【インタビュー】a子、オルタナティヴでありながらポップを共存する新感覚な存在感

photo by a子〈londog〉

新しい才能に出会った。内省的なダークさとポップの共存。まだ荒削りであり、エッジーな印象ではあるが情緒的であり幻想的な謎めいたシンガーソングライター、a子(エーコ)が生み出すドープなサウンドに魅了されている。

オルタナティヴでありながらポップを共存する存在感は、CHARAやUA、椎名林檎などのサウンドに出会った時の衝動に近いかもしれない。ノスタルジーではない。思わず、筆者が選曲するSpotify公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』でも、どこかしら輝きを予感させるa子「水泡」をリストインし続けている。もちろん、主要公式プレイリスト『Tokyo Rising』、『Early Noise Japan』、『ブルーにこんがらがって』、『Edge!- Japan Indie Picks-』などにも続々リストインしているのは言うまでもない。

注目は、YouTubeで5万再生を超えた「CHAOS」で歌われる“あなたに湧いていた アレは 今だけ無くて 晴れるの 息ができるほどに 暴れるくらいでいい”のフレーズが持つパワー。感じられるのはフライング・ロータスやグライムス、フィオナ・アップル、サンダーキャットからの影響。さらに遡れば、ポーティスヘッドなど、ブリストル系と呼ばれた狂気を感じるダウナーなビートセンスながら、そこには力強い”生きる”力を感じたのだ。しかも歌えるメロディーの強度さ。これは表面的な暗さだけではなく、メインストリームへと通じる輝きを予感させるドープさなんだなと気がつかされた。

「はじめてのCD『潜在的MISTY』は、全曲“生命”をテーマにしています。命って、見えるようで見えないじゃないですか? それが昔から悩みだったんです。そこからEPのタイトルが生まれました。『CHAOS』は、自分が尊敬するアーティストへの羨望や嫉妬、憧れなどが入り混じった混沌を描いてます。その頃、VaundyやFriday Night Plans、藤井風さんあたりが人気で、王道なコード進行でR&B寄りな曲にしたいなと思ったんです。でも、私はR&Bがなかなか歌えなくて、ミュージックビデオも撮り終えた段階でイチからアレンジし直して歌い直しました。毎回手探り状態なんですよ。」(a子)

a子は、レコーディングやミュージックビデオの制作にあたってクリエイティブ・チームを作った。そこで出会えたメンバーが、レーベル名でもあるlondogという10名のクリエイター集団となるコレクティヴだ。なお、マスタリングエンジニアには、笹川真生などの作品も手掛けている中村リョーマが担当している。

この感覚は、King Gnuが前進バンド、Srv.Vinciだった頃に近いかもしれない。聞けば、a子はKing GnuとクリエイティヴレーベルPERIMETRONの創造的な共犯関係に影響を受け、londog結成に至ったという。

「今の時代、SNSやYouTubeだったりストリーミング・サービスなどの普及もあって、自分たちで全部やればいいんじゃないかと思ってlondogを作りました。小回りが利くというか、やりたいことを実現しやすいなって。londogはレーベル名でもあります。」(a子)

完全セルフプロデュースであり、詞曲を手がけ、ミックス、映像ディレクションまで行うa子。活動開始1年で『SUMMER SONIC2019』への出演権をかけたオーディション企画『出れんの!?サマソニ!?2019』ファイナリスト(応募総数3,900組から33組)へ選出。しかしながら現状では敢えてメーカーやプロダクション未契約の選択肢をとり、セルフプロモーションで活動を続けている。今回の取材も本人にTwitter経由で連絡を取り実現した。初インタビューとなるそうだ。音楽との出会いを聞いてみた。

「父がレコードで音楽を聴いたり、ギターもやっていた影響が大きかったです。音楽をはじめたのは中学1年生の頃。学校や家庭など日常生活で違和感があったんです。当時、ソフトマシーンとかプログレが好きで、ぐちゃぐちゃな音楽が気持ちにグサッと刺さりました。自分が抱えていた不安といった感情を表現できるのは音楽だなって気がついて。その頃から自分でCDショップに行ってアルバムを買い集めるようになりました。スマホもパソコンも持っていなかったので、ずっとCDをジャケ買いしてました。」(a子)

独特な存在感を解き放つウィスパーなヴォーカリゼーションと、インディー/オルタナティヴ・ロックの影響を感じさせる繊細で研ぎ澄まされたクリエイティヴィティ。平穏に潜む狂気の顕在化。2020年というカオティックな時代とシンクロするするサウンドやヴィジュアル表現にて、音楽シーンをアップデートすることは間違いないだろう。

「国内で今のサウンド感だったら、米津玄師さんの新しいアルバムやサカナクション、King Gnuの世界観が好きです。音作りなど影響を受けていますね。ゆくゆくはもっとポップな曲も作ってみたいと思っています。聴いてくれるリスナーに向けて50%、自分がやりたいこと50%というか。誰も聴いたことがない新しいジャンルの音楽をやっていきたいです。」(a子)

なお、徐々にシーンでもa子の魅力に取り憑かれたリスナーは増えつつある。ギターによる妖しげなリフが耳に残る、たゆたうようにストーリーテリングする「肺」は、あっこゴリラがナビゲーターを務めるラジオ番組『SONOR MUSIC』でもフックアップされている。映像の浮かぶ音作り。ヴィジュアル・センスにも着目したい。

「ヴィジュアル面の影響は、フランス映画や短編映画、いろんなアーティストのミュージックビデオをとにかく観まくっています。無国籍だったり、いろんなイメージを織り交ぜて新しい世界観を作りたいですね。来年に向けてもいろいろ準備しているので、楽しみにしていてください!」(a子)

2020年9月23日リリース、a子1st EP『潜在的MISTY』〈londog〉に注目をすべきだ。

photo by a子1st EP『潜在的MISTY』〈londog〉
photo by a子1st EP『潜在的MISTY』〈londog〉

本作は“無意識のうちに抱えている命の意味とは、霧のように雲がかっているものだ”と捉える、彼女独自の感性によって生み出されている。すべての楽曲に“生命”を暗示するテーマが込められているのだ。なお、CD盤にはa子が活動初期に制作していた「ジェラシー」がボーナストラックとして7曲目に追加収録されている。こうして次世代を牽引していく新たな表現者、a子のヒストリーが本格的にはじまっていく。

a子1st EP『潜在的MISTY』〈londog〉

2020年9月23日リリース

1. CHAOS

2. 熱帯夜

3. 肺

4. 水泡

5. drug

6. ろれつ

7. ジェラシー (CDのみの収録)

https://ultravybe.lnk.to/senzaitekimisty

a子 Official Twitter

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