとなる息苦しさ。耳をふさぐという行為。そんな、定まらない感情をシンセポップな四つ打ちビートとアコースティック・ギターによるカッティングで、疾走感溢れるビートによって本音へと導いていく。メンバー5人のコーラスワーク、シャウトが胸に響き渡る。

●先輩表現者の名作を、バトンを受け継ぎながら真摯にリバイバル

そして、中盤は一変して各メンバーのソロによるパフォーマンス・コーナーがスタート。

ロングヘアーが印象的な作山 由衣は、hitomiのロックバラード「innocence」を穏やかなピアノの響きに後押しされるように、堂々たるヴォーカリゼーションで披露。

大原きらりは、ネットカルチャーを切り開いたパイオニアのひとりniccoの「22歳」を、たゆたうようにふんわりとしたベースが牽引するビートを泳ぐように歌唱。

ゆゆんは、Do As Infinity「深い森」を言葉の意味をしっかりと噛みしめるかのように、暗闇から光の道筋を照らすがごとく真っすぐに力強く歌い上げていく。

よせいは、大塚 愛「プラネタリウム」という、井上真央主演TBS系ドラマ『花より男子』イメージソングとして知られるヒット曲を、しっとりと儚げに表現。

メガネ姿が映える実果は、The Kaleidoscopeによる「愛すべきひとよ」を広大な大陸での地平線が垣間見れるような歌声で伝えてくれた。アメリカンロックなバラードだ。

さらに、スペシャルに5人がステージに集まり、まさかのロードオブメジャー「大切なもの」をパフォーマンス。ロードオブメジャーがインディーズ期の2002年、ミリオンセールスを記録した人気曲のカバーだ。明るめな照明が、5人をふたたび現世に召喚したようなスペシャルな雰囲気が漂うマイクリレーによるメロディックなパンクチューンだ。

カバー曲パートは解放の時間。所属レコード会社、エイベックスに関与する先輩表現者の名作を、バトンを受け取っていくかのように真摯にリバイバルしていく。メンバーそれぞれ、ふだんは見せない笑顔がときおり溢れる優しさを感じられたステージだった。

●日常の機微に寄り添い歌う、Z世代の心情を代弁するmzsrz

ラストは、「エコー」からオーラスへ突入。ベックなど、オルタナティブロックを彷彿とさせる90’sリバイバルなギターによるイントロ。ファニーかつキュートなキーボードアレンジが耳に残りながらも、サビでは一気に加速。mzsrzソングとしては柔らかな雰囲気が、今の時代にぴったりな、気持ちに寄り添った応援歌としてアップデートしたポップソングをかき鳴らしていく。

そしてライブのエンディングを飾るのは、mzsrzにとって大事なナンバー「フェーダー」の登場だ。“待ちに待った未来は ちゃんとあっていますか”というフレーズがエモい。感情の振れ幅が大きなZ世代の感情理論。綺麗なまま濁っていく、青春期の葛藤を5人の想いがひとつになるかのように大切に大切に歌い上げられ、大原ひかりによるフェイクとシャウトが熱く観るものの感情を煽りまくる。完全にやりきった、大団円を迎えたステージ。余韻の深さ……。

こうして、mzsrzによるファーストライブは終了した。本公演は、CD発売に先行してオンラインライブとしても配信され、YouTubeにも期間限定でアップされていた(※現在では「インベーダー」、「エコー」、各自のソロパフォーマンスのみ)。そして、手に取れる記録用アイテムとして3月16日にリリースされた1stアルバム『現在地未明』に、Blu-ray付きバージョンとして収録されている。

日常の機微に寄り添い歌う、Z世代の心情を代弁するmzsrz 。メンバー5人による幅の広さを示す“多様声(※mzsrzによる造語)”で表現する、繊細なる心模様を等身大で歌う=micro music(※mzsrzによる造語)”を奏でる存在だ。そもそもポップ・ミュージックとは時代を映し出す鏡であり、炭鉱のカナリアのような存在である。2022年という時代を赤裸々にあらわしたサウンドを、鉄壁のバンドを従えた記念すべき“ファーストライブ”でチェックしてみてほしい。

mzsrz公式サイト

https://mzsrz.com

mzsrz 1stアルバム「現在地未明」配信中

https://mzsrz.lnk.to/genzaichi