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風呂場の「コバエ」どこから来る?放置すれば大発生も 梅雨に増加、その正体と対処法

藤原千秋ライター、住生活ジャーナリスト
家庭の浴室(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

入浴中に飛び回っている、小さい虫、コレ何?

 

イラストAC 虫を払う
イラストAC 虫を払う

 1匹、2匹飛んでいる…。アレ? もっといるかも…? 何、この小さい虫?

 たいてい入浴中にふと気づき、そのうち昼間にもファンファン飛び回っているのを発見する、小さくて黒い、ハエのようなあの虫。

 あまり広くは知られていませんが、この虫は「チョウバエ」。ちょうど梅雨くらいから夏にかけて、お風呂場など住まいの水周りで、特に目にする頻度が高くなる不快害虫のひとつです。

 日本国内には、このチョウバエの仲間がなんと60種以上生息しているといいますが、一般的な家庭で見られるものは、このうちの2種類。

 やや褐色がかった、逆ハート型に見える5ミリくらいの「オオチョウバエ」、黒くて1ミリくらいの、すばしっこい「ホシチョウバエ」。いずれも「チョウ」でも「ハエ」でもありません。

 何という虫かわからず、ざっくり「コバエ」と呼ばれることも多いよう。そう「お風呂によく飛んでいる、あのコバエ」それが「チョウバエ」。ハエではなく実は「蚊」に近い仲間の昆虫です。

チョウバエはどこから来るのか?

 

イラストAC 排水口きれい
イラストAC 排水口きれい

 オオチョウバエとホシチョウバエ。同時に見られることも、また片方だけ現れることもありますが、ホシチョウバエのほうは、とても小さいので、メガネなどを外している入浴時には見逃してしまうこともあるでしょう。

 改めて掃除のために排水口のフタを開けた時など、大小織り交ぜ、数匹一度に目撃して、ビックリしてしまったというようなケースが散見されます。

 そもそもこの虫。いったいどこから「最初の一匹」が家に入り込んだものなのでしょう? 

 明らかになっていない点も多いのですが、マンションやアパートなどといった集合住宅の場合では、他の家で発生した成虫が「排水口(排水管)」伝いに、また一戸建ての場合は「浄化槽」内で発生したものが同様に侵入してきたものと考えられています。

 チョウバエのメス1匹は1回の産卵で30~100個の卵を産み、その卵は2、3日で孵化し、ボウフラ(蚊の幼虫)に似た黒っぽい幼虫になります。

 その後、脱皮を繰り返しながら10日ほどでサナギになり、さらに5日ほどで成虫に。この成虫の寿命は2週間ほどなので、生まれてから死ぬまでのサイクルは約1か月間といったところでしょうか。

 卵を産み付けられるのは、排水溝、排水口など、特に住まいの中でも湿気のある暗い場所。そこに汚水、汚泥、浮遊有機物(スカム)が見られ、周囲を数匹の成虫が飛んでいる状態であれば、水のあるところでは幼虫たちがうごめいているはずです。

 水周りでよく見られる、ねとねとしたヘドロのような汚いものの溜まったようなところ。そこで幼虫、成虫ともに、石鹸カスなどの汚れを食べて生活しています。

 普段あまり目にすることのない、お風呂場の浴槽下部、エプロン(浴槽を保護しているカバー)の裏側あたりも、このチョウバエの典型的な発生源。排水口は綺麗なのになぜ、という場合には、確認してみるに越したことはないでしょう。

見つけたらどうすればいい?

  

HRKMRKさんによる写真ACから お風呂掃除 浴槽のエプロンを外した写真
HRKMRKさんによる写真ACから お風呂掃除 浴槽のエプロンを外した写真

 そんなチョウバエの退治法とは? 意外と簡単です。もし、飛んでいるチョウバエを不意に目にしたのがお風呂場であるなら、すみやかにシャワーの水を当て、濡らして排水口に流してしまうだけで構いません。

 水のあるところに発生、生息しているという割にチョウバエというのは水に弱い生き物。汚水内で生活している幼虫ですら、空気管を水でふさがれれば溺死してしまうのです。

 幼虫が生息している汚泥、浮遊有機物(スカム)の溜まったような部分は、界面活性剤入りの洗剤を併用、掃除を行うことで、より効果的に退治することができます。

 チョウバエは人を刺したり、吸血したり、それ自体が伝染病の媒介をしたりということはほとんどありません。ただあまり掃除をしていないようなお風呂場、長期間留守にした家などで爆発的に大発生してしまうことが起こり、そうするととても気持ちの悪いことになります。

 あまりに大量発生してしまうと根絶することは難しく、またチョウバエの脚は汚水や汚泥に触れているものなので、それらが飛び回れば不衛生になることは間違いありません。

 気になる場合には、浄化槽などに流しチョウバエの成長を抑制する効果のある市販の殺虫剤(ピリプロキシフェン)や、お風呂場などの空間に拡散するタイプのスプレー剤(トランスフルトリン)を、適宜使用しましょう。大発生の際には駆除業者に依頼したほうがいいでしょう。

 ともあれ、ヘドロを好み、汚れをエサにする、このチョウバエ。できるだけ普段からお風呂場など水周りのお掃除は、排水口や奥部までこまめに行うというのが、最強の予防法と言えそうです。

ライター、住生活ジャーナリスト

「家のなか」の事をテーマにウェブ、雑誌、新聞等で執筆。大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主な著・監修書に『人生が整う 家事の習慣』(西東社)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー!!』(オレンジページ)、『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)等。2020年1月より東京中日新聞にてコラム『住箱のスミ』連載中。

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