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季節の変わり目で腰が痛い、だるい......身体に負担をかけにくい掃除道具を紹介

藤原千秋ライター、住生活ジャーナリスト
(提供:イメージマート)

急激に気温や気圧が変動しやすい時季、微妙な体調不良を感じている人も少なくないのでは。そんなときは無理せず家事など休んでしまうに越したことはありませんが、事情があって致し方なく、待ったなしの日々の掃除をこなさなければならないようなこともあるでしょう。

そんなとき、できるだけ身体に負担をかけにくい道具、方法とは……?

今回は切実な要望に応える、身体に負担をかけにくいタイプの掃除道具をご紹介します。

■伸長する軽量アルミスティックの先に、ポリプロピレンなどでできたマイクロファイバーのフサが付いているタイプの掃除道具

内風呂での入浴が一般家庭で可能になって約半世紀。しかしこの家庭の浴室での怪我は居室に次いで多く搬送例もしばしば(※1)。

水や洗剤で濡れた洗い場で足を滑らせる懸念のみならず、浴槽内の掃除に際しては元気なときでもバランスを崩しそうになったり、無理な姿勢を余儀なくされ苦痛だと感じている人も少なくないのではないでしょうか。

こと足腰、肩が痛んでいたり、また頭痛やめまいのような症状がわずかでもあれば強い負担感があるのではないかと思います。

通常、浴槽などの掃除には浴室掃除用スポンジ浴室用中性洗剤を使用します。しかし近年、伸長する軽量アルミスティックの先に、ポリプロピレンなどでできたマイクロファイバーのフサが付いているタイプの掃除道具が各社から販売され、知る人ぞ知る人気商品となっています。

長い棒の先に付いた大きな房状のブラシは水だけで、ないし少量の洗剤でも泡立ちよく効率的な掃除が可能。浴槽の縁に溜まりやすい皮脂汚れなどを、立ったままの姿勢でもラクに落とすことができるという、なかなか優れた道具なのです。

棒部分はちょっとした長さではなく、たっぷり1メートル程度はあったほうが使い勝手が良く便利です。

こういった道具であれば、お腹の大きな妊婦さんや、身体の小さな小学生などが浴槽掃除をする際にも、特別な準備なく比較的安全かつ短時間で掃除することができます。またヘッド部分をよく濯ぎながら洗い場、壁、風呂蓋といった箇所の掃除も容易に行うことができ、一度使い始めると手放せなくなります。

■ヘッドがコンパクトなタイプのフローリングワイパー状掃除道具

腰を曲げることなく、スッと立った姿勢、かつ軽い繰り回しでフローリング床(クッションフロアや畳なども)の乾拭きや水拭き掃除ができるフローリングワイパー(フロアワイパー、フローリングモップ等の呼ばれ方もある)は、いまや日本の住まいの掃除シーンに、なくてはならない存在です。

ただ通常の広さの居室や廊下等の掃除用に設計されているため、ヘッド部分はある程度大きく、住まいの中でも狭小なトイレや洗面所等の床部分の掃除には適さない傾向がありました。

日本のトイレは約15年前の時点で9割が水洗化を遂げていて、便器内部の掃除に際しては、さほどの負担や悪臭に見舞われることはなくなっています。

その一方で、排泄姿勢によって尿の跳ね散らかしは避けきれず、トイレの床、壁に飛散した汚れから細菌が繁殖、その代謝の際に発生する異臭(アンモニア臭)は依然として存在し、加えて排泄の際の衣類の着脱に伴う繊維クズ(ホコリ)の発生や、尿以外の排泄物飛沫の飛散による細菌汚染も、日々生じています。

