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浴室の「カビ取り」と「水あか取り」同時は危険?大掃除で気を付けたいNG5選

藤原千秋ライター、住生活ジャーナリスト
(提供:イメージマート)

「今年」の残り時間も少なくなってきましたが、これから大掃除に取り組む方もいるかと思います。しかしその前に、最悪の場合は命にすらかかわりかねない「大掃除のNG事項」をまとめておきます。流し読みでも構いませんので、どうか頭の片隅に置いて大掃除に着手されるようにしてください。

大掃除NGその1 高所に上がって掃除する

提供:Mono_tadanoe/イメージマート

「大掃除、すなわち、普段掃除できないところを掃除しなければならない」という謎の「刷り込み」が強いためか、慣れない高所を掃除するため、不安定な椅子の上や、使い慣れない脚立などに上ってしまう方が後を絶たないようです。

また椅子や脚立ではなく、テーブルや棚、キッチン作業台、コンロの上など、足が掛かったところにひょいっと上ってしまい、結果、棚板を折ったりコンロのガラストップを体重で割ってしまったりなどの事故。公に報告されているよりも多いのではないでしょうか。

なんとなく、高いところに上ると気持ちが大きくなるというか、童心に返るようなところが誰しもあるのかも知れませんが、ひとたび間違うとはっきり命に関わり、極めて危険です。

そもそも照明、換気口、換気扇、エアコン、カーテンボックスといった高所の掃除がなぜ後手に回ってしまうかというと、掃除のしにくさに加え「汚れに気付きにくい」「直ちに健康を害することもない」など、掃除をしなければならない緊急度、優先順位が他の場所に比べて、現実的に低いからです。ぜひそのことを念頭においてください。

年末年始は医療機関もお休みに入ってしまいます。落下、転倒による怪我がたとえ軽めであったとしても、思うような通院はかないません。

どうしても高所の掃除をしなければならない場合には、長い柄つきの道具を使用するか、高所での作業に慣れた業者さんにお願いするのがベスト。安全第一です。

大掃除NGその2 身を乗り出して掃除する

写真:milatas/イメージマート

高所にのぼるだけでなく、窓ガラスなどの掃除のために、命綱などもなく窓から身を乗り出して外側を拭いたり屋内でも身を乗り出しての落下の危険のある箇所(吹き抜け周りなど)の掃除を深追いしたりすることのないようにしましょう。

落ちた時にはもうどうにもなりません。窓が汚くても誰もお腹を壊しません。

大掃除NGその3 「水あか」と「黒カビ」を同時に掃除する/カビ取り剤をかけてゴシゴシする

提供:necoji/イメージマート

大掃除では浴室のカビ取りなども多く取り組まれる傾向があります。市販のカビ取り剤の主成分はアルカリに調整された「次亜塩素酸ナトリウム」で、酸と触れると大変有毒な塩素ガスを発生させ、命に関わります。

そのため「混ぜるな危険」という表示がなされていますが、さすがにカビ取り剤と他の洗剤をバケツなどで、混ぜて使う人は今どきほぼいないでしょう。しかし塩素ガスが発生してしまったと思しき事故、または事故にはカウントされていないまでも掃除中に体調が悪くなったという報告は少なくありません。

その理由のひとつに考えられるのが時短掃除。「カビ取り」のほか、浴室の大掃除のテーマのもうひとつの柱に浴室鏡やドアといった箇所の「水あか取り」というものがありますが、この掃除にはクエン酸や酢といった洗浄剤、または酸性成分を謳う市販の浴室用洗剤が使用されます。

この「水あか取り」と「カビ取り」を、「それぞれの場所は離れているから」「一緒にやっちゃえば時短になる」などの理由で同時に行ったり、またカビ取りの直後に水あか取りを行ったりというような掃除を行うことでも、塩素ガスが発生してしまうことがあります。

「水あか取り」と「カビ取り」は、安全のためには同日中に行うことも避け、残留成分がなくなったと思しき数日後に取り組むのが安全です。

また、市販のカビ取り剤(次亜塩素酸ナトリウム)で、泡状になって噴出されるスプレータイプのものは、勘違いされやすいのですが「洗剤」ではありません。その泡はカビ部分に長めに付着させるための泡であり、ゴシゴシして泡立ててはいけません。

次亜塩素酸ナトリウムをカビに吹き付け上からブラシでゴシゴシこすると、飛沫が目に入ったり口に入ったりしかねず、最悪の場合失明の可能性も否定できません。大変に危険なので止めましょう。

大掃除NGその4 すべての窓を開け放して掃除する

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掃除中に発生するホコリやガスなどを速やかに屋外に出すための換気は非常に大切ですが、冬の気候下では屋内気温をいたずらに下げて体調を崩す契機になったり、気密性の高い集合住宅などでは気圧差で折れ戸を含むドアなどが急激に閉まり、手指を挟むなどの事故が起こりかねなかったりするため十分な注意が必要です。

住まいの内、広域の換気を行う際には排気のみは機械を利用(換気扇を稼働させる)したり、各所ドアストッパーをしっかり嵌めたりするなどの安全対策を忘れずに。小さい子どもやペットなどの不在時に掃除を行うなどのくふうも大切です。

大掃除NGその5 ノーマスクでフィルター掃除する/ノーマスクで盛大にスプレー噴霧する

提供:イメージマート

室内吸気口やエアコン、空気清浄機、換気扇等の「エアフィルター」を取り外したり、そこのホコリを吸引掃除などしたりする際には、想像以上にホコリを吸い込んでしまいますのでかならずマスクを装着するようにしましょう。

掃除の際の風向き、換気扇の位置などにも気を配り、なるべくホコリを身に受けてしまわないようにすることも大切です。

またスプレー状の洗剤、その飛沫が細かなもの、エタノール剤、アルカリ剤などを吹き付ける掃除に当たっても、マスクをしておかないとじかに吸入して噎せてしまったり、気分が悪くなったりするようなこともあるので、注意してください。

スプレーの中でも、掃除に使用するものではありませんが、冬季、使用頻度の高い「防水・撥水スプレー」には、とりわけ用心しましょう。成分を吸入してしまうことによる息苦しさ、肺の異常の少なからぬ例が報告されています。

防水・撥水スプレーはかならず屋外で使用するのみならず、風向きで自分が決して風下にこないようにすること、マスクを装着することが大切です。

大掃除も大切ですが、掃除より健康、安全、「わが身」が何よりも大事です。くれぐれも優先順位をお間違えになりませんように、よいお年をお迎えください。

ライター、住生活ジャーナリスト

「家のなか」の事をテーマにウェブ、雑誌、新聞等で執筆。大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主な著・監修書に『人生が整う 家事の習慣』(西東社)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー!!』(オレンジページ)、『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)等。2020年1月より東京中日新聞にてコラム『住箱のスミ』連載中。

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