トイレは空間としての狭さに加えて、便器そのものの存在が大きく、その後ろ側の床などには素手でのリーチが、もともと構造的にあまり容易ではありません。

そのうえ体調的な問題、たとえば膝、腰の痛みや四十肩、五十肩などで腕が伸ばせない状態になるなどすると、ますます床、壁の拭き掃除が行い難くなってしまうのです。

床、壁部分の簡易的かつ効果的な掃除方法へのニーズはつねにあるといえるでしょう。

この部分を解決する一助となる、ヘッドがコンパクトなタイプのフローリングワイパー状掃除道具が2年ほど前より市場に投下されました。

このワイパーのヘッド部分には市販のトイレ掃除用の使い捨てウェットシートがちょうど挟み込めるサイズ感になっており、通常のトイレ掃除のルーティンとして床、壁へのアプローチが簡単に取れるようになっています。

屈んだり、しゃがんだりといった大きな体勢の変動が少なく済むだけでも身体への負担は大きく軽減されるのが、使いながら体感として分かると思います。

■無香料ないし微香、かつ水滴の大きさを調整できる洗剤スプレー

イラストACからのおえかき本舗さんのイラスト
イラストACからのおえかき本舗さんのイラスト

体調が不安定な折に掃除をし、洗剤の強い匂いや微細な成分を吸い込んで気持ちが悪くなってしまった。そんな残念な経験がある人もいるのではないかと思います。

掃除のときには、よく換気をしろ、換気扇を回せと言います。その理由にはホコリが立つから、また洗剤の成分が空気中に充満するから健康上高リスクなので、つねに新鮮な空気が供給されるようにという意味があります。

ただ、この換気扇の使用にも、密かな盲点があります。

換気扇が「天井」にある場合、空気の流れは下から上に向かいますが、このとき床近くの手元で洗剤スプレーを噴霧すると、その霧もまた下から上に流れてしまうのです。

そのため、掃除をしている私たちの顔に洗剤が当たり、吸い込んでしまうことに……。

特に近年の洗剤スプレーは汚れに対し非常に微細な霧状の成分を行き渡らせることができる高度なものが多い反面、鼻や喉から吸入してしまいやすいことに注意しなければなりません。

掃除のあとで頭痛や吐き気、粘膜への刺激等が生じてしまうような害を避けるには、洗剤の匂いの強弱、酸やアルカリの度合い、加えてスプレー先端の吹き出し口で水滴の大きさを調整できるか否かを必ず確認しての洗剤選びが必要になってきます。

洗剤量の調整や掃除に際しての準備の手間を最小限にする効用が大きく、うまく活用さえできればスプレー自体を忌避するものではありません。

ただ体調の優れない日には敢えてスプレー洗剤は使用しないでおく、ないしは使い捨てマスクを着用して飛沫の吸引を防ぐ方策もあります。

また、洗剤に限らず、こんにち化学物質過敏症、香害の発症可能性はいつでも誰しもあります。日常的にむやみに洗剤成分を吸入しないよう注意するに越したことはないのです。

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このような、道具(洗剤)のくふうのみならず、つとめて気温の高い日に住まいの高所の掃除はしない(換気扇等、天井近くの気温は室内温度より高いため熱中症リスク大)ことや、掃除の際に足さばきの悪い衣類(ロングスカートやワイドパンツ)を着用しないようにする、体調の優れない日は掃除機等のコード等、足元の安全性の低い道具は使用しないようにすることなど、日頃からの自衛的な対処も大切です。

掃除(家事)は健康で安全な生活の一助にこそなれ、掃除のせいで健康を害しては本末転倒です。

どうか無理せず休み休み、ないしは可能であれば家族で作業を分かち合い、健やかな毎日をお過ごしください。

※1)東京消防庁「掃除中の事故に注意!」

https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/nichijou/cleaning.html

ライター、住生活ジャーナリスト

「家のなか」の事をテーマにウェブ、雑誌、新聞等で執筆。大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主な著・監修書に『人生が整う 家事の習慣』(西東社)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー!!』(オレンジページ)、『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)等。2020年1月より東京中日新聞にてコラム『住箱のスミ』連載中。

